女優の中谷美紀さんが主演を務めるドラマ「連続ドラマW ギバーテイカー」が1月22日からWOWOWで放送・配信をスタートする。ドイツ出身のビオラ奏者と結婚して4年。1年の半分をオーストリアで、もう半分を日本で暮らすという中谷さんに、日々の暮らしで大切にしていることや美しさへの考え方について聞いた。(全3回の2回目、取材・文/服部広子)
「『嫌われ松子の一生』に出演した後、インドへ旅に出たことがあって、そこで人生観が大きく変わったんです。インドには、ヒンズー教、イスラム教、ジャイナ教などたくさんの宗教があり、公用語といわれる言語もたくさんある。本当にさまざまな価値観を持つ人たちが住んでいます。
そのような場所で自分がゴールを決めて突き進もうとしても、そのゴールにたどり着くとは限らないということを思い知らされたんです。
突然、今日は電車が発車できませんということがあったり、空港に行ってもダブルブッキングで席がないですって言われたこともある。そうなると人間、『なるようになれ!』っていう心境になりますよ(笑い)」
この旅で「自分の感覚を大切に生きる」という価値観が育ち、その価値観は、結婚後のヨーロッパでの生活でいっそう強くなった。
「ヨーロッパの人々は、アメリカ型の大量生産、大量消費型の考え方をしないので、一つのものを本当に長く使う方がたくさんいます。さらに日本にいると、毎日同じ服を着てはいけないという暗黙の了解でコーディネートを変える感覚がありますが、3日間、全く同じ服のコーディネートなんてことも日常茶飯事。
世の中の“こうであらねばならない”という画一的な常識は存在しないようです。そのような人たちを見ていたら、生きるには“己の基準”があればいいんだと考えるようになりました」
一方で、女性の美しさについて聞くと……。
「ヨーロッパでは、60代でも、こんがりと肌を焼いて、顔中、シミやシワだらけという方に新しくボーイフレンドができたりするんです。そうした姿を見ていると、本当に美しいな!と思いますね。それはヨーロッパの年齢を重ねた女性を見ていて常に思います。しかも一般的に、成熟した中身のある女性をパートナーとすることが美徳と考えられているようにも見受けられます」
そう語る中谷さん自身は、シミやシワが気にならないのだろうか。
「もちろん、最大限の努力はしますよ。日焼け止めをして、保湿もして、もう必死です(笑い)。ただ、年齢を重ねるということに対する恐れは全くないです。目尻のシワってセクシーだったりしますよね。
オーストリアの住まいの、お隣の方が80代の女性で、正直、顔はシワくちゃなのですが、とても美しいんですよ。現役時代は形成外科で麻酔科医として働いていたそうで、どうしたらそんなにキレイでいられるのかと尋ねたら、『私みたいに美しく年を取りたかったら、絶対に整形はしちゃダメ。自然が一番よ』って(笑い)」
そして、そうした美しさの基準を考えるときも、仕事や生き方を決める基準と同じ。「誰かの軸ではなく、自分の軸があるかどうかが大事」だという。
「私たち日本人は、とりわけ人からどう見えるのか、他人の価値観を気にしますが、もう少し自分自身を解放してもいいのかも知れません。(周りの目を気にして)自分が好きでもない洋服を着ても似合わなかったら、元も子もありませんよね。私自身、昔は無理をしてはやりの服を買うこともありましたが、年齢を重ねた今思うのは、似合うかどうか。自分の価値観を大事にするということが一番ですね」
<プロフィル>
なかたに・みき 1976年1月12日生まれ。東京都出身。1993年に俳優デビュー。2006年の「嫌われ松子の一生」(中島哲也監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。同賞の優秀主演女優賞を2度、優秀助演女優賞を3度受賞している。2013年の舞台「ロスト・イン・ヨンカーズ」で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。2023年には「連続ドラマW ギバーテイカー」(WOWOW)のほか、1月27日に映画「レジェンド&バタフライ」(大友啓史監督)の公開、3月16日~4月15日に舞台「猟銃」のニューヨーク公演が控えている。
*……連続ドラマW ギバーテイカー/元小学校教諭の刑事・倉澤樹は12年前、当時小学6年生だった教え子・貴志ルオトに娘を惨殺された。倉澤は娘の命日を目前にルオトが医療少年院を退院することを知るが、被害者遺族としてルオトの更生に疑心を抱かずにはいられない。ある日、倉澤の元に「あなたの大事なものを、もう一度奪います」という不審なメッセージが届く……というストーリー。ルオトを人気グループ「Sexy Zone(セクシーゾーン)」の菊池風磨さんが演じる。1月22日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信。全5話。同日、中谷さんの主演映画5作品をWOWOWシネマで放送。中谷さんが作品や撮影について語る特別コメントも放送する。