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女優の中谷美紀さんが主演を務めるドラマ「連続ドラマW ギバーテイカー」が1月22日からWOWOWで放送・配信をスタートする。娘を殺された刑事を演じ、「出産経験も、子供を育むという経験もない私が、大切な娘を奪われた主人公の感情に近づくことができるのか、とても不安でした」と語る中谷さんに、役作りや撮影の思い出、そして、犯人を演じた人気グループ「Sexy Zone(セクシーゾーン)」の菊池風磨さんの印象を聞いた。(全3回の3回目、取材・文/服部広子)
「役作りで最も腐心した点は、人間の痛みや苦しみ、不安といったネガティブな感情を理解することでした。それで、少しでも役の気持ちに近づこうと、名画『叫び』で知られる画家、エドヴァルド・ムンクの展覧会に行ったんです。ムンクの孤独や焦燥感、そして、あの叫びが生まれるに至った過程を見ることで、ムンクの心の闇を取り入れたいと思いました。まるで、ダイヤモンドや金を採掘しに行くような感覚で、役の真実を探しに行きました」
中谷さんが演じた刑事・倉澤樹は、小学校の教師として充実した日々を送っていたが、可愛がっていた教え子の貴志ルオトに最愛の娘を殺された過去を持つ。
「倉澤は、喜びや楽しみといったものを一切断って、修道女のような暮らしをしています。ですから、撮影中はあまりおなかをいっぱいにしないように意識していたと思います。でも、私自身は、倉澤のように無欲になれないです! おいしいものを食べたいですし、ゴロゴロ昼寝をしたいですし、好きな動画もたくさん見たい(笑い)。
おそらく、全く違う人間だからこそ、どうしたら役に近づけるのかと迷い、悩んだのでしょうね。今も、自分の演技が正しかったのかわかりません。とにかく、倉澤の苦しみとともに生きないとできない役でした」
倉澤は、娘の死後、自分と同じように苦しむ被害者遺族を一人でも多く救いたいという思いから刑事に転身。事件から12年後、ルオトが医療少年院を退院したのを機に物語が動き出す。
「ルオトを演じる菊池さんの演技にどんどん追い詰められました。ルオトの犯人然としていない、悪人を表現しようとしていないところが怖かったですね。クライマックスでは天使のような笑顔が消えて、その緩急がとても見事でした」
倉澤を演じ終わったとき、それまでに味わったことのない感情が生まれたという。
「倉澤はずっと苦しみを背負って生きていくのに、私は解放されていいのだろうか? そんなサバイバーズ・ギルトみたいなものを感じたんです。若いころは役を引きずることもありましたけど、ある程度の年齢になってからは、むしろ切り捨てていかないと次に進めないからと、役を切り捨てて生きてきました。それが今回の倉澤に関しては、終わった瞬間、ホッとするでもなく、呼吸ができなくなってしまって……」
そう語ると、当時の気持ちがよみがえってきたのか、目に涙を浮かべた。
「正直、もうこんな苦しい役はやりたくない! って思いました(笑い)。でも、それではつまらないと感じる自分もいて。本来、怠惰な人間なので、簡単な作品を受けてしまうと本当に怠けてしまう。コメディーであれ、シリアスな役柄であれ、少し負荷がかかる作品のほうが頑張れますね」
<プロフィル>
なかたに・みき 1976年1月12日生まれ。東京都出身。1993年に俳優デビュー。2006年の「嫌われ松子の一生」(中島哲也監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。同賞の優秀主演女優賞を2度、優秀助演女優賞を3度受賞している。2013年の舞台「ロスト・イン・ヨンカーズ」で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。2023年には「連続ドラマW ギバーテイカー」(WOWOW)のほか、1月27日に映画「レジェンド&バタフライ」(大友啓史監督)の公開、3月16日~4月15日に舞台「猟銃」のニューヨーク公演が控えている。
*……連続ドラマW ギバーテイカー/元小学校教諭の刑事・倉澤樹は12年前、当時小学6年生だった教え子・貴志ルオトに娘を惨殺された。倉澤は娘の命日を目前にルオトが医療少年院を退院することを知るが、被害者遺族としてルオトの更生に疑心を抱かずにはいられない。ある日、倉澤の元に「あなたの大事なものを、もう一度奪います」という不審なメッセージが届く……というストーリー。ルオトを人気グループ「Sexy Zone(セクシーゾーン)」の菊池風磨さんが演じる。1月22日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信。全5話。同日、中谷さんの主演映画5作品をWOWOWシネマで放送。中谷さんが作品や撮影について語る特別コメントも放送する。