取材に応じた坂口健太郎さん(左)、イ・セヨンさん
俳優の坂口健太郎さんと、子役としてドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」などに出演した韓国の俳優、イ・セヨンさんがダブル主演を務める韓国ドラマ「愛のあとにくるもの」の配信が、10月11日からPrime Videoで始まった。辻仁成さんとコン・ジヨンさんの小説を実写化し、現在の冬の韓国と5年前の春の日本を舞台に、美しくも切ない純愛ラブストーリー。坂口さんは彼女を5年間忘れることなく後悔を積み重ねてきた潤吾を演じ、イ・セヨンさんは日本留学中に運命だと信じていた初恋を心に閉じ込め、韓国で新しい人生を歩んでいたチェ・ホンを演じる。それぞれ日本語と韓国語を話す2人が撮影の間にどのようにコミュニケーションを深めたのかなどを聞いた。
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◇井の頭公園と「恋に落ちました」
--撮影にあたって、今回が初めての共演で、お互いに話す言語が異なる中でどのようにコミュニケーションを取っていきましたか?
イ・セヨンさん:日本語の朝のあいさつや、近況を聞く言葉を覚えました。例えば「きのう何しましたか?」「ご飯食べましたか?」とか。でも、間違えて言ってしまったりとか、ない言葉を作ってしまったりもしていました。
撮影が始まってまもない頃、車の中で撮影するシーンがありました。坂口さんが別の作品も撮影していると聞いて、「あー、それは変態ですね!」と言ってしまったんです。“大変”と間違えてしまって。坂口さんは気づいていないようでしたが……(笑)」
坂口さん:たぶん間違えてるんだろうなって自分の頭の中では解釈できたので、なにも言わなかったのかもしれません。
セヨンさんとは言葉が通じないなりにすごくよくしゃべったなという記憶があります。最初は全然通じ合っていなくて、2人ともお互いに何を言っているのかわかってないところから始まって。ちょっとずつ単語が聞き取れるようになり、「きっと彼女はこういうことを言っているんだろう」とわかったし、僕も覚えた単語と単語を繋ぎ合わせて、伝えられるようになっていきました。
いろいろコミュニケーションをしていく中で、作品の中でやりたい方向性がすごく近かったのを感じました。韓国での撮影の時に彼女が、「すごく相性がいい」ということを言ってくれて、劇中で2人の距離が近づいていくように、僕らの距離も近づいていったと感じました。
--韓国と日本の撮影で、思い出に残っている場所はありますか?
坂口さん:クランクインがヨルトン公園っていう、ホンがいつも走っている公園で、現代を描いた韓国パートから先に撮影を始めました。2人の心の距離が開いた後の状態で、どこか寂しい気持ちだったんですが、冬の時期のその公園での撮影がすごく寒くて、木々も枯れて葉っぱも落ちていて……。5年の時間でできた2人の距離感と近いものを感じて印象に残っています。
イ・セヨンさん:東京の井の頭公園と吉祥寺でたくさん撮影したので、特に思い出に残っています。吉祥寺は、小さいお店とか、ビンテージショップなどがある街並みもよかったし、こじんまりとした居酒屋さんとか、食堂などもあって、すごく良かったんですね。
井の頭公園は、私が今までに見た一番大きい公園です。自然がすごくあって、本当にきれいなところでした。居心地が良くて、ファンミーティングで日本に来た時も、(同ドラマの)ムン・ヒョンソン監督と一緒に歩いたんですけど、その時にもこの公園と恋に落ちてしまいました。
--井の頭公園はデートスポットとして知られていて、「恋人とボートに乗ると別れる」という都市伝説もあるんですが、韓国にもなにか恋人のジンクスのようなものはありますか?
イ・セヨンさん:井の頭公園はあまりにも広いので、ボートに乗ったら広すぎて大変だから別れるんじゃないですか?(笑)
ソウルに南山(ナムサン)というところがあって、そこで恋人同士で南京錠をかけるんです。「私たちこれからずっと愛し合いましょう」という意味で鍵をかけるんですが、その鍵をかけると別れてしまうというのは聞いたことがありますね。
◇国籍、言葉が違っても目標に向かって一つになれる
--イ・セヨンさんは、日本語のせりふがたくさんあって坂口さんより話す量が多かったそうですが、特に苦労した点はなんですか?
イ・セヨンさん:「まだ大学院に行く準備をしているんです」「まだわかりません」など、「まだ」で始まるせりふがたくさんありました。「まだ」の後に、ほかのシーンのせりふを言ってしまうことがあって、よくNGになりました。
リリー・フランキーさんと一緒のシーンでも同じようなことがあって、決して明るい状況設定での撮影ではなかったんですが、私がとんちんかんなことを言っているので、スタッフの皆さんや日本語の先生を笑わせてしまいました、
--坂口さんは韓国のドラマ撮影は初めて。違った点などはありましたか?
坂口さん:日本と大きく違うことはありませんでした。ただ、監督が日本チームと撮影をした時に、日本の繊細さとか細やかさを感じたとおっしゃっていました。
僕が撮影前に気にしていたのは言葉だけだったんですよね。日本の現場で培ってきたものが、コミュニケーションが取れないと発揮できないなとは思ってたんですけど、実際にやってみると、韓国チームのスタッフさんが僕の言葉を理解してくれようとすごく動いてくれてたので、不安感とかそういうものはすぐなくなりました。
イ・セヨンさん:日本の撮影チームも、韓国の撮影チームも、そして私たち俳優も、かなえたいと思っている目標は一つですよね。だから、 そこに向かって一緒に進んでいくので、絆も深まったと思いました。国籍が違っても、言葉が違っても一つになれるんだな、と。
--愛の“後”にくるものはなんだと思いますか?
坂口さん:非常に難しい。以前は愛の後に来るものは後悔って考えていました。でも、別に愛が“終わった”後とは聞かれてないじゃないですか。ただ「愛の後」って言われてるだけなのに、終わったことを想像していました。
例えば夫婦とかで、愛の形ってのは最初に出会って、付き合っている時の関係とはすごく変わってくるだろうと思います。 でも、おじいちゃん、おばあちゃんになっても、燃え上がるような愛はもうないのかもしれないけど、信頼とか絆みたいなものに変わって存在するんだろうなと思います。
イ・セヨンさん:私は今までこの質問をいただいた時に、愛の後はないと答えてたんですね。 愛の後はないから、もう死しかないと答えていました。なぜなら、愛は終わらないものだと思っているからなんです。でも、もし愛が終わったと仮定して、終わった後のことを考えると、虚しさとか「無」の一言でしょうか。
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