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「あさイチ」に出演した高千穂大学人間科学部教授の吉原千賀さん
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「あさイチ」に出演した高千穂大学人間科学部教授の吉原千賀さん

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あさイチ:家族社会学が専門の大学教授・吉原千賀さん 「きょうだいへのモヤモヤ」特集でアドバイス

 NHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、月~金曜午前8時15分)の「みんなで語ろう きょうだいへのモヤモヤ」(12月11日放送)に専門家として出演した、家族社会学が専門の高千穂大学人間科学部教授の吉原千賀さん。実家などで久しぶりに家族が顔をそろえる場面も多い年末年始。大人になってからきょうだい間でモヤッとしないためのアドバイスや、研究者や教育者、妻、母としての顔を持つ吉原さんに、仕事とプライベートの切り替えの仕方や心の持ちようなどについて聞いた。

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 ◇“大人”のきょうだい関係に興味を持ったきっかけは?

 吉原さんは「あさイチ」に今回初めて出演。「一視聴者として拝見してきた番組に初めて出演させてもらいました。そんな私でも包み込んでいただけるような、出演者の皆さん本当に気さくにお話をしてくださって、温かい雰囲気が感じられて、緊張はすごくしたんですが、楽しく番組に参加させていただきました」と振り返る。

 吉原さんの専門は家族社会学、ライフコース論で、特に大人のきょうだい関係について調査研究を行っている。なぜ“大人”のきょうだい関係に興味を持ったのか。

 「私自身が3人姉妹の長女なんですが、妹たちがどう思っているか分からないけれど、すごく仲が良くて。巷できょうだいの仲が悪いというのを聞くと、『うちは仲良くできてるのに、何で仲の悪いきょうだいがいるのだろう』と興味関心があって」と振り返る。

 幼少期のきょうだい仲の研究は多いが、“大人”のきょうだい仲を研究している人が少なかったため、大学院に入る試験で「どうせだったらお年寄りのきょうだい(の研究を)やってみたら? 誰もいないよって。しかもお年寄りだと、もう人生の総決算だから、今まであったことすべての結果がその関係性に出る。面白いんじゃないか」と後に指導を受ける教授の一人に言われたことがきっかけだったという。

 ◇きょうだい仲が壊れやすい要注意な三つのタイミング 親の子どもへの関わり方も重要なポイントに

 番組でも紹介されたが、きょうだい仲が壊れやすい要注意なタイミングは「結婚・出産」「親の介護」「親の死去」の三つだという。

 「年を取ると昔のことを思い出すことが多くなりますよね。良いことも思い出すけれど、忘れていたけれど、こんなことあったなというような悪いことも。それが親の介護だったり、相続の場面などで、『あの子は昔からこうだった』『親はいつもあの子にだけこうだった』という“不公平感”を思い出してしまう」

 きょうだい仲を悪くしないため回避する方法や心の持ちようというのは「親の子どもへの関わり方がポイント」だとアドバイスする。

 「親がどういうふうにこれまできょうだいを扱ってきたのかもそうですし、例えば大人になってから情報を特定のきょうだいだけに話して他の人は知らなかったとか、大体そういう不公平感がもめる原因になります。仲がうまくいってるきょうだいは、親が遺言書を書いたり、税理士さんに事前に相談をしたりして、生前に財産を整理して、後でもめないようにしている。こじれる前にそういうことをするのはやはり親の務めかなと思いますね」と専門家にきちんと相談するのも手だと語る。

 また、きょうだい間も小学校の時の幼なじみのように「肩ひじ張らない」適度な距離感が望ましいという。

 「きょうだいだから遠慮なく、という人もいると思うけれど、一度『友達だとしたらそれ言える?』と問いかけてほしい。友達に言えない無遠慮なことは、きょうだいでも言わないのが“鉄の掟”だと思ってください」と呼びかけた。

 ◇30代女性へのメッセージ「道草マインドを忘れずに。しなやかに」

 現在、仕事や研究をしながら2人の子育てもしている吉原さん。「仕事と研究とプライベートのエネルギー配分をどうするのかが難しい」と今も悩んでいるという。そんなとき、支えになったのが上司だった教授の言葉だ。

 「子供を産むまでは完璧主義で、人に頼るのが苦手だったんです。でも、やはり子供がいると、どうにもならなくなってしまって。そんなときに、最初につとめた母校(奈良女子大学)の上司の教授から、『及第点の6割の完成度でもアウトプットしてみせることが、次につながっていくんだ』と。『長い人生では細くつないでいく時期もあるんだよ』と声を掛けていただいたことがあって。その言葉をいつも自分に言い聞かせながら仕事をしています」

 仕事とプライベートの切り替えは通勤時に30~40分ほど歩くことだという。

 「通勤時になるべく歩いています。その時間で仕事とプライベートのスイッチの切り替えをしていて。歩いていて、『ああ、ここのお花が咲いたな』とか、そういった自然や季節の移り変わりに目を向ける時間を、ささやかながら取りつつ移動するのが、私のリフレッシュ法というか、どちらも引きずらない切り替えの時間になってるなと。忙しいのになぜわざわざ歩くの?と聞かれたりしますが、スイッチの切り替えの時間が私には必要なんだと思っています」

 最後に、30~40代の女性に向けてメッセージを求めると、「そんなこと言えるような立場ではないんですが……」と前置きしつつ、「ちょうど30代に入ったあたりで、そのときの上司だった先生方から折々にいろいろ言葉を掛けていただいたんですが、一つにまとめると『道草マインドを忘れずに。しなやかに』ということですね。『道草マインド』は、研究以外のいろんなことに関心を向け、自然や文化を楽しむ心の余裕というんですかね。それが人生を豊かにすると教えていただきました。『しなやかに』は細くつないでいく時期も柔軟に、と。私がそうやって先生方から掛けていただいた言葉が、もし30代の方々の心に何か届くような言葉であれば、うれしいなと思います」と語った。

 <プロフィル>

 よしはら・ちか 高千穂大学人間科学部教授、学術博士(奈良女子大学)。奈良女子大学大学院人間文化研究科単位取得満期退学。同大学生活環境学部生活文化学科助手、助教、高千穂大学人間科学部准教授を経て現職。専門は家族社会学、ライフコース論、特に大人のきょうだい関係について長年、調査研究を行う。家族構成は夫と2人の子どもの4人家族。

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