俳優の神木隆之介さん主演の映画「屍人荘(しじんそう)の殺人」(木村ひさし監督)が、12月13日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。山奥のペンションで起こる連続殺人事件。その解明に乗りだす大学生の素人探偵が、名(迷)推理を働かせながら事件を解決……と思っていたら、想定外の展開に仰天させられた。
神紅大学のミステリー愛好会の葉村譲(神木さん)と明智恭介(中村倫也さん)は、学内の事件を推理する、自称「ワトソン」と「ホームズ」。2人の前に、剣崎比留子(浜辺美波さん)という女子大生が現れ、ロックフェス研究会の合宿への参加をもちかける。実はその研究会には部員宛てに謎の脅迫状が届き、去年の参加者には行方知れずになった女子部員がいた。剣崎の話に興味を持った2人は、剣崎と共に合宿場所のペンションへと向かうが……。
ほかに葉山奨之さん、矢本悠馬さん、佐久間由衣さん、古川雄輝さん、柄本時生さんらが出演する。「このミステリーがすごい!」や「週刊文春ミステリーベス10」などで1位に選ばれた今村昌弘さんの同名デビュー作を、ドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」(2016年、2018年)や映画「任侠学園」(2019年)の木村監督が映画化した。
え、こんな奇想天外な話だったの?と正直あぜんとした。物語はあくまでミステリーで、推理ものとしても楽しめる。半面、ホラーめいていて、正攻法で描くと残酷になる描写も、木村監督ならではの外した表現で回避している。くせ者ぞろいの登場人物は皆うさん臭く、その中で誰が生き残り、誰が真犯人なのか、最後まで気を抜けない。
中村さんが演じる、アクの強い明智に押され気味の葉村を、神木さんが出しゃばらず、引っ込み過ぎず絶妙の塩梅(あんばい)で表現。浜辺さんは、きりりとした表情で名推理を働かせたと思うと、カフェで「そんなにいっぺんに入れなくても……」と思うほどの量のスパゲティを口に入れたり、ひらめいた時に相撲の雲竜型の土俵入りを披露したりと、可愛いながらもエキセントリックな女子大生になり切っていた。(りんたいこ/フリーライター)