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家族をテーマにした秀作で知られるデンマークを代表する女性監督、スサンネ・ビアさんと脚本家、アナス・トーマス・イェンセンさんの強力タッグで贈る「愛さえあれば」が17日に公開された。一人の女性の人生の再生を、南イタリア・ソレントのまぶしい陽光の中で描き出すロマンチックな作品だが、「年をとって太って不幸になってから相手を見る=結婚」という中年のリアルも忘れていなかった。
イーダ(トリーネ・ディアホルムさん)は乳がんの治療が一段落したばかりの中年女性。娘の結婚式が来週にせまった日、夫(キム・ボドニアさん)の浮気を目の当たりにする。夫は出て行った……。一方、フィリップ(ピアース・ブロスナンさん)は妻を亡くした悲しみから仕事だけに打ち込んできた男。イーダとフィリップは空港の駐車場で偶然出くわした。フィリップは娘の結婚相手の父親だったのだ。それぞれの親族が、結婚式が行われるソレントに到着。なんと夫は愛人を連れてやって来た。結婚式の準備に大わらわのイーダの娘とフィリップの息子。幸せそうに見える若い2人だったが、実は心は揺れていた……という展開。
この監督と脚本家のぺアなので、どんな泥沼劇が……と思いきや、ソレントの地を得て明るいトーンで展開する。わが子の結婚で知り合った2人は、お互い人生でつまずいた経験のある大人同士。乳がんを治療した女性、そして妻を亡くした男性。人生のシリアスな部分を、陽光が優しく包み込み、2人を応援する。主演のディアホルムさんは明るい日差しの中、次第に輝いていくように見える。青やグレーの服装の周囲の人々の中で、人生を謳歌(おうか)しているかのような赤いドレス。ディアホルムさんが静かにほほえむだけでイーダのこれまでの苦労を感じさせる。実生活でも最初の妻と死別したブロスナンさんが、妻と死別して仕事だけに生きてきた男をリアルに好演。劇中、ソレント地方の名産のレモンが幸運のカギになっているが、甘酸っぱいレモンが初恋ではなく、大人の恋のカギになっているのもロマンチックだ。17日からTOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)、新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか、全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士の二足のわらじでとぼとぼ歩き中。