気分が明るくなる、インドの理工系男子の青春グラフィティー映画「きっと、うまくいく」(ラージクマール・ヒラニ監督)が18日、公開された。尺は長いが連続ドラマを凝縮して見たような濃さで期待を裏切らない。主演のアーミル・カーンさんは俳優、監督、プロデューサーとして活躍する“ボリウッド”の大スター。今作はハリウッドでリメークが決定している。
行方知れずだった親友ランチョー(カーンさん)が戻ってくるという連絡を受けたファルハーン(R.マーダバン)は、大学時代の親友ラージュー(シャルマン・ジョーシーさん)とともに、母校の大学給水塔に駆けつける。しかしそこにいたのは、同級生のチャトル(オーミ・バイディヤさん)だった……。チャトルはランチョーを目の敵にしていた男。彼らの母校は名門工科大学ICEで、超難関の受験競争を勝ち抜いたエリートたちが集まる大学だった。自由な発想で異彩を放つランチョーと同じ部屋の寮生だったファルハーンとラージュー。“3バカトリオ”は鬼学長に目をつけられる問題児だったが、競争に背を向け、好きなことをして青春時代を謳歌(おうか)した3人。ランチョーはどこにいるのか。姿を消した理由が明かされると……という展開。
ボリウッドの大スター、カーンさんは40代にして大学生役だが、驚くほど違和感がない。さっそうと現れる姿はかつての日活ヒーローのようだ。闘う相手は、大学の鬼学長に代表される学歴偏重社会。インドでは男の子が生まれたらエンジニア、女が生まれたら医者というのがエリートの道らしいが、3人はその勝ち組なのに……。ランチョーたち3人のおバカ青春物語が、恋あり、ライバルありで展開されていくが、振り返りながら語られる過去は、けっしてノスタルジーにひたるものではなく、教育問題に切り込んでいて現代社会に響く内容になっている。ランチョーは今どこで何をしているのか、という謎解きで物語を引っ張り、ワクワクさせられる。どんな困難もユーモアで切り抜けるバイタリティーには感服。若い人にぜひ見てほしい作品だ。音楽とダンスが楽しめるのもボリウッドならではだ。18日からシネマート新宿(東京都新宿区)、シネマート心斎橋(大阪市中央区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士としてとぼとぼ歩き中。