佐藤健さんと綾瀬はるかさんがダブル主演する映画「リアル~完全なる首長竜の日~」が1日に封切られた。「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した乾緑郎さんの小説「完全なる首長竜の日」が原作で、現実と仮想世界が交錯するミステリアスなドラマが展開する。
「センシング」という最新医療によって、昏睡状態にある恋人の淳美(綾瀬さん)の脳内に入り、彼女の自殺の原因を探ろうとする浩市(佐藤さん)。しかし、2人の“対話”は、彼らの記憶の奥底に眠る“ある思い出”を呼び覚ましてしまう……というストーリー。
原作では姉弟だった主人公の設定が、映画では恋人に変わっていることにまずは、「おっ?」と思う。その「おっ?」は、中盤で一つの“思い込み”を崩壊させられることで「えっ?」という驚きに変わり、さらに、映画ならではの決着のつけ方に「そうきたか」と納得した。
現実だと思って見ていた映像がいきなり“溶け”出したり、“浸水”したりすることで、自分の感性に自信が持てなくなる。かと思うと、人間の記憶を元に作られた「フィロソフィカル・ゾンビ」が突然現れドキっとさせられる。「回路」(01年)や「アカルイミライ」(02年)、「ドッペルゲンガー」(03年)、「トウキョウソナタ」(08年)などで知られる黒沢清監督が手掛けた。黒沢監督と田中幸子さん(「トウキョウソナタ」「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」など)との共同脚本は、原作に比べ、男女の愛や生命の力強さといったテーマが色濃くなっている。綾瀬さん、佐藤さんのほかに中谷美紀さん、オダギリジョーさん、染谷将太さん、小泉今日子さんらが出演。1日からTOHOシネマズ有楽座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌の編集、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。