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劇場版アニメ「それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い」(川越淳監督)が公開中だ。今作は、2013年に亡くなった原作者のやなせたかしさん最後の絵本「アンパンマンとリンゴぼうや」が原案で、やなせさんが12年から取り組んできた東日本大震災の復興3部作のラストを飾る作品。「ふるさと」をテーマに、毒りんごにおかされた「アップルランド」を元の姿に戻すため、「りんごぼうや」がアンパンマンたちの助けを借りて立ち向かう姿が描かれている。アニメの声優初挑戦にしてキーパーソンとなるりんごぼうやの声を担当した女優の井上真央さんに、アフレコの感想や小さい頃から大好きだという「アンパンマン」について話を聞いた。
◇出演決定時は不安と喜びが交錯
子供の頃、最初に夢中になったアニメが「アンパンマン」だという井上さんは、アンパンマン役の戸田恵子さんに会った時に「わーすごい!と思いました」とテンションが上がったことを笑顔で明かす。そんな大好きな作品の劇場版で、アニメ声優を初めて務めることになり、「最初はうれしさがありましたが、すぐに不安がきました」という。「やったことがないですし、できるのかなという不安もあって、やなせ先生が最後に書かれた原案で携わる皆さんの思いも聞いたりしたら、本業の方のほうがいいのではと正直思いました」と当時の複雑な心境を打ち明ける。
声優について「私たちの仕事もそうですが、皆さんが思う以上の難しいお仕事で、声がいいだけではなくてキャラクターに個性を付けたり、なじませる音だったり……。尊敬できる職業」と考えている井上さん。「安易に参加したいといってはいけないという反省がありました」と苦笑し、「台本を読んだ時にすごくいい内容で感動して、いろんな方たちの思いや願いがこもっている作品」と感じ、「お声を掛けていただいたし、やりたいという思いに変わるぐらい感動しました」と物語の奥深さから不安が和らいだという。そして、「知り合いの子供たちが喜んでくれるかなという思いもあった」と照れくさそうに笑う。
「最初は息遣いが難しいのだろうと思っていましたし、もちろん難しかったのですけど、やってみると意外と自分の中でだんだんと楽しい方に変わってきた」とアフレコの感想を語る。りんごぼうやという初登場のキャラクターのため、「『こういう声だ』という確立されたものがないから、これでいいのかなと探りながら(声を)出してしまったりして、ちょっと弱くなってしまった」と反省し、「迷いと不安の中で少しでもたくさん声を出すことや、ずっと作品に携わってきたプロの方たちに『今ので大丈夫ですか』など聞きながらやっていました」と感慨深げに振り返る。
◇生まれ育った場所は“特別”
東日本大震災の復興3部作の3作目である今作について、井上さんは「復興、希望ときて今作は“故郷の再建”がテーマ。子供たちにも伝わったらいいなという思いと、大人たちも励ますような勇気が持てるような内容」と評し、「りんごぼうやの一つ一つのせりふだったり、故郷を思う気持ちなど、アンパンマンの真のヒーローの姿がぎゅっと詰まっている気がして、とても深い作品。戸田さんもおっしゃっていましたが、今まで一番優しさが詰まった作品で、アンパンマンの優しさがすごく伝わります」と今作のストーリーに深い共感を示す。
神奈川県出身の井上さんは、「やっぱり生まれ育った場所というのは特別というのはある」と言い、「自分が育った場所が好きじゃないと思った時もありましたが、いい思い出も苦い思い出も含めて、自分が子供だった時や青春時代を味わった場所というのは特別な思いがある気がします」と故郷への思いを明かした。「風景を思い出すととても懐かしい気持ちになりますし、1年に何回か行って(故郷に)触れることはすごく大事なんじゃないかなと思います」と故郷のよさを語る。
自身が演じたりんごぼうやは、カッコいいヒーローに憧れる男の子という役。アンパンマンと出会うことで成長していくが、「(アンパンマンを)最初はカッコ悪いなと思っていたけど、それでも自分を守ってくれようとしたり、(りんごぼうやの故郷である)アップルランドを元通りにしたいと自分のことのように一生懸命になってくれるアンパンマンやその仲間に触れたことで、一人じゃなくてみんなで力を合わせることを知っていったのではないかと思います」と心情を分析。そして、「とある出会いから何かを守ることを意識し始めた時に、アンパンマンが言っていたことの意味を理解していったんだろうな」と感じながら演じたという。
◇アンパンマンのカッコよさは「見返りを求めない無償の愛」
りんごぼうやも憧れるようになるアンパンマンをヒーローにしている最大の要素は?という質問に、「見返りを求めない無償の愛というのが、まさしくそうだなと思います」井上さん。「自分が弱っていても傷だらけになっても自分を犠牲にして誰かを助けるヒーローって、もちろん体を張ったりするのはほかにもいますけれど、自ら進んでそれをやるヒーローはなかなかいない。それで弱くなっちゃうヒーローもなかなかいないですよね(笑い)」とアンパンマンについて分析し、「弱々しく見えるけど優しさにあふれている」と目を輝かせる。
さらにアンパンマンの永遠のライバル・ばいきんまんを「最終的にはアンパンマンを引き立たせるというか、ばいきんまんがいないとアンパンマンのカッコよさは伝わらないと思う」と評し、「こんなに愛すべき敵役はほかにはいないだろうなと思います」と笑顔で語る。
井上さんの一番好きなキャラは、単純にカレーが好きだったことと、アンパンマンやしょくぱんまんに比べて人気が低いから「私が好きになってあげなきゃ」という理由で、カレーパンマンを挙げる。今作の見どころについては、「りんごぼうやを通して『真のヒーローとは?』というのが見どころですし、年齢にもよると思いますが、今回のテーマになっている故郷について親子で考えるきっかけになる作品ではと思います」と力を込める。井上さんが演じるりんごぼうやの見どころは、「私の声は忘れてください(笑い)」と切り出し、「(りんごぼうやが)私ということはぜひとも忘れていただいて、純粋に楽しんでいただければうれしいです」と謙遜しながらメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
いのうえ・まお。1987年1月9日生まれ、神奈川県出身。2005年に「花より男子」(TBS系)に主演し注目を集め、11年にNHK連続テレビ小説「おひさま」ではヒロインを務める。映画「八日目の蝉」(11年)で日本アカデミー最優秀主演女優賞を受賞。今年は最新作として「白ゆき姫殺人事件」が公開されている。15年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主演が決定している。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)