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「ラブ&ピース」のイメージカット (C)「ラブ&ピース」製作委員会
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「ラブ&ピース」のイメージカット (C)「ラブ&ピース」製作委員会

注目映画紹介:「ラブ&ピース」 長谷川博己主演 スターダムを駆け上る男に無償の愛は届くか?

 「ヒミズ」(2012年)など海外で高い評価を受ける園子温監督の最新作「ラブ&ピース」が27日から公開される。かつてはロックミュージシャンを目指していたダメ会社員の男がミドリガメと出会い、夢の扉を開いていく……という展開。出演は長谷川博己さん、麻生久美子さん、西田敏行さんら。星野源さん、中川翔子さんらが声の出演をしている。

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 2015年夏。鈴木良一(長谷川さん)は、うだつのあがらない会社員。同僚の寺島裕子(麻生さん)に恋心を抱いているが、まともに話すこともできない。ある日、デパートの屋上で1匹のミドリガメと目が合い、運命を感じた良一は、亀に「ピカドン」と名づけて可愛がる。良一はピカドンとの出会いがきっかけで作った歌が認められ、ロックミュージシャンとして上り詰めていく。やがて、謎の老人(西田さん)とおもちゃたちが暮らす不思議な地下世界にも影響を及ぼして……という展開。

 園監督久々の完全オリジナル作。25年前の無名時代に書き下ろした脚本だといい、一人の男があきらめていた夢をかなえていく姿が、奇想天外な展開でつづられていく。笑えて泣けて、現代を生きる我々にガツンと食らわすビターな内容になっている。誰もが「愛と平和」を求めているのに、なぜ、うまくいかないのか。その答えがこの映画の中にあるような気がする。良一は「夢」と「私利私欲」を履き違え、すっかり変わっていく。しかし、ペットのミドリガメと同僚の裕子は、無償の愛を良一に送り続ける。このけなげさに、泣かされる。果たして良一に届くのだろうか? 過去を捨ててスターダムを駆け上る良一が加速していく一方で、見捨てられた者たちの地下世界があって、人間たちを客観視しているのが面白い。この地下世界、昔の教育テレビの人形劇を見ているような懐かしさだ。人間に捨てられたのに、希望を失っていない彼ら。そんな中、斜に構えている猫のスネ公(声・犬山イヌコ)にすっかり魅了された。クライマックスは日本の特撮のすごさを見せつけ、忘れられないシーンとなった。特技監督は「THE NEXT GENERATION パトレイバー」などで知られる田口清隆さんが担当。主題歌はRCサクセションの名曲「スローバラード」が採用されている。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで27日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作は、今月の公開作で一番笑えて泣けました。亀と人形に泣かされた! 

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