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作った料理を前に対談した三浦理恵子さん(左)と藤田貴子先生
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作った料理を前に対談した三浦理恵子さん(左)と藤田貴子先生

三浦理恵子の美容ライフ:第74回 日本料理の藤田貴子先生に習う 今日から始めたくなる料理のお話

 前回までご紹介してきた藤田貴子先生のレシピはいかがでしたか? 旬の食材を使った先生のすてきなお料理に、おなかも心も満たされました。今回は藤田先生に和食のことや日本文化のこと、そして生き方までいろんなお話をお聞きしました。

 ◇味覚のセンサーを持つことが大切

 三浦さん:先生にまずうかがいたいのは、出汁(だし)のことです。ちゃんと取った出汁が本当においしくて。

 藤田さん:そうですね。今はインスタントでいいものも出ていますが、そういう味に慣れてしまうと、ピュアな味を召し上がった時に分からなくなってしまうので、ちゃんと取った出汁の味を自分の中に持っていないと、味覚のセンサーがずれていくと思いますね。

 三浦さん:一度覚えてしまえば、それほど手間のかかることでもないですしね。

 藤田さん:あとはいい素材を使うこと。あまり上質じゃないものを使うと、せっかく出汁を取ったのにやっぱりダメだと思われてしまうのが一番残念なので、お昆布はある程度いいものを。逆にかつおぶしは値段の開きが少ないので、上等なものを使っていただきたいです。出汁のうまみって、例えばお吸い物でいえば、最初におわんを近づけたときに香るのがかつおぶしの香りで、次に舌で感じるのが昆布だしの深いうまみなんです。昆布とかつおぶしで二層に楽しめる、素晴らしい出汁ですよね。

 三浦さん:日本人ならではの繊細な楽しみ方ですね。なるほど! 香りと味わい……。

 藤田さん:今はご自分で出汁を取る方が少なくなってきたから、出汁を取る昆布も売ってなかったりするんですが、出汁さえあればおひたしでも何でもおいしくできるわけです。それが分かればみなさんご自分で出汁を取ると思うし、そうなればスーパーでもちゃんとした昆布を置くようになると思うんですね。そういうふうに流通が変わってくれればな、と思います。

 三浦さん:世の中すべてが簡単になるのはよくないですね。

 ◇家庭料理が飽きない理由

 藤田さん:和食は世界遺産に登録されましたが、今の60代くらいを境にお料理を教えられない世代になっていますよね。

 三浦さん:伝統を受け継いでいくということですよね。習う側も「教えてください」と言わなきゃ始まりません。しかも、女性も外で働きやすくなって、外食も多いし、デリバリーのメニューも抱負だし、レトルト系のものも種類がすごく多いですから、ラクでコンビニエンスなものに流れがちですよね。

 藤田さん:お料理をやったことがない方は、出汁一つにしても難しいと思われるかもしれないですが、そんなに厳密に考えなくて大丈夫だし、適当でもいいんですよ(笑い)。あまりガッチリ決めてもお料理っておいしくないから、今日はさらっとした出汁を使おうとか、今日はもっと濃く出したものにしようとか、自分で昆布とかつおぶしの量を加減してやっていくと、いろんなバリエーションが分かって、飽きないお味になってきますよね。

 三浦さん:それが自分の味になるんですね。

 藤田さん:家庭の料理が飽きないのは、主婦は量って作ったりしないので、味が一定しないから飽きないんですって。だから目分量って大事なんです。でもある程度できるのが基本ですけど。

 ◇栄養のバランスは色で決める!

 三浦さん:先生はお食事を作るときに、何を一番大切にしていますか。

 藤田さん:私は頭の中で食べるものを決めずに、食べたいものを食べる。それのみです。

 三浦さん:お野菜は絶対食べなきゃいけないとかないんですか?

 藤田さん:私は朝にフルーツと野菜のジュースを作ったりするので、お野菜をまったく食べないことはないんですよ。だから、夜はお肉とチーズとワインだけでもいいじゃないって。体が欲するものに自然に応えてあげようと思ってます。だって頭で考える方が大変でしょう?

 三浦さん:そうですね。でもついついバランスよく食べなきゃとか、自分の中で決めつけてしまっていることがあって、食べることはすごく楽しみなのに、構えて献立を考えることが多いです。

 藤田さん:1日の中で考えなくていいじゃないですか。2、3日のトータルで考えれば。

 三浦さん:なるほど! それだと気がラクですね。

 藤田さん:バランスよく食べるために悩み過ぎてる方には、色で決めればいいじゃないって申し上げるんです。赤、白、黄色に、緑に、茶色、この5色がそろっていればだいたいバランスは取れています。これは中国の五行説からきている考え方で、お料理は、赤白黄色、緑、茶色を使って初めて一つの完成になるんですよっていう。お正月の煮物にしても、シイタケの茶色、ニンジンの赤、白はお芋で、緑はキヌサヤで、黄色はクリを入れたりしますよね。それと同じように考えて、3皿(種の料理)くらい食べる中で5色入ってれば十分バランスが取れてると思いますよ。

 三浦さん:今日のお料理も、まず色のキレイさで幸せな気持ちになるし、自然にバランスも取れているんですね。こうしなきゃいけないと考えるとやりたくなくなっちゃうけど、色で見て、これをお皿に入れたらキレイだなって考えるのは楽しいですね。

 藤田さん:栄養士さんから見たら、これじゃ足りませんとなるかもしれないけれど、気楽に考えた方がいいですよ。そうじゃないとかえってストレスになるから、考え過ぎは逆に健康によくないです(笑い)。

 ◇和食と日本文化はつながっている

 三浦さん:ところで先生はいくつのときからお料理のお勉強を始めたんですか。

 藤田さん:21歳の頃ですね。20歳くらいまで全然お料理ができなくて、これじゃ嫁に行けないと思って、和食と西洋料理を習い始めたらどんどん面白くなって。その頃、親戚やお友だちが海外にいたので、自分も長い間海外にいることが多かったんですが、日本のことについて聞かれても答えられない自分に気が付き、戻ってきた時に日本のことを勉強し始めたら、すごく面白かったんです。

 三浦さん:それは和食についてですか?

 藤田さん:和食だったり、茶道だったり、日本文化全般ですね。それでお料理は茶懐石に絞ることにしたんですが、もっと勉強していくと、和文化とお料理がめちゃくちゃつながっていたんです。たとえば一皿の中にお刺し身を盛りましょうとなると、単にメインのお刺し身だけが盛られるのではなく、お皿の余白も生かしながら季節の景色を表すんです。このへんに山があって、雪解けの川が流れていて、お魚があって、手前には小さな花が芽を出してみたいな。実際に置くかどうかは別としても、料理人はそのイメージを持って盛り込んでいき、お客さまはそれを見たときに、皿の中の雰囲気を感じることができる。でもそういうことって、日本の四季の風物詩を分かっていないとできないので、やはりすべてがつながっているんだなと。

 三浦さん:その日の料理にテーマを持つなんて、すてきです。お皿一枚の世界から始めてみよう! 先生には癒やしのオーラがあるというか、お会いしたときからすごく居心地がよくて幸せな気持ちになりました。何かご自身で心掛けていることはあるんですか。

 藤田さん:ありがとうございます。ホームページにも書かせていただいてるんですけど、自分の教室では、昔から日本人が受け継いだお料理を習いながら、便利さの中で忘れ去ってしまったものを取り戻せたらいいなと思っているんです。隣の人や、近い人との関係性をもう一度見直せたらなというようなことですが、お料理をしている間に知らない生徒さん同士も言葉を交わすようになるだろうし、新しく入った生徒さんは、古い生徒さんがどういう態度を取っているかを見て学んでくれればいいし。目に見えない日本人の良さを取り戻せたらいいなと心掛けていますね。

 三浦さん:先生は料理に使う物もすべて大事にされていて、お話を伺いながら、もしかしてそれは自分が子どもの頃に実家で見ていたことかもしれない……という懐かしさに通じるなと思いました。やっぱり物を大事にすることは大切ですね。あとは、旬のものがいかにおいしいかもよく分かりました。

 藤田さん: 和食は食材の味で食べるので、食材の味がしっかり立ってないとお料理にたどりつけないんです。旬のものは栄養価も高いし、お値段も安い。今はスーパーでも旬の前のハシリのものも売っていますが、初物を家庭料理でおいしく作るのは難しいので、ハシリじゃなく旬のものを使うようにしたいですね。

 ◇料理は社会生活にも通じる

 三浦さん:これからも勉強させていただきます! 今日は何よりも、楽しくて、おいしくて、最高の時間でした。

 藤田さん:三浦さんは作りながら洗い物などもサッとされていて、そこまで手際よくできる方って少ないですよ。今の若い生徒さんの中には、一つ終わるとボーッと立ってる方もいるので、いつも、「やることの先を読みなさい」と言ってるんです。

 お料理だけじゃなく社会でも、役に立つ人って、先の先を読んでちゃんと準備してるじゃないですか。そういう人たちが育ってほしいなと思って、「今のことだけ考えない、先の先は?」って問答のようにして教室を進めているんです(笑い)。やっぱりトータルで次の次を考えていかないと、社会での生き方も、お料理もダメですよね。

 三浦さん:お料理ってお膳の中の世界を構成するんですものね。それができれば、きっと他のことも全体を見ながら組み立てることができると思うし、先生のようなお料理を作れるようになったら、彩りがある生活を送れるようになるんですね。今日は本当にありがとうございました。

 *……お料理を試食した時に、先生が炊いてくださったご飯もとてもおいしくて炊き方のコツも教わりました。それは、とぎ過ぎないことだそうです。とぎ終わるまでの時間が短ければ短いほどヌカくささを吸わないそうで、「ゆすぎは多くて2回。とぎ汁はザルを使ってサッと捨てて、1分以内に終わります」と聞いて、これまた目からうろこでした。

 今は女性でもお仕事でお忙しい方も多いと思いますが、旬の食材を調理して食べることを心掛け、おいしくて健康的な生活をしていきたいですね。

 心も体もキレイになって、毎日キラキラしましょう! できることは今からスタートですよ!

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