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注目映画紹介:「64-ロクヨン-後編」 前編で仕掛けた伏線を見事に回収 原作とは異なる結末に好感

 作家、横山秀夫さんによる長編ミステリーを映画化した「64-ロクヨン-後編」(瀬々敬久監督)が、11日に公開される。先月7日に公開された前編では、昭和の最後の年に起き、その後、迷宮入りとなった少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」を端緒に、当時事件に関わりながら真犯人を見つけられなかった刑事や被害者遺族らそれぞれの思い、警察とメディアのあつれき、刑事部と警務部の反目、さらに地方(県警)と中央(警察庁)の確執などが描かれていた。今作では、前編から委ねられた、「ロクヨン」を模倣した誘拐事件の捜査がいよいよ佳境に入っていく。

 14年前の「ロクヨン」を模した誘拐事件が発生したことが、刑事時代に「ロクヨン」の捜査に関わった、今は警務部広報官の三上義信(佐藤浩市さん)の耳にも入る。三上は、秘密裏に捜査を進める刑事部から情報を引き出そうと、かつての上司で、ロクヨンの捜査に共に関わった、今は捜査1課長の松岡勝俊(三浦友和さん)に近づく。松岡からなんとか承諾を得た三上は、松岡らが乗る捜査指揮車に乗り込み、情報を部下の諏訪(綾野剛さん)らに流していく。やがて捜査線上に、一人の人物が浮かび上がる……という展開。

 以前、前編を「周囲固めの章」としたが、後編はそれら仕掛けた伏線の“回収編”だ。前編を見ながら浮かんだ疑問の数々が、見事に回収されていく。それも、てきぱきと。前後編を見終えて感じたのは、かつての警察の隠ぺいが、とてつもなくセコい行為で、警察内部の権力闘争が、いかにくだらないことかということ。それによって14年間、閉じ込められ、苦しんできた人がいた。その事実に、事件に関わった人々それぞれが向き合い(向き合えない人間もいるが)、ある者は己の不始末を恥じ、ある者は心の傷を癒やしていく。その姿に心を打たれた。三上の娘が家出中であることが、ロクヨンの被害者の父、雨宮芳男(永瀬正敏さん)と、今回の被害者の父、目崎正人(緒方直人さん)に対する距離を縮め、物語を一層感慨深いものにしていた。原作とは異なる結末にも好感が持てた。

 ちなみに、映像化するにあたり瀬々監督は、脚本家の久松真一さんと何度も意見交換をし、22回の改稿の末、脚本を仕上げたという。出来上がった映画の上映時間は、前編121分、後編119分。合計すると4時間ちょうどになる。このバランスのよさにも感服した。11日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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