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俳優の池松壮亮さんと菅田将暉さんがダブル主演する映画「セトウツミ」(大森立嗣監督)が7月2日から公開される。大事件が起こるわけでも、衝撃の事実が明かされるわけでもない。高校生2人が、河原の階段に腰かけ、ただしゃべる。それだけの話なのに見入ってしまう。マンガ誌「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載中の此元和津也さんによる同名マンガが原作で、くすりと笑える原作の持ち味そのままに、「さよなら渓谷」(2013年)などの作品で知られる大森監督が映画化した。
高校2年の瀬戸小吉(菅田さん)と内海想(池松さん)は、放課後、河原の階段に腰かけては、内海が塾に行くまでの1時間半をそこで過ごす。優等生タイプの内海と、劣等生タイプの瀬戸。性格も家庭環境もまるで異なる2人だったが、なぜかウマが合った。今日も、深刻な時に出る「神妙な面持ち」について追求し始めた2人。そんな彼らの視界に、ひとりの中年男性(鈴木卓爾さん)の姿が入り……という展開。
瀬戸が、弾けっぷり全開でしようもない話題を繰り出せば、内海が、そこはかとない色気と気だるさを漂わせながら、的を射た言葉で切り返す。すると瀬戸が、見事な瞬発力でそれに応じる。時折生じる絶妙な“間”や、2人の背後を通り過ぎる人や車が、シニカルな笑いを助長させる。2人の出会いに始まり、気になる女の子のこと、ペットの猫のこと、徘徊(はいかい)癖のあるじいちゃんのこと……とりとめのない、しかし、「あるある」と共鳴できる話題が、おかしくも、時に胸をじんとさせる八つのエピソードの中でつづられていく。大道芸人(宇野祥平さん)や瀬戸が憧れる女の子(中条あやみさん)が絡むこともあるが、ほぼほぼ、瀬戸と内海、この2人の会話だけで映画は成り立っている。にもかかわらずスクリーンから目が離せないのは、ひとえに、池松さんと菅田さん2人の魅力と、それを引き出した大森監督の演出力あってのことだろう。
夏から始まった物語。エピローグの、はく息の白さを見て、季節の移ろいを感じた。高校生2人のなんてことのない毎日。なんの変哲もない話題。あのころは、こんなダラダラした時間さえも楽しかったんだなあと、しばし郷愁を誘われ、優雅(?)に過ぎていく2人の時間がいとおしくなった。教訓になるようなことや高尚なメッセージが発せられるわけではないが、そこに身を置くことで心が安らぐ、ぜいたくなひとときが過ごせる会話劇だ。7月2日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)