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映画「ちえりとチェリー」のメインビジュアル (C)「ちえりとチェリー」製作委員会
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映画「ちえりとチェリー」のメインビジュアル (C)「ちえりとチェリー」製作委員会

注目映画紹介:「ちえりとチェリー」祖母の古い家で起こるファンタジー世界から命を見つめる

 「チェブラーシカ」を日本で復活させた中村誠監督による長編人形アニメーション「ちえりとチェリー」が30日から公開される。父親を亡くした少女が、大好きなぬいぐるみのチェリーと大冒険しながら、命について見つめるストーリー。高森奈津美さん、星野源さん、尾野真千子さんらが声優を務める。

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 幼い頃、父親を亡くしたちえり(高森さん)は、母親(尾野さん)と2人で父親の法事のために久しぶりに祖母の家にやって来た。ちえりの唯一の友達は、ぬいぐるみのチェリー(星野さん)だった。空想の世界の中で、ちえりはチェリーと話ができるのだが、従弟たちにバカにされてしまう。そのことで母親に意地を張ったちえりは、法事に出席せずに祖母の家で留守番となり、不思議な世界に入り込んでいく……という展開。

 少女ちえりは、父親を亡くしてから殻の中にこもっている。母親は仕事で忙しい。だから、ぬいぐるみに感情移入するのも分かる。チェリーは友達であって、助言者でもある。ちえりを大きく包み込んでくれる存在だ。物語は、ちえりが留守番する短い時間の中で起こるが、ちえりの過去も内包している。ちえりは独特の世界を持つ芯の強い女の子。キャラクター像が実によく描けている。表情、仕草が、その感情を繊細に表現していて、とても丁寧な作りに感嘆する。

 父親の葬儀の時の幼いちえりの所在なさげな様子には、心がギュッとつかまれ、思わず泣けてくる。祖母の家という舞台も存分に生かされており、古い部屋や古い物置などの「何があるか分からない」雰囲気が、好奇心と恐ろしさの両方を刺激してくる。不気味な怪物も出現し、想像を超えた壮大なファンタジー世界が広がっていく。「チェブラーシカ」の造形を手がけたレオニード・シュワルツマンさんがキャラクターデザインに名を連ねている。「それいけ!アンパンマン」など多くのアニメ作品を手掛ける島田満さんが脚本に参加。主題歌はSalyuさんの「青空」。東北3県で先行公開中で30日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほかで順次公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。子供の頃、ぬいぐるみと一緒に歯医者に行っていました。

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