映画「SCOOP!」で中年パパラッチ役を演じた福山雅治さん
歌手で俳優の福山雅治さんの主演映画「SCOOP!」(大根仁監督)が10月1日に公開された。「SCOOP!」は、1985年に制作された原田眞人監督・脚本の作品「盗写1/250秒」が原作で、「モテキ」「バクマン。」などを手がけた大根監督がメガホンをとった。今作で、以前はスターカメラマンだったが今は落ちぶれて借金まみれのパパラッチ・都城静を演じた福山さんは、今作のためにクランクイン前から髪とヒゲを伸ばし、衣装を着込んで日常生活を送るなど徹底した役作りで撮影に臨んだという。新人記者役で二階堂ふみさんが出演しているほか、吉田羊さん、滝藤賢一さん、リリー・フランキーさんらが脇を固めている。福山さんに役作りや今作に懸ける思いなどを聞いたロングインタビューを2回に分けて掲載する。
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◇汚れ役という意識はなかった
――中年パパラッチ役ということで、福山さんにとっては初の汚れ役といわれています。この役が来たときの率直な感想と、この役にどんな面白み、ワクワク感を感じましたか。
まず、やったことがない役だったので、好奇心としてやってみたかったんです。汚れ役といわれていますが、そんなに汚れてはいなかったなと思っています(笑い)。やったことのない役、例えば、今回のようにパパラッチでなくても、バーのマスターとか料理屋の板さんとか、政治家とか、やったことない役だったら純粋にやってみたいと思います。それと、何より大根監督の作品をずっと見てきて、すべて面白いですからね。その監督が描く作品の住人として、こういう役をやってどうなるんだろう、どんなふうに仕上がるんだろうという楽しみもありました。
――そんなに汚れ役という意識はなかった?
もともと根が汚れ役みたいなところありますからね(笑い)。東京に来て、デビューした当時は、本当に売れていないですから、仕事もなく、暇でしたし。事務所に行っては「おなかがすいた」とみんなにたかり(笑い)。お金を借りて、その足でパチンコ屋さんとかしょっちゅう行っていましたね。
――では、そんなにこの役がまとっている空気には違和感がなかったんですね。
若かった時の自分のことをだめだと思っていなかったんです。いたって普通の若者で、暇だったらパチンコをやるでしょうと思っていたし(笑い)。それに、静は別にダメじゃない。ちゃんとカメラマンとして仕事をやっていて、撮るものもちゃんと撮っているし、それで金をもらって、その金を自分の好きに使っていいじゃないっていう話だと思うので。あと、犯罪のように悪いことをする人ではない。ダメ男とはいえ、ヒモでもない。カメラマンとしての矜持(きょうじ)を持っている役だったので、あまり汚れ役、ダメ男というふうには考えていなかったですね。
◇無精ひげは似合わないと思っていた
――ヒゲ面のビジュアルも話題になっていますが、ご自身でこの面構えをどう思いますか。
いままで見せて来なかったのは、頑張って頑張って生やしてここまでしか生えないんです(笑い)。ここまで来るのに1カ月くらいかかっているんです。あと、もみあげの毛がない。生えてこないんです。なので、無精ひげが、なんか様にならない。今回は頑張って生やしたのでなんとかなっているし、若干塗り足してもいるので、あと髪形とか服装のお陰もあって、これはこれでなんとか様になっているなと思うんです。普段の自分の格好や髪形で、ひげだけちょこっと生やすと、なんかアジアの怪しい仕事をしている人っていう感じになって、あんまり格好よくならないんです(笑い)。ワイルドにならない。なので似合わないものだと思っていたので、全然生やしてなかった。
――革ジャンに花柄のシャツとか着ていますが、普段はこんな格好をされないと思います。着ていて違和感は?
これとこれは合わせないよな、と思いましたね……。最初は違和感がありました。これは(自分には)似合わないだろうなと思ったので、衣装合わせが終わったあとでそのまま借りて、ずっと着て、撮影に入る前も着て過ごし、撮影期間中もこのまま家からこの格好で入って、このまま帰るという形でずっと着ていました。
――そうすると、だんだんなじんできた。
そうですね。やっぱり服って着ていればなじむものですし、革ものなので、アーム(肘から腕の)部分とか脇のしわ感とか、自分の形にしなきゃダメだなと思っていたので、ずっと着ていました。着なれ感ですね。あと、僕はパッと役に入れるような器用なタイプではないし、すごく時間がかかってしまうので、まず格好から、形から入っていこうと。そういう部分でも衣装に助けてもらったというのはあります。
◇カメラマンは仕込みが大変
――普段追われる立場の福山さんが今回、撮る側、追う側になるのが面白いところですが、写真週刊誌のカメラマンという静の仕事に対して印象が変わりましたか。
改めてたいへんな仕事だなと思いました。カメラ技術だけじゃなくて、事前の情報と洞察力など、かなり勉強していなきゃできない。芸能のみならず、スクープカメラマンで紛争地域とか戦場とかに行ったときに、まずそこにいる兵士が正規軍なのかゲリラ軍なのかを見分けるためには、使っている銃の種類であるとか、銃がさびてる、さびてないとか、そういう知識がなければ自分の身を守れないし、写真も撮れない。ただ撮るだけじゃなくて、撮るというそのゴールに向かって、ものすごく事前の準備、情報がいるんだというのが分かりました。芸能スキャンダルのカメラマンも同じで、事前のいろんな下調べとタレこみを含む情報の精度の判断などの仕込み、準備がすごく大事で、大変な作業だなと思います。
――福山さんをこれまで追いかけてきた人、撮ってきた人への見方も変わりましたか。
だからといって、お茶を出して「どうも」とかあいさつはしないですけどね(笑い)。それもなんかルール違反かなって。僕は追いかけてくる記者やカメラマンの人に話しかけたことはないですね。向こうもバレたなと思ってバツが悪いでしょうし(笑い)。
<プロフィル>
1969年2月6日生まれ、長崎県出身。1988年に「アミューズ・10ムービーズオーディション」に合格し、同年、映画「ほんの5g」で俳優デビュー。1990年3月21日、シングル「追憶の雨の中」で歌手デビュー。その後も歌手、俳優のほか写真家としても活躍。おもな出演映画に「容疑者Xの献身」(2008年)、「アマルフィ 女神の報酬」(09年)、「アンダルシア 女神の報復」(11年)、「真夏の方程式」「そして父になる」(13年)、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」(14年)などがある。18年には「追捕-MANHUNT」(ジョン・ウー監督)の公開を控えている。
(インタビュー・文:細田尚子/MANTAN)
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