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主演映画「お父さんと伊藤さん」について語った上野樹里さん
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主演映画「お父さんと伊藤さん」について語った上野樹里さん

上野樹里:インタビュー(上) 結婚して変わったこと

 女優の上野樹里さんが3年ぶりに主演した映画「お父さんと伊藤さん」(タナダユキ監督)が全国で公開中だ。上野さん演じる34歳の彩が20歳年上の彼氏、伊藤さん(リリー・フランキーさん)と同居しているアパートに、彩の74歳のお父さん(藤竜也さん)が転がり込み、3人の不思議な共同生活が始まる……というストーリー。女性の生き方や親の介護など現代の社会問題をクスリと笑える物語の中に盛り込んだ良作だ。今年30歳になり、5月には結婚を発表した上野さんが、現代を生きる等身大の女性を自然体で演じている。上野さんに、今作の撮影秘話や最近のファッション、食生活のことなどについて聞いた。

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 ◇家族ものがやりたかった

 「お父さんと伊藤さん」は中澤日菜子さんの小説が原作。「百万円と苦虫女」(2008年)や「四十九日のレシピ」(13年)などで知られるタナダ監督が映画化した。上野さんは今作のオファーを受けて、「最初は単館(公開)ということだったので、わりと自由にできそうだなと。その時点で肩の力を抜いて役に取り組めたのは、30歳を目前にしたからこそ、そんなふうに考えられたんだろうし。プランでぎっちりでなくて、感じたままに委ねてやってみたいと思いました」と自然と役を受け入れられたという。

 それには結婚し、新たな家族ができたことも影響しているようだ。今作の撮影は昨年だったが、「家族ものがやりたかったんですね。ラブストーリーもやったし、サスペンスもやったし。そういう世界観の強い、カラーの強いものじゃなくて、何もないけれど人を幸せにできる作品があったらすてきだなと。逆にいうとすごく難しいのかもしれないんですけれど」と語る。

 女性のタナダ監督が描く女性像も肌に合った。「彩はちゃんと自立して人には迷惑をかけずに生きているし、老後のことはそれなりに考えてお金をためていて、子供は産まないと決めている。そういう現実的な女性観が女性の視点で描かれていました。タナダさんが女性のリアリティーをとらえつつ、それを可愛らしくチャーミングに描いていたと思います。男性の監督だと、どこかで女性に対しての幻想というか、こうであってほしいという理想のヒロイン(を描く)という感じだと思うので、彩のようなヒロインを女性の監督でやるというのは現実的ですごくよかったと思います」と表現する。

 ◇3人がそれぞれのペースで撮影

 映画は上野さんと藤竜也さん、リリー・フランキーさんの3人を中心に展開する。撮影現場での他の2人は「藤さんは自分で車を運転してこられて、現場ではずっとお父さんの格好で好きなように、好きなふうに過ごしていました。現場に自分がいるということを楽しんでいるゆとりがあるように見えました。リリーさんは忙しいスケジュールもそれをにおわせない感じのマイペースで。昼寝したければするし、台本を読んでせりふを覚えるなら覚えるし、周りはあたふたしないで、リリーさんが自分のタイミングで自由に過ごしているのを見て安心するというか……」とそれぞれのペースで過ごしていたという。

 上野さん自身も「(他の2人と)世代も違いますし、誰かに気を使う必要もなく、私も私でマイペースで。家から持参した残りもののおかずとか、果物とかをちょっとおなかすいたなと思ったらつまんだりしながら。撮影は夏だったんですけれど、外で3人でイスをおいてぼーっとしたり、気づいたらしゃべっていたり、気づいたら呼ばれて中で撮影して……」とゆったりと3人のペースを守って現場は進行した。

 そんな風景を切り取った映画を「生活しているという風景を撮られている。かといって別に何も考えてないわけではなく、考えて演じるというよりは感じているというか。その感覚はすごく映画を見て、3人の関係とかそれぞれの立場から、ご飯を食べているときの表情とか見て、くすっと笑ったり、グッときたりしてほしいなと思います」と表現する。

 ◇結婚して家族をポジティブに捉えられるようになった

 そして上野さん自身の家族観について「私は結婚して家族ができましたけれど、いい家庭を持ったからそう思うんですけれど、一人よりも、すごくポジティブに家族というものを捉えられています。義理のお父さんやお母さん、めいっことか、みんなが同じ年くらいで出会えていたらすごく楽しい会話できるんだろうなと思いながら日々暮らしていて……」と楽しく会話する中に世代を超え、受け継いでいくべき家族の大切さを口にする。

 そして、この映画を見て「角度を変えて眺めてみると全然違った面が見えてきたりするので、お父さんの立場の人も、伊藤さんの立場の人も、彩やもっと若い娘さんの世代、あとお母さんでも、いつもあまり考えないで行動している日々をちょっと思い返して、家族に電話してみようかなと思ったりしてもらえたらいいですね」とメッセージを送った。

 <プロフィル>

 1986年5月25日生まれ、兵庫県出身。2003年、「ジョゼと虎と魚たち」(犬童一心監督)で映画デビュー。04年の初主演映画「スウィングガールズ」(矢口史靖監督)では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、注目を浴びる。これまでの主な出演映画に「亀は意外と速く泳ぐ」(05年、三木聡監督)、「奈緒子」(08年、古厩智之監督)、「陽だまりの彼女」(13年、三木孝浩監督)などがある。06年に連続ドラマ「のだめカンタービレ」(フジテレビ系)で主演を務め、同作は09、10年に「最終楽章 前編/後編」として映画化。また11年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」で初主演。最近は韓国映画「ビューティ・インサイド」など海外の作品にも出演し活躍の場を広げている。

 (取材・文・撮影:細田尚子/MANTAN)

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