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女優の上白石萌音さんが深夜ドラマ「ホクサイと飯さえあれば」(MBS・TBS)で連続ドラマに初主演する。上白石さんは主人公・文子(通称・ブン)という、人見知りで妄想癖のある女子大生を演じる。ブンは大学進学とともに、東京・北千住の町で一人暮らしを始め、地元の商店街で買い物をし、お金をかけずにアイデア満載の料理を作る……という内容で“食べるシーン”が一切ないグルメドラマになるという。上白石さんに、ドラマ主演への思いや見どころなどについて聞いた。
「ホクサイと飯さえあれば」は、鈴木小波さんが「ヤングマガジンサード」(講談社)で連載中の同名のグルメマンガが原作。人気声優の梶裕貴さんが、ブンが持っているウサギのような容姿の“しゃべる”ぬいぐるみ「ホクサイ」の声を担当する。また池田エライザさんがブンの友人ジュンを演じる。
◇主演のプレッシャーは「現場に入ったらなくなった」
上白石さんは今回の出演の話が来たときに、「連ドラのお仕事をいただけたらうれしいなあと思っていたので、目標が一つかなってすごくうれしかったんですけれど、まさか主演とは思っていなかったのでちょっと戸惑いました。本当に大丈夫なのかなって。でも原作を読んで、その戸惑いや不安も全部ぬぐわれて、本当にすてきな世界観の温かい世界で、その中でブンという本当に魅力的な子として生きられるんだなと思ったら、早く撮影したいという気持ちになりました」と前向きに捉えたという。
主演というプレッシャーは「撮る前はすごくありました。どれだけの人が見たかというのが(数字で)顕著に表れるものでもあるわけで、作品の中心にいる主演というのは、たくさんのものを背負うんだという気持ちはあった」と言うものの、「現場に入るとすごくアットホームだったし、それぞれのキャラクターが独立していて、それぞれが主役みたいな感じだったので、何も気負う必要はないなと思って。いままでと同じように(役柄の)ブンにひたすらに向き合って、ちゃんとブンちゃんを演じようと思いました。そういう気持ちで演じたので、撮影に入ってからは(気負いは)一切なかったです」と役を演じ切ることに没頭した。
◇ブンの食い意地に「あっぱれ」
ブンのキャラクターについては「ご飯という一つのものに向かって、ここまで真っすぐにそこだけを見て突き進む、ここまで熱中するってこんなにすてきなことなんだな、そういう人はこんなに輝くんだなと思って、本当に愛らしいな、と思いました。それと真逆で、対人関係が苦手な子なので、そうなったときのコントラストが面白おかしく描かれていて、すごく魅力的だなって」と感じた。とくにブンの料理を作っているときの反応が「卵が(予期せぬときに)割れるとかよくあることなのに、どかんと絶望を感じるような子で、はたから見れば本当に小さいことでもブンにとって大事件だったりすることが本当に楽しくって。(料理に対して)そこまで愛情を持っているんだなと思いました」と面白みも感じた。
上白石さん自身、ブンに共感したものの、「でも(ブンは)食べ物への愛情がさらに上を行っている感じがします。食材への愛情と言ったらいいんですかね、食材に敬意をはらって、食べるということに真摯(しんし)に向き合っている。買い物をする時間も作る時間も食べる時間も生きている中で一番幸せというような。忙しかったり、時間がなかったりするとついないがしろにしてしまうのが食事だと思うんですけれど、時間のなさよりも食べることを取るという、その食い意地があっぱれだと思います」と笑顔で語る。
上白石さん自身も「食い意地は結構あると思います(笑い)。ご飯のために頑張る!みたいなところはあります」といい、「お肉を食べているときが幸せ。お肉が大好き(笑い)。歌う仕事の前には必ずお肉を食べます。あと、最近私、韓国料理が大好きなことに気付きました。焼き肉とか、サムギョプサル、あとチャプチェが好きです。新大久保(東京都新宿区)に友達と行って食べたりします」と明かす。
◇共演の池田エライザとは共通点が多い
ブンの友達ジュンを演じた池田さんは、上白石さんの一つ年上で福岡県出身と、鹿児島出身の上白石さんと同じ九州の出身だ。上白石さんは「共通点がすごく多くて一気に仲良くなって、ずっと現場で2人でしゃべっていました。好きな映画が一緒だったりして。一番盛り上がったのは(92年の米映画)『天使にラブソングを…』。音楽映画がお互いに好きで、『あのシーンのあの曲がさ』とか、『あそこの音が……』と言って一緒に歌ったりして」と2人で盛り上がったという。
撮影した東京の下町の北千住については「すごくいい町でした。北千住の中でも商店街で撮影をすることが多かったんですけれど、本当にすてきだったんですよ。まだ下町の情緒みたいなものが残っていたし、スーパーに行けばなんでも手に入る時代に、お肉はお肉屋さん、野菜は八百屋さん、金物屋さんとか乾物屋さんとかそれぞれの専門店があるという。本当に料理が好きな人、食べ物が好きなブンみたいな人には北千住はぴったりだなって。ブンは場所に引き寄せられたんだなって感じました」をロケを存分に楽しんだ。
現場の雰囲気も「ほぼ全部のシーンに出ているので、撮影現場にいる時間も一番長かったんですけれど、ブンちゃんのお家を本当に自分のお家のように感じられたし、スタッフさんがみんな家族のようだったので、そういう場所に1秒でも長くいられたことがすごく幸せでした」と居心地のいい空間だった。
◇寒い夜を温められるドラマ
ドラマについて「本当にスタッフさんたちの原作への愛情を感じました。立体的なホクサイを楽しみにしていてもらえたらなって思います。こんなに平和で、こんなに胸にじんわり広がる作品ってすてきだねって言いながら撮影をしていました。作品全体の雰囲気が本当にほかほかしていて、それは出来立てのご飯のことでもあるし、ブンと周りの人たちの人間関係もとても温かいし、一つ一つにすごく愛がこもった言葉で包まれていて、寒い夜を温められるような作品になっていると思います。見て、ほかほかしていただきたいなと思います。でも、ちゃんとご飯を食べてから見ないとおなかが鳴っちゃうと思いますよ(笑い)」とメッセージを送った。
上白石さんの主演ドラマ「ホクサイと飯さえあれば」はMBSで22日スタート。毎週日曜深夜0時50分に放送される(初回・第2話のみ深夜1時5分から放送)。TBSでは24日から毎週火曜深夜1時28分に放送される。
<プロフィル>
かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。同年、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国」でドラマデビューを果たす。14年公開の映画「舞妓はレディ」ではオーディションで主役の座を勝ち取り、映画初主演。16年は、大ヒット中の劇場版アニメ「君の名は。」でヒロイン・三葉の声を担当。映画「ちはやふる‐上の句/下の句‐」「溺れるナイフ」に出演。10月には歌手デビューも果たした。