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香里奈:インタビュー・上 自身は「嫌われる勇気」を持っている?

 女優の香里奈さんが主演する連続ドラマ「嫌われる勇気」(フジテレビ系)が放送中だ。香里奈さんは、2012年1月期に放送された「ダーティ・ママ!」(日本テレビ系)以来、約5年ぶりに刑事役に挑戦。他人の評価を一切気にせず、自己中心的といわれても全くひるまない「アドラー心理学」を地でいく“嫌われる女”庵堂蘭子(あんどう・らんこ)を演じている。香里奈さんにドラマの役作りや撮影の裏話などを聞いた。

 ◇アドラー心理学を刑事ドラマに再構築

 「嫌われる勇気」は、心理学者アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」を分かりやすく解説したベストセラー「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社)を刑事ドラマとして再構築したミステリードラマ。蘭子とバディーを組む他人の目を気にする“嫌われたくない男”青山年雄を人気グループ「NEWS」の加藤シゲアキさん、蘭子のことを理解できない青山に「アドラー心理学」を教える大学教授の大文字哲人を椎名桔平さんが演じ、升毅さん、戸次重幸さん、丸山智己さん、桜田通さん、相楽樹さん、正名僕蔵さん、岡崎紗絵さん、飯豊まりえさん、寿大聡さんらも出演する。主題歌は、シンガー・ソングライターの大塚愛さんの新曲「私」。

 ◇淡々と言われた方がグサッと来る

 香里奈さんは、今回の一風変わったアドラー心理学をモチーフにした刑事ドラマの話が来たとき「自分でもネットでタイトルを見たときに気になって覚えていて、ああ、あの本かと。でもアドラー心理学と刑事ドラマが合わさっていって、どういうふうになるんだろうって不思議な感じで、想像がまったくつかなかったですね」と第一印象を語る。原案となった本を「ちょっと読み始めていたときにこの話をいただいて、そのあとドラマの台本を読んだので、(原案の本に出てくる)このせりふがここに出てくるんだなというのが私は分かったんですけれど、読んでいない人がドラマを見たときにどういう気持ちで理解するのかというのは気になりますね」と話す。

 香里奈さんは蘭子を演じるにあたって、「蘭子は、“自分は自分、他人は他人”という人なので、淡々としゃべるんですね。強く言うことはあっても怒る、悲しいという感情は出さない。面白いけれど難しいところもある」と分析。自身も蘭子のようだったら「楽だろうなとは思いますね。自分の生活の中で蘭子を体現しようとすると難しいけれど、蘭子の行動、要素を取り入れることは可能なので、演じながらも勉強になるなと思いました」と明かす。

 蘭子は基本的には無表情だが「(無表情の研究は)特にはしていないです。普通は感情を乗せて話すと伝わるけれども、パンっと淡々と言われた方が本当にグサッと来るんだなって、蘭子をやっていて思います。蘭子は“ナチュラルボーンアドラー”なので感情の出し入れができる人間のはずで、怒るということはないんですね。犯人に対しても、語尾をちょっと強めるとかはありますけれど、基本的には同じように淡々という感じ。そのへんの具合が難しいなと思いながら演じています」と役作りについて語った。

 ◇アドラー的な考えが身に着いてきた

 アドラーは「怒りの感情は出し入れできる」と唱えているが、演じていくうちに香里奈さんもできるようになったのでは?と聞くと、「それは分からないんですけれど、自分がイラっとしたときに、いったん考えることは多くなった気はします。逆に、他人が怒っているなと気づいたときに、この人はなぜ怒っているのかな?とか、こういう考え方をすればいいのにと、アドラー的な考え方をしたら、そんなに怒るようなことでもないじゃないって、そう考えれば、もっと気楽なのになと思ったりはします。だからこの役をやったことで、以前より少し周りが見えるようにはなっているのかな、と」と笑顔で語る。

 そんなふうに徐々に香里奈さんの中にアドラー的な考え方が浸透してきた。「物事に対して何か嫌だったり、他人の言動などが気になったりしても、自分が自分でいればいいというのがアドラーの教えなので、こういう(女優という)仕事をしている自分もそうだし、普通のお仕事をされている方でも日常的に応用できるやり方なのかなと思います。一つのことに対して、物の捉え方によってまったく違う感情を持つことができると思うので、そのへんはすごく勉強になるなと思いながら演じています」と自然と身に着いてきたようだ。

 ◇どん底まで落ち込んで結果的にポジティブに

 香里奈さんは自身の性格を「最終的にはポジティブなんですけれど、一回落ち込むんですよ、すごく。どん底まで落ち込んで、結果、『ま、いいか』って(笑い)。悩んでいても結果、変わらないし、変えていくのは自分だし。そんなことで、といっても自分にとってはそのときは大きなことかもしれないけれど、落ち込んで、それをいつまで続けるの?ってなったときに前を向いていかないと始まらないと思って、切り換えるしかないじゃないですか。とことん、気が済むまで落ち込んで、そのうちだんだん直ってくるという」と自己分析する。

 そんな香里奈さん自身は「嫌われる勇気」を持っているかと問うと、「嫌われる勇気っていうと難しいですけれど……。もちろん、どういうふうにこの人が思うかなというのは考えてしまいますけど、人に合わせているだけじゃ自分を持っていないのと一緒だと思うので、蘭子みたいな言い方ではないけれども、ああいうふうに自分の思っていることは他の人に伝えるようにはしています」という答えが返ってきた。

 「(蘭子のように)ストレートに言っちゃうときもあるし、言い方を変えることももちろんありますし。たまにポンと言っちゃって、ああ言い過ぎちゃったなということもあるし(笑い)。プライベートだったらポンと言っちゃいますね。仕事だとやっぱりプライベートのときよりは気にしている部分はあるかな。(プライベートは気の置けない相手だから)言っても大丈夫かなと思うことが多いかもしれない」と笑う。

 ◇バディーを組むNEWS加藤とは性格が正反対!?

 バディーを組む刑事で“嫌われたくない男”役の加藤さんとは撮影が進んでいくうちに性格がまったく正反対ということが分かった。「番宣で『ホンマでっか!?TV』に2人で出たとき、『あなたは〇〇する派? しない派?』というので分かれる企画が4問くらいあって、一つも答えがかぶらなかったんですよ(笑い)。その中の一つに、『説明書を読むか読まないか』というのがあって、私は読まない派、加藤君は読む派なんです。私は読まないでやってみて、分からなかったら読んでみよう、その方が時短になると思うんですけれど、加藤君は1回目を通すんですって。目を通して、一通り頭に入れて、これをやったらだめというのを知っておく。何も読まないで何か操作を間違ってしまって壊れたときに、100%自分が正しいという気持ちでクレームが言えないのが嫌なんですって。読んでいるから『あなたたちの言う通りにやっていたのに壊れましたよ』って言える。それはごもっともなんですけれど、すごいなと思って。分かりやすくいうとそういう違いはありました」と笑顔で明かす。

 それは男女の差というより「性格だと思いますね。加藤君はなんでも明確にしてから行いたいタイプなのかなと私は分析しているんですけれど。私は何事も何があるか分からないから、そのときに応じていけばいいかなというタイプなので、そのへんはしっかりされているんだなと思います」と考えている。

 そういうタイプの男性とは合わない?と聞くと、「分からない(笑い)。けれど、私がやらないことに対して、文句を言わずにやってくれるというならいいんですけれど、そんな人には出会ったことがない(笑い)。『なんでやらないの?』とか、『やってよ』というようになってしまうと、それはやりますけれど……面倒くさい」と笑う。

 そんな加藤さんとは撮影の合間はワイワイ話しているそうで「(内容は)本当にくだらない話とかですよ。『今日のお弁当は何かな?』『今日はシャケとしょうが焼きらしいよ』『どっちにしよう』とか(笑い)」と笑顔で明かす。

 性格も違うので食べ物の好みも違う? 「加藤君、嫌いなものはあまりないんじゃないかな。ジャガイモとかカボチャとかああいうホクホクしたものが嫌いとか言っていたかもしれない。私はそういうのは普通に食べられるんですけれど、野菜が苦手なんですね。加藤君は私よりも食べられるものが多いとは思うんですけれども」と話した。

 ◇自分もこれでいいのかなと思ってくれたらうれしい

 アドラーの言葉の中で自身に刺さったフレーズとして「あなたの不幸はあなた自身が選んだものです」を挙げる。「自分は自分で、他者に介入しないというのがアドラーの考え方で、他人に介入することで、もめごとが起こる、と。『あなたはなんでこういうことをしないの?』など……。自分と他人の課題の分離ができていれば気になることでもないだろうなという、そういう考えもできるということが衝撃的でした」と胸のうちを明かす。

 さらに「アドラーはトラウマも否定しているんですね。それってすごく衝撃を受けたんですけれど、それも、ものの捉え方によって、(事が起こって)すぐには無理かもしれないけれど、だんだんと落ち着いたころにそういう考え方をしたら、少しでも気が楽になるのかな……」と言い、「過去があって今があるのは当たり前のことだと思うんですけれど、トラウマだからこれができない……というのはアドラーは否定しているので、それを実践していくのは難しいことでもあるけれど、そういう考え方を持つことで気が楽になっていくのかな、これも一つのやり方なんだろうな」と思い直したという。

 また「誰かのために自分は生きているわけじゃない」という言葉も刺さったと明かす。「そうでありたいなと思うじゃないですか。でもそれができない。だからいろんなことに悩むわけで。でもそういうふうに蘭子みたいにパンと言ってくれると、ああ、こう思っている人もいるんだと思えるし、自分もそれでいいのかなって、ちょっと希望が持てたりとか、私は演じていてそうだったので、見ている方にもそういうふうに思ってくれる人が一人でも多くいたらいいなあと思います」とメッセージを送った。

 <プロフィル>

 1984年2月21日生まれ、愛知県出身。2000年から「Ray(レイ)」(主婦の友社)の専属モデルを務め、2001年に「カバチタレ!」(フジテレビ系)でドラマデビュー。04年に「ディビジョン1」(同)のステージ5(第5話)でドラマ初主演、同年「深呼吸の必要」で映画初出演で初主演。08年にTBS系ドラマ「だいすき!!」で連続ドラマ初主演を果たす。以降、映画「ラブコメ」(10年)で主演。ドラマ「私が恋愛できない理由」(11年)でフジテレビの月9ドラマに初主演。以降も「PRICELESS」(12年)や「SUMMER NUDE」(13年、ともにフジテレビ系)などのドラマに出演。「嫌われる勇気」はフジテレビ系で毎週木曜午後10時に放送。

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