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「クリーピー 偽りの隣人」(2016年)などで知られる黒沢清監督の最新作「散歩する侵略者」が、9日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。劇作家・前川知大さん率いる劇団イキウメの同名舞台を映画化。ある夫婦を軸に、穏やかだった日常が徐々に宇宙人に“侵略”されていく物語。侵略者に乗っ取られた夫を松田龍平さんが、夫の異変に立ち向かう妻を長澤まさみさんが初共演している。SF、アクション、ラブストーリーなど一つのジャンルにとどまらず、見たことのないような新たな世界が目前に広がる。
加瀬鳴海(長澤さん)と加瀬真治(松田さん)の夫婦仲は冷え切っていた。ある日、行方不明だった真治が帰宅。これまでとは別人のように優しくなった真治は、散歩に出かけてばかりいる。一方、町で起きた一家惨殺事件を追っていたジャーナリスト・桜井(長谷川博己さん)は、取材で出会った若者たち(高杉真宙さん、恒松祐里さん)が奇妙なことに気づく。平穏だった日常が少しずつ変わり始める……というストーリー。
舞台は、どこにでもあるような地方都市。宇宙からやって来た侵略者が、地球人から「家族」「仕事」「所有」「自分」などの「概念」を奪っていく。北欧のようなクールな風景の中、平凡な町がジワジワと変化していくさまが不気味だ。社会の変化に無関心な現代社会を見事に映し出している。侵略者による混乱と並行して語られるのが、普通のよくいる一組の夫婦の物語。世界の崩壊の加速とともに、夫婦の関係性、絆が強まっていくところがスリリングに描き出されている。夫への怒りから一転、大きな強い愛で立ち向かっていく妻を長澤さんがなりふり構わず全力で演じた。また、侵略者に乗っ取られた夫を演じる松田さんは飄々(ひょうひょう)とした持ち味でハマり役。そのほか、人間臭いジャーナリスト役に長谷川さん、「仮面ライダー鎧武」の高杉さん、前田敦子さん、東出昌大さんらが出演している。
「岸辺の旅」(15年)で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞するなど欧州で熱狂的なファンを持つ黒沢監督。今作も第70回の同映画祭同部門に正式出品された。原作者の前川さんが書いた小説を読み、「映画っぽい物語だ」と思った黒沢監督が、米ハリウッドの「宇宙人の侵略もの」のスタイルを下敷きにしながら、日常の物語の延長線上に落とし込み、クスリと笑いも含ませて、斬新なエンターテインメント作に仕上げている。(キョーコ/フリーライター)