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岡田准一さん主演の映画「来る」(中島哲也監督)が、7日から全国東宝系で公開される。今作で、オカルトライターという最近の役どころとは趣の異なる人物を演じた岡田さんと、霊媒師の血を引くキャバ嬢という、これまた珍しい役に挑んだ女優の小松菜奈さんに、それぞれの役作りや初共演の感想、さらに10年後の自分を予想してもらった。
◇慣れを恐れた岡田と、ウィッグを避けた小松
原作は、澤村伊智さんによる小説「ぼぎわんが、来る」(角川ホラー文庫)。妻夫木聡さん扮(ふん)する会社員・田原秀樹の身の回りで、怪異な出来事が相次いで起こる。田原は妻(黒木華さん)と娘に危害が及ぶことを恐れ、岡田さん演じるオカルトライターの野崎和浩に相談。野崎はその正体を突き止めようと、小松さん扮するキャバ嬢霊媒師・比嘉(ひが)真琴と調査を始める……というストーリー。真琴の姉で日本最強の霊媒師・比嘉琴子を松たか子さんが演じるほか、青木崇高さん、柴田理恵さん、太賀さんらが出演する。
岡田さんは野崎という人物を、「世の中の怖さも知っているし、人間のいいところも悪いところもたくさん見てきた。彼自身、挫折も経験して闇も持っている。それでも、(人間や社会に対して)どこかにかすかな希望を見いだそうとしている」と分析する。
もともとホラーがあまり得意ではなく台本を読むのにも苦労したそうだが、台本を読み込むことで、「人間、“慣れ”が一番怖いですね。『どこの部分が怖かったんだっけ?』ということの方がホラーでした(笑い)」と打ち明ける。その上で、「僕はどちらかというと、周りで起きていることを観察する立場で、リアクション(の演技)がどうしても多くなっていく」ため、相手の芝居に反応する感度が鈍らないよう心掛けたという。
一方、髪をピンク色に染め、体のあちこちにタトゥーを入れている真琴。「見た目は結構激しい」(小松さん)が、情に厚い女性だ。小松さん自身は、「正義感とか母性という部分(を表現するの)がすごく難しかった」と明かすが、中島監督から、「目の表情にしろ、態度にしろ、弱い部分は演じながら、あまり見せない方がいい」という指示を胸に演じていった。ちなみに、「ウィッグで演じるのと自分の髪で演じるのとでは気分が違う」ことから、撮影に入る1カ月前から髪をピンク色に染め、役を体になじませたという。
◇中島監督は「おちゃめ」(岡田)で「お父さんみたい」(小松)
中島監督といえば、「嫌われ松子の一生」(2006年)や「告白」(10年)、「渇き。」(14年)といった話題作を手掛け、現場で俳優には厳しいというのがもっぱらのうわさだ。中島監督とは初仕事となる岡田さんも「もう少し破壊的な方なのかなと思っていた(笑い)」そうだが、実際の中島監督は「全然チャーミングで、愛情にあふれながらも(自分が伝えたいことを)うまく言えないから厳しい言葉を言ってしまうようなおちゃめな方で(笑い)、余計好きになりました」とイメージが一新。撮影現場も「楽しかったです」と振り返る。
一方、小松さんは、「渇き。」のオーディションで中島監督に見いだされ、女優デビューを果たした。それだけに今回の撮影では、「(中島監督に)試されているかもしれないという見えないプレッシャーみたいなもの」を感じていたそうだ。しかし、そもそも「渇き。」のときから、「怒られるのは、もっと良くなると思って言ってくれているからで、愛されている証拠。むしろ、もっと言ってほしいと思っていた」こともあり、今ではすっかり、「何でも話せるお父さんみたいです」と笑顔を見せる。
◇「近所のお兄ちゃん」のような岡田と、「可愛い人」の小松
小松さんにとって中島監督が「お父さん」なら、「近所のお兄ちゃん(笑い)」のような存在だったのが岡田さんだ。もっとも、今回が初共演の岡田さんに対して小松さんは、寡黙な、「もっと堅い人」という印象だったという。ところが、実際の岡田さんは「すごく気が楽というか、変に緊張せずにいろんな話ができる」人で、撮影の合間には、役柄の話よりも健康に関する話で盛り上がったという。
そんな小松さんに対して、「きれいな、可愛い人だという認識はもちろんありながらも、お芝居の方も力がある」というイメージを抱いていた岡田さん。それは対面しても変わらず、「映像映えする女優さんだし、(撮影)現場のあり方もきれいだし、役柄と真正面からぶつかっていっている感じがすごくしました。僕の中では、好感度が高い女優さんです」とさらにイメージアップ。なんでも撮影中は、「みんなが、小松さんにはいい男性と出会ってほしいと言っていた」(岡田さん)そうで、このインタビューでも岡田さんは小松さんに、「そのままでいてほしいし、本当に、いい男性と出会ってほしい(笑い)」と“兄”として念押しする一幕もあった。
ところで、岡田さんが演じる野崎は、手入れの行き届いていない髪に無精ひげ。さらに、よれっとした柄物のシャツ姿で、恋人関係にあるとはいえ、寝ている真琴を「起きろ、ブス」と足で小突くなど、やさぐれ感が半端ではない。「関ヶ原」(17年)や「散り椿」(18年)といった最近の時代劇で演じてきた武士の礼節などみじんもない男だが、岡田さん自身は、野崎のような役柄の方が、「気持ち的には楽」だという。「特に時代劇は特殊技能が必要とされるので、さらっとやると弱々しく見えてしまう」と語るが、時代劇であろうと、今回のような現代劇であろうと、「どういう役割でいられるかによって楽しさは変わってきます」と、演じる醍醐味(だいごみ)はそれぞれにあると語った。
◇10年後は…
11月で38歳になった岡田さん。20代後半は、ちょうど、「草食男子」がもてはやされ、「男が不在」といわれた時代。そのころから、「男として、何か“持っている”ものを作らなきゃいけない」と考え、アクションをやり始めた。そのかいあって最近では、「男が頑張らなきゃいけないというものを突き詰めた結果、侍か軍人(の役)」が続き、「十何年前の、なりたい自分にはたぶんなれているとは思いますが、ちょっと極端かな」と苦笑する。
10年後について、「俳優としても男としても、40代が一番鍵だと思うんです」と自身の立ち位置を冷静に分析。その上で、「どう面白いものを作っていくか。イメージも決まってくる年代になってくる中、どういうふうに仕事をやっていけるか。ここからが踏ん張りどころだと思っています」と力強く語る。
一方、22歳の小松さんは、「10年後の自分。32歳ですよ。全然考えたことなくて……」と考え込んだため、結婚願望について尋ねると「う~ん、ないです、まだ(笑い)」とのこと。それを隣で聞いていた岡田さんが、「本当、いい男性とね。頼むよ、お兄ちゃんとしては」と言葉をかけると、小松さんは元気に「報告します!」と返答。それに岡田さんが、「僕とちょっと戦ってからだ(笑い)」と相手の男性の“審査役”を買って出ると、小松さんは「無理! 強過ぎる!(笑い)」と応じていた。
(取材・文/りんたいこ)