映画「春待つ僕ら」で主演を務める土屋太鳳さん
女優の土屋太鳳さんの主演映画「春待つ僕ら」(平川雄一朗監督)が公開中だ。2014年からマンガ誌「月刊デザート」(講談社)で連載中のあなしんさんの人気マンガが原作。“脱ぼっち”を目指して高校に入学したものの、クラスになじめない主人公・春野美月(土屋さん)と、美月を振り回しながら共に成長していくバスケットボール部員たちの青春ラブストーリー。土屋さんに、「春待つ僕ら」の撮影秘話や「DISH//(ディッシュ)」の北村匠海さんら共演者について、また女優として役を演じる上で気をつけているなどについて聞いた。
◇美月の強さと弱さのバランスが難しい
土屋さんは、今作の出演が決まった際、「平川監督が『この映画は人間物語だから』とおっしゃっていて、私も心の揺れ動きだったり繊細さが丁寧に描かれているなというふうに感じていました。台本を読んでもそれがすごく伝わってきたので、美月を通して(美月と同世代の人たちが)繊細な時期だけど一歩踏み出せるような作品になれたらいいなと思っていました」と語る。
演じた美月については「美月自身はすごく穏やかに見えるんですけど、応援するシーンとか人に何か言われると怒ったりする。芯が強くて、いじめというシビアな傷を抱えているので一見控えめなんですけど、強さと弱さのバランスが難しいなと思って。そこは結構大事に演じました」と明かした。
◇バスケ男子の中でタイプは…
今作には四天王はもちろん、神山亜哉(小関裕太さん)らバスケ男子が多く登場するが、土屋さん自身のタイプは? 「難しいですね。みんなそれぞれいいところがあるし。でも、亜哉ちゃんはちゃんと思いを言葉にするのでいいなと思います。言葉にしないであうんの呼吸というのはたまに合うかもしれないけれど、言葉にした方がいいなと思います」と語る。
美月といい雰囲気になる北村さん演じる浅倉永久(あさくら・とわ)は、無口であまり言葉に出さないタイプだが……。「言葉にしないタイプは、その人なりの表現の仕方があるから、こういう表現の仕方があるんだなとか、学んでいけたらいいなと思いますね。そういうタイプは、割と俯瞰(ふかん)で全体を見ることができるんだろうなと思うので。私自身は俯瞰で見るのはまだあんまりできたことがないので、いつか自分も(俯瞰で)見てみたいなと思います」とあくまで前向きだ。
◇北村匠海とは8年前に共演「幼なじみ感ある」
北村さんとは11年のドラマ「鈴木先生」(テレビ東京系)で共演していた。「匠海とは7年前に共演しました。20歳で共演して27歳で再共演するのと、15、16歳ぐらいで共演して今23歳で再共演するのとは感覚が違うんですよね。なんか幼なじみ感というか。一緒に頑張ってきた感じが強いので、現場では、今までのことだとか、これからどうなりたい?とか話しました」と思いをはせる。
共演した当時は同じくらいの身長だったというが「匠海と私は当時150センチで同じくらいの背の時に出会ったので、でかくなったなって(笑い)。美月が亜哉ちゃんに再会したときにびっくりした並みに、私もまた匠海と共演させていただいて、また大きくなったな、と驚きましたね」としみじみ。
「鈴木先生」でクラスメート役で共演したメンバーには、すでに芸能活動をしていない人もいるという。「残っている人、続けられている人は少なくて……。そう考えると再共演できることのありがたみというか、お互いに続けてこられた、オーディションではい上がってこられたんだなという感じがしますね」と感慨深そうに語る。
◇つらい過去も時間が味方についてくれる
土屋さんは、これまでに陰のある役から明るく元気な役まで幅広い役柄を演じてきた。女優の仕事に対して感じていることは「あの作品見たよとか、見て泣いちゃったとか言ってもらえると、やってよかったなと思いますね。感動したとか、自分も頑張ろうと思えたよという言葉をもらったり。一つ一つの作品にちゃんと向き合っていれば、伝わる人には伝わると思います」と力を込める。
自身としてはやりがいは感じているが、「役をやると、もっと成長するかなと思ったんですけどね。でも来年、年女で、意外と成長していないと思いました。今すごく、自分ってなんだろうな、どういうふうにしていけばいいんだろうなとか、女性として表現できること、女性としての存在感をちゃんと出していかないといけないなと。もっと成長していきたいなというふうには思います」と自己評価は厳しめだ。
時間が解決するのを待つよりはしっかりと自分と向き合うタイプだが、「過去が変えられないという人もいるんですけれど、私、過去はいい方向に変えられると思います。例えば朝ドラ『まれ』の撮影中は肉体的にも精神的にもすごくつらかったけれど、あれから3年たった今では、(ロケ地の)能登に行って輪島の人たちと再会して、ご飯を食べながら、こういうこともあったよねと話せていて、今になってああ、つらかったけどよかったな、と思えるので。時間が味方についてくれたんだと思います」と過去の苦労やつらかった経験も前向きにとらえている。
◇愛情は女性にとって欠かせないもの
「女性として表現の幅を広げたい」と目を輝かせる土屋さんが女性として普段から心がけていることは? 「いつも、お花をいただいたらちゃんと生けるようにしています。あとは、日頃から愛情を忘れないことですかね。心を維持する上で愛情って大切なものだと思うんです。地球に水が欠かせないように、同様に愛情は欠かせないものだと思います。だから愛情を忘れないようにすることが女性にとって欠かせないことかなって思います」と話している。
映画「春待つ僕ら」は、高校生の美月が主人公。入学を機に“脱ぼっち”を目指す美月だったが、何をやってもうまくいかない。そんな美月のバイト先に、校内で人気のバスケ男子4人が突然現れる。一見チャラいけれど、バスケに対して真剣で、仲間を大事にする4人の姿に、美月は次第に心を許していく。中でも美月を励ます浅倉永久(北村さん)に対してお互いに気になり出したとき、美月は幼なじみの神山亜哉(小関さん)と再会。亜哉は高校バスケ部界期待の選手に成長していた……というストーリー。
<プロフィル>
つちや・たお 1995年2月3日生まれ、東京都出身。2005年、スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックスで審査員特別賞を受賞して芸能界入り。08年、「トウキョウソナタ」で映画デビュー。14年にNHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演し、15年の「まれ」でヒロインを演じる。主な映画出演作に「鈴木先生」(13年)、「orange-オレンジ-」(15年)、「8年越しの花嫁」(17年)、「累-かさね-」(18年)など。TBS系日曜劇場「下町ロケット」に出演。12月30日放送の「第60回 輝く!日本レコード大賞」(TBS系)で総合司会を務める。公開待機作として映画「七つの会議」(福澤克雄監督、19年2月1日公開)がある。