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俳優の山田孝之さんが初の全面プロデュースに徹した「デイアンドナイト」(藤井道人監督)が、26日からシネマート新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。長編映画初主演の阿部進之介さんが、自身の企画を藤井監督に打診したことから作られた映画。正義とは、悪とは、その境目はどこなのか、など深く考えさせられる。
地方にある町工場の社長が死んだ。東京の居酒屋で働いていた息子の明石幸次(阿部さん)は、訃報で帰郷する。父の死の真相を探りながら、父の遺した負債のために金策に走る明石の前に、ある日、児童養護施設のオーナー、北村(安藤政信さん)が現れる。北村の計らいで施設の厨房を任された明石は、北村が孤児たちを養うために非合法な手段で金を稼いでいることを知り……。明石が心を通わせる、施設で暮らす少女、奈々を清原果耶さんが演じ、ほかに田中哲司さん、小西真奈美さんらが出演している。山田さんは出ていない。
マンガや小説の映画化が相次ぐ中、脚本は完全オリジナルだ。山田さんが藤井監督、小寺和久さんと共に4年かけて書き上げたという力作。誠実だからこそ善と悪の境界戦を踏み越えてしまう明石を、阿部さんが盤石な演技で表現し、心をひりつかせる。山田さんが、その表現力にほれ込んだという清原さんの、透明感と愁いを帯びた表情にも魅了された。
作品のテーマが、心に重くのしかかる。正義を貫こうとした人間が悪に染まらざるを得なくなるという展開は、見ていて身につまされた。たとえそれが悪事でも、得をする人間が多ければ正義になるというのは理不尽極まりないが、今の社会を見回すと、承認せざるを得ない。そんな中にあって、明石が奈々と厨房で交わす言葉が、心に温もりをもたらす。とりわけ、明石が奈々に、「誕生日の献立は何がいいか」と尋ねた時のほのぼのとした雰囲気には救われた。(りんたいこ/フリーライター)