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戸田恵梨香さんと大原櫻子さんが初共演でダブル主演した「あの日のオルガン」(平松恵美子監督)が、22日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。実話を基に、太平洋戦争末期、日本初の疎開保育園で子供たちを守った保育士の奮闘を描き出す。逆境の中でたくましく生きる人々の姿が、平和のありがたさを教え、明日への希望を与えてくれる。
東京で空襲が激しくなってきた1944(昭和19)年。品川の戸越保育所では、主任保母の板倉楓(戸田さん)が保育所ごと疎開することを検討していた。反対の親を必死で説得し、埼玉に受け入れ先の寺を見付け、疎開生活をスタートさせるが、現地との摩擦や24時間保育の難しさなどさまざまな壁が立ちはだかる……というストーリー。
厳しいが、必死で子供を守ろうとする保母を、戸田さんが芯の強さを持って表現。大原さんが演じる天真爛漫(らんまん)な保母・野々宮光枝と好対照だ。大原さんはオルガンの弾き語りで「お猿のかごや」などの童謡を子供たちと一緒に歌い、つらい時代を明るく乗り切ろうとする。
保母役には1000人超のオーディションの中から、佐久間由衣さんのほか、「21世紀の女の子」(2019年)に出演の三浦透子さん、「虹色デイズ」(18年)の堀田真由さん、「あまのがわ」(19年)で主演デビューした福地桃子さん、「みとりし」の公開を控えた白石糸さん、「スープ~生まれ変わりの物語~」(12年)の奥村佳恵さんらをキャスティング。ベテラン勢では橋爪功さんのほか、林家正蔵さん、夏川結衣さん、田畑智子さんらも出演している。
子供たちの文化的な生活を守ろうとする楓先生。子供と一緒になって遊ぶ若いみっちゃん(野々宮)先生。2人のキャラクターが軸にしっかりとある。物語のテンポも良く、戦争を知らない世代でもとっつきやすい作品になった。荒れた寺を修復してスタートした疎開生活が、苦労もあるが明るく描かれる。
一方で、男女の淡い恋もサイドストーリーに忍ばせた。自然体の子供たちがほほ笑ましく、スヤスヤと寝入る姿に平和のありがたさを感じる。保母たちの会議も細やかに描かれ、今も昔も保育士(保母)は、子供の命を預かる尊い仕事であることが自然と伝わってくる。物語が進むにつれ、戦争が容赦なく大人たちを追い詰め、若い女性がどう難局を切り抜けていくか、目が離せない。
山田洋次監督の下で共同脚本や助監督を務め、「ひまわりと子犬の7日間」(13年)で長編監督デビューした平松監督が、主演の2人だけでなく、疎開に反対する親や疎開先の若い男性まで、登場人物一人一人の感情を繊細につむぎ出した。主題歌は、1995年の阪神淡路大震災を題材にして作られた曲をカバーしたアン・サリーさんの「満月の夕(2018ver.)」。(キョーコ/フリーライター)