劇場版アニメ「バースデー・ワンダーランド」で声優を務めた杏さん
女優の杏さんが声優を務める劇場版アニメ「バースデー・ワンダーランド」(原恵一監督、4月26日公開)は、小学生の少女アカネが、誕生日の前日に体験する不思議な世界での出来事を描いたファンタジー作だ。今作で杏さんは、アカネの冒険に付き添うアカネの叔母チィの声を担当している。メガホンをとったのは、アニメ「クレヨンしんちゃん」シリーズや、劇場版アニメ「河童のクゥと夏休み」(2007年)などで知られる原監督。杏さんが原監督作品に携わるのは今回で2度目だ。「もう一度お声がけいただいたことは何よりうれしい」と話す杏さんに、今回のアフレコの様子などについて聞いた。
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◇ワクワクしたのは…
アカネとチィは、謎の大錬金術師ヒポクラテスとその弟子の小人ピポと共に、「幸せ色のワンダーランド」に連れていかれる。そこでは、モコモコの羊の毛の上に寝そべったり、猫から入国審査を受けたりと、驚くような体験をすることになる。
杏さん自身が映画を見ながらワクワクしたシーンとして挙げたのは、巨大な蓮(はす)が浮かぶ湖でのエピソードだ。「水中を、息をしながら歩くところが好きでした」と目を輝かせる。
◇演じる上で意識したことは?
杏さんは、原監督の前作「百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~」(15年)で主人公のお栄を演じた。原監督から再度声がかかったことについて杏さんは、「もちろん、『バースデー・ワンダーランド」の(脚)本の中身も、作品としても素晴らしいと思ったのですが、一度お仕事をした上でもう一度やりたいと思ってくださったということは、何にも代えがたい、本当にすてきで光栄なことだと思います」と、原監督に感謝の意を表する。
「百日紅」は、杏さんにとって初めての声優体験だった。当時の収録では、自信のなさから声を発し終えるたびに原監督に、「これで大丈夫ですか?」と確認し過ぎて、原監督からは少しあきれられたという。
対して今回のチィは、登場するキャラクターの中でもせりふが多かったため、監督とは、「チィのせりふの分量は多いよね、と笑い話になっていた」そうだが、2日にわたった収録で杏さんは、監督からは「微調整が入る」程度で、特に「壁にぶつかったりして収録が中断することもなく、割と滞りなく進みました」と安堵の表情を浮かべる。
映画でのチィのキャラクターが、杏さんとは、「あまりかけ離れたところがなかった」ことも幸いした。というのは、映画でのチィは、杏さんを想定して脚本が書かれたからだ。ただ、杏さん自身はチィを演じる上で、「自由奔放でありながら、アカネの保護者として、アカネが危険な目に遭ったり、悲しそうにしていたりしたら心配するし、一番最初に気に掛けたり守ったりするというところは大事にしたいと思いました」と明かす。
◇映像未完成ならではの苦労と喜び
とはいえ、難しさを感じることもあった。それは、声を収録する段階で映像がまだ完成しておらず、「モノクロの部分があったり、佳境になればなるほど絵が動いてなかったり」、ともすれば、キャラクターがしゃべる尺(時間)だけを提示される、などということもあったからだ。
そういった場面では杏さんも、「監督の頭の中にある世界を想像しながら」、かつ「『ここはびっくりしてほしい』とか『焦ってほしい』とか、『もっとうわっ!という感じの景色を想像して』という監督の指示を頼りに」演じていくしかなく、「まだできていない絵の状態で声を出していくのは、本当に難しいと思いました」としみじみと振り返る。
それだけに、出来上がったカラフルな映像を見たときは、それこそ「すごくびっくりしました(笑い)」と驚きもひとしおだったようで、「日常の中でも、もしかしたらこういう世界が広がっているのかなとか、こういう世界が私たちがいる世界にも“ファンタジー”で終わらせないでつながっているといいなと思えるような作品」になっていたことを心から喜ぶ。
◇映画がもたらしたもの
杏さんは、自身のそういった体験を踏まえて、「日々の生活というのは、ついついルーティンになってしまいがちです。多くの人、特に、学生さんや会社員の方は、同じ場所に行って帰ってくるという繰り返しになることが多いと思います」とした上で、「この映画は、1本違う電車に乗ってみたら、とか、一つ違う路地に入ってみたら、とか、もしかしたら、いつもとは違う世界が広がっていたりして……とか、そういう想像力をかき立ててくれる作品だと思います。見た後は、もしかしてこの扉って……と、つい思っちゃうような、日常がもう少しワクワクするようなヒントが詰まっている作品」とアピールする。
そして、この作品に触れて以降、自身も、「犬の散歩をしていたりすると、ちょっと違う路地に入ってみたりするようになりました」と笑顔で語った。
映画「バースデー・ワンダーランド」は、柏葉幸子さんの児童文学「地下室からのふしぎな旅」(講談社 青い鳥文庫)が原作。自分に自信がない小学生のアカネが、誕生日の前日、骨董屋を営む叔母チィの元を訪れたところ、突然、謎の大錬金術師ヒポクラテスとその弟子のピポが現れる。2人から、「私たちの世界を救ってほしい!」と頼まれたアカネは、好奇心旺盛なチィに促され、いやいやながらも、その未知の世界へ冒険の旅に出る……というストーリー。アカネの声を女優の松岡茉優さんが担当する他、アカネの母ミドリを麻生久美子さん、ヒポクラテスを市村正親さん、ピポを声優の東山奈央さんが演じる。
次回は、杏さんの子育て法や、今後の抱負について聞く。
<プロフィル>
あん 1986年4月14日生まれ、東京都出身。15歳からモデルとして活動し、2007年から本格的に女優活動をスタートさせる。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13年後期)のヒロインを務め、注目を浴びる。主な出演ドラマに「花咲舞が黙ってない」(14、15年、日本テレビ系)や「デート~恋とはどんなものかしら~」(15年、フジテレビ系)、出演映画に「プラチナデータ」「真夏の方程式」(共に13年)、「オケ老人!」(16年)など。声優として、同じ原監督が手がけた劇場版アニメ「百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~」(15年)や「それいけ!アンパンマン かがやけ!クルンといのちの星」(18年)に出演している。
(取材・文/りんたいこ)
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