映画「マチネの終わりに」の場面写真(C)2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク
歌手で俳優の福山雅治さんと女優の石田ゆり子さんが主演し、芥川賞作家・平野啓一郎さんの同名ベストセラー小説(文春文庫)を映画化した「マチネの終わりに」(西谷弘監督)が、11月1日にTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開された。世界で活躍するギタリストとジャーナリストの40代の2人が、6年間でたった3度の出会いの中で悩み、愛し合っていく物語。深まる秋にぴったりの大人のラブストーリーだ。
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天才として名をはせるも、現状の演奏に満足ができず、自分の音楽を見失い、苦悩を抱えるクラシックギタリストの蒔野聡史(福山さん)はパリでの公演を終え、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子(石田さん)と出会う。2人は出会った瞬間から引かれ合い、徐々に心を通わせていくが、洋子には婚約者であるリチャード新藤(伊勢谷友介さん)の存在があった。そのことを知りながらも、蒔野は自身の思いを抑え切れずに洋子に愛を告げる。しかし、2人を取り巻くさまざまな現実から思いがすれ違っていく……というストーリー。
ほかに、桜井ユキさん、木南晴夏さん、風吹ジュンさん、板谷由夏さん、古谷一行さんらが出演。福山さん主演の「ガリレオ」シリーズや映画「昼顔」(2017年)などを手がけた西谷監督がメガホンをとった。
東京、パリ、ニューヨークを舞台した大人の恋物語。2人の関係は、年を重ねているだけに、さまざまなしがらみに足を引っ張られ、思い通りに進まない歯がゆさを抱えながらも深く静かに進行していく。普通の人が言ったら「なんてキザな」と白けてしまいそうな歯の浮くせりふも福山さんが語ると自分に向けられているような現実感があり、ドキッとさせられる。石田さん演じる洋子の気持ちも同年代なら手に取るように分かる。
恋愛だけでなくスランプ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、戦争、生と死、父と子、師弟、嫉妬などさまざまな感情が複雑に絡み合い、物語に重厚感を与えている。“不惑”というが生き方に迷う40~50代が共感できるせりふやエピソードがちりばめられ、それを都会的な風景と美しいクラシックギターの音色が彩るウェルメードな作品だ。
ちなみに、「マチネ」とはコンサートなどの「昼公演」を意味するフランス語。日本のクラシックギター界の第一人者である福田進一さんが原作小説の構想段階から今作に関わっており、世界レベルの音楽を堪能できるのもこの映画の特徴の一つだ。ラストシーン後の2人の関係を想像しながら、いつまでも余韻に浸っていたい。(細田尚子/MANTAN)
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