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舞台「マーキュリー・ファー Mercury Fur」で主演する吉沢亮さん(左)と北村匠海さん 撮影:山崎泰治
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舞台「マーキュリー・ファー Mercury Fur」で主演する吉沢亮さん(左)と北村匠海さん 撮影:山崎泰治

スポットライト~舞台で輝く男たち・特別編:白井晃さん 吉沢亮&北村匠海は「手をつないで生きる兄弟のよう」 「マーキュリー・ファー」けいこ場を語る

 「ステージ」に情熱を注ぐ俳優に舞台の魅力を聞く新連載「スポットライト~舞台で輝く男たち」。第4回は特別編として演出家の白井晃さんに聞きました。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

 白井さんが演出する舞台「マーキュリー・ファー Mercury Fur」が幕を開ける。英国のフィリップ・リドリーによって書かれた戯曲で、2015年に日本で初演されて大きな反響を呼び、今回は再演。主演に人気俳優の吉沢亮さんと北村匠海さんを迎え、暴力と狂気に満ちた世界で、生きるために奮闘する兄弟の姿が描かれる。白井さんは初演でも演出を手がけた。

 ――吉沢さんと北村さんは初演を見て衝撃を受け、出演を熱望したと語っています。この戯曲が人をひきつける理由は?

 「この作品は非常に人間関係が濃密です。きっとみなさんは今、このような状況の中でより深い人間関係を欲しがっているのではないかなと思います。だからこそ人々が争って混乱した状況になっても、兄弟がなんとか先を見て生きようとする姿に共感できるし、切なさを感じるのではないでしょうか。

 あとは家族への思いですね。人間にとって家族は生まれて初めて出会う他者です。この作品は物語の進行と同時に、家族の記憶が何度も語られます。今回は演出的にもその部分にスポットをあてたいと考えています」

 ◇演出家として欲が出る吉沢さん、表現者としての自分を知る北村さん

 ――初演でエリオットとダレンを演じた高橋一生さんと瀬戸康史さんの演技は評判を呼びました。再演の吉沢さん、北村さんにも期待が高まります。けいこ場の様子を聞かせてください。

 「吉沢さんはきわめて真摯(しんし)にけいこに取り組んでいて、素直で真っすぐな役者さんだと感じています。こちらの提案やディレクションを柔軟に受け入れてくれて、レスポンスも早い。演出家としては欲がでる役者さんですね。吉沢亮の中にはまだこんな部分や、あんな部分があるのではと思わせてくれるんです。

 あと舞台に何度か出演されているので、表現に対する恐れを知っている気がします。舞台で全身をさらすことがそんなに簡単なものではないと分かっているところに、好感を持ちました」

 ――弟役のダレンは、今回が初舞台になる北村匠海さんが演じられます。

 「やはり素直な方だなと思います。音楽活動をされていることもあって、まだ24歳なのに表現者としての自分の扱い方をよく知っている。僕が少し役作りのサジェスチョンをすると、『なるほど、なるほど』と言いながら、どんどん吸収していくんです。理解が早いし、非常に勘もいい。ある意味、手がかからない子というか……(笑い)。

 ダレンという役も最初の頃は役柄をなぞろうとしていましたが、今はもっと深めて自分のものにしている気がします」

 ◇二人は、憤りに満ちた世界で手をつないで生きる兄弟

 ――けいこ場での吉沢さん、北村さんの印象的なエピソードがあれば教えてください。

 「けいこ場はみんなマスクをしていますが、ふたりがボソボソ、ボソボソとしゃべっている姿をよく見かけます。ボソボソと省エネだけど深く信頼しあっているという感じですね(笑い)。

 あまり話さなくてもきちんと芝居でつながっているのは、これまでの関係性があるからですね、きっと。僕がエリオットはこうしてほしい、ダレンにはこうしてほしいと言うと、相手がこういう芝居をしたら僕はこう引き受けるよと無意識のうちにやっている。芝居を楽しんでいるように思います」

 ――(取材時は)けいこも終盤ですが、今回はどんな雰囲気の兄弟になりそうですか?

 「初演では、最初は兄のエリオットが弟を引っ張って、最後は守られている弟が兄を引っ張っていくという方向性でした。もちろん戯曲自体がそうなのですが、今回は演じる2人の年齢が近いこともあり、彼らがこれまでに兄弟役を演じてきた信頼感もあるのか、劣悪な環境と憤りに満ちた世界で手をつないで必死に生きている兄弟に見えますね」

 ◇劇場という“生”の空間で、俳優たちの熱を感じてほしい

 ――初演から7年たって、再演版で届けたいことは?

 「初演時は社会情勢がこの舞台と同じように緊迫した状況で、観客は対岸の火事だったものが身近に迫ってきて、それを目の前で見ているようなヒリヒリした気分でした。7年後の今はコロナ禍で、世の中は大変なことが日常化しています。そんな状況で大切にしたいのは、人には愛情が必要で、それは人を生かすものでもあるということです。

 たぶん人間は、自分のためだけに生きるとそれほど大きな希望を持てないんですよ。この兄弟のように自分を認めてくれる誰かがほしいし、共感してくれる人がいるとうれしいと感じる。どんな状況でも、やはり人は人を求めるということですね。今回、再演する意味はそのあたりにあるのではと感じます」

 ――初演の舞台はシアタートラムでしたが、今回はより大きな世田谷パブリックシアターです。演出面で変更はありますか?

 「実は前回のシアタートラムより、世田谷パブリックシアターの方が舞台の間口が狭いんです。だから舞台自体はそれほど変わるとは思っていません。ただ客席人数が増えますし、空間は広いので、お客さんは舞台を少し見下ろして見る感じになりますね。大切なのは作品の中にある“本質”をどう見せるかなので、現状を逆にプラスに生かして、本質をより色濃く見せる舞台にしたいと思います」

 ――今回の二人のような若い俳優さんの演出はいかがですか?

 「僕は舞台が初めての役者を演出するケースが結構多いんですよ。若い世代が演劇のおもしろさを知り、どんどん若い観客をつくってくれることは、僕自身の希望です。そんな意味でも、今回の吉沢さんや北村さんは大変かもしれないけれど、2時間15分精いっぱい舞台を楽しんでほしいですね」

 ――最後に、舞台を鑑賞する方たちにメッセージをお願いします。

 「バイオレンスな部分もあったり、非常に殺伐とした世界に生きている人たちの話ですが、描かれているのは人間のつながりであり、愛情です。そういう部分を劇場という“生”の空間の中で、俳優たちの吐息や熱を直接感じながら見てもらえたらと思います」

 ◇プロフィル

 しらい・あきら 演出家、俳優。1957年、京都府生まれ。早稲田大学卒業後、1983~2002年、「遊◎機械/全自動シアター」主宰。演出家として独立後は、ストレートプレイから音楽劇、ミュージカル、オペラまで幅広く手掛ける。KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を経て、2022年4月に世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任する。

 *……「マーキュリー・ファー Mercury Fur」▽作:フィリップ・リドリー▽演出:白井晃▽翻訳:小宮山智津子▽出演:吉沢亮、北村匠海、加治将樹、宮崎秋人(崎はたつさき)、小日向星一、山崎光、水橋研二、大空ゆうひ▽日程:1月28日~2月16日▽会場:世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)ほか、地方公演あり

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