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取材に応じた加藤和樹さん
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取材に応じた加藤和樹さん

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スポットライト~舞台で輝く男たち:加藤和樹さん 佐々木蔵之介と親子役で愛憎劇 言葉で戦い「ヒリヒリする緊張感」

 「ステージ」に情熱を注ぐ俳優に舞台の魅力を聞く新連載。第7回は加藤和樹さんに話を聞きました。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

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 2.5次元からストレートプレー、グランドミュージカルまで、幅広いジャンルで活躍している加藤さん。2月26日から舞台「冬のライオン」に出演する。クリスマスに国王ヘンリー2世の居城に集まった城に集まった家族、若き愛人、敵国の王が、王位継承や領土をめぐって繰り広げる、意外にも笑いあふれる愛憎劇だ。

 ◇父親役の佐々木蔵之介さんと「言葉」で戦う

 1966年にブロードウェーで初演されて以来、これまで何度も舞台や映画で上演されてきた名作。台本を読んだ加藤さんは、「登場する家族全員の本音がわからない。それぞれが腹のさぐり合いをする会話がおもしろかった」と話す。

 王の跡目争いをする息子3人のうち、加藤さんが演じるのは、長男のリチャード。後に「獅子王」と呼ばれた英雄で、「腕っぷしだけで成り上がってきた、家族の中では一番本心を語る人」と、分析する。

 彼の父親で主役のヘンリー2世を演じるのは佐々木蔵之介さん。加藤さんにとっては初めての共演となる。

 「以前から映像では拝見していたのですが、舞台『ショーシャンクの空に』を見て、勢いや熱量のすごさに驚きました。今回、ぼくは父の王座を狙う役で、稽古(けいこ)では『言葉の戦い』というか、ヒリヒリする緊張感を感じています。声の圧力で王の威厳を表現される様を目の前で感じられて、すごくいい経験だなと思います」

 舞台では息子たちのほかにも、若き愛人や敵国の王まで加わってスリリングなパワーゲームを繰り広げる。シリアスな話だが、英国らしいユーモアや笑いもあると加藤さんは言う。

 「演出家の森新太郎さんも本読みの最初に、『これはコメディーです』とおっしゃっていました。確かに家族のいさかいやケンカって、やっている本人は真面目でも、度を超すと笑えるところがありますよね。普段は勇敢なリチャードも、両親の前では違う表情を見せます。クリスマスの家族団らんのだまし合いには、緊張感も笑いもある。そんな会話の一つ一つを楽しんでもらえればと思います」

 ◇苦手なダンスを克服できた「ウエスト・サイド・ストーリー」

 2005年に「テニスの王子様」で俳優デビューし、昨年、俳優生活15周年を迎えた加藤さん。菊田一夫演劇賞も受賞し、その実力を証明した今、これまでのキャリアで転機になった作品を尋ねた。

 「“演劇の師”とあおぐ演出家の白井晃さんと出会った『オセロ』は転機でしたね。すべてが緻密に計算されている方で、それまで芝居の経験も少なかったぼくに、演劇の基礎を叩き込んでくれました。それは苦い思い出でもあるんですけど、あの舞台があったからこそ自分を高めなければと思えたんです」

 コロナ禍で中止になったブロードウェー・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」での経験も、大きな影響を与えたという。

 「ぼくにとってミュージカルの魅力は、エンターテインメント性と歌にのせた芝居です。ダンスもその表現の一つなのですが、実はずっと苦手意識があって。そんなとき、『ウエスト・サイド・ストーリ―』の演出家だったデビッド・セイントさんに、『踊り手にとって、ダンスは言葉だ。すべてがそのシーンを彩り、形作るものなんだ』と言われたんです。それを聞いたとき、“すべては芝居で、全部がつながっているんだ”と気づいて、ダンスが好きになりました」

 また、役者としてずっと大切にしている言葉は「やればできる」だと即答。

 「この仕事をしていると、最初からダメだとあきらめるのではなく、やってみなければわからないと感じることが多いんです。たとえば今回の『冬のライオン』。中世イングランドのお話ですが、俳優たちはその時代に生きていたわけじゃない。それでも、その人たちの顔色や呼吸の音さえ感じられるシーンになるまで、絶対にあきらめずに、突き詰めていく。そんな気持ちにしてくれる、大切な言葉です」

 4月には15周年の集大成として野外コンサートを開催する。今年の抱負を尋ねた。

 「今はコロナ禍で、演劇だけでなく誰もが不安な気持ちを持っていると思います。そんな中、我々は表現していくことでしかお客さんに届けられるものはない。これからも初心を忘れず、一番大事なものは何なのかをしっかり見つめて、この1年も頑張っていきたいなと思います」

 <加藤さんに一問一答>

 ――私生活で役に影響される方?されない方?

 「ひきずらない方です」

 ――舞台中、絶対食べるものは。

 「フルーツ。ビタミンはとるようにしています。キウイが好きなんです」

 ――楽屋に置いているお気に入りグッズは。

 「とくに今の時期は乾燥するので、加湿器は置いています。夏場でも冷房が効いていたりするので」

 ――最近、体のためにしている事は。

 「ちゃんとご飯を食べること。作品によっては、筋トレもします。『冬のライオン』のリチャードは『獅子王』と呼ばれる男ですが、闘うシーンはないので、立ち姿だけでも彼の勇ましさが伝わるように、体を作りこむつもりです」

 ――今後、舞台で演じてみたい役は。

 「意外とコメディーをやっていないので、いつかがっつりやってみたいです」

 <プロフィル>

 かとう・かずき 1984年10月7日生まれ。2005年ミュージカル「テニスの王子様」で脚光を浴びる。翌年ミニアルバム「Rough Diamond」でCDデビュー。舞台・ミュージカル・映像作品にも多数出演。俳優・声優としても活躍中。

 *……舞台「冬のライオン」▽作:ジェームズ・ゴールドマン▽翻訳:小田島雄志▽演出:森新太郎▽出演:佐々木蔵之介、葵わかな、加藤和樹、水田航生、永島敬三、浅利陽介、高畑淳子▽2月26日~3月15日に東京芸術劇場 プレイハウス(東京都豊島区)で上演

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