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取材に応じた瀬戸康史さん
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取材に応じた瀬戸康史さん

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スポットライト~舞台で輝く男たち:瀬戸康史さん「役者としてギアが入った」 舞台「マーキュリー・ファー」が転機に

 「ステージ」に情熱を注ぐ俳優に舞台の魅力を聞く新連載。第1回は瀬戸康史さん。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

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 「舞台は自分の感情が解放される場所」と語る瀬戸康史さん。映像で活躍しながら、数々の名舞台に立ってきた彼の新作は、12月4日に開幕する「彼女を笑う人がいても」。

 安保闘争時代に亡くなった一人の少女をめぐり、1960年代と現代に生きる2人の新聞記者(瀬戸さんの一人二役)が、正義と真実を問いかける必見作だ。

 「安保条約がテーマの一つなので難しい話なのかなと思って台本を読んだら、すごく読みやすかったんです。セリフから登場人物それぞれの声が聞こえてきて、伝えたいことも今の僕らにグサグサくることばかりでした」

 社会を変えようと権力と闘い、命を落とした「彼女」。だが、舞台に「彼女」は登場せず、見る人の想像力をふくらませてくれる。

 「いいですよね。『彼女』には、(安保闘争で亡くなった実在の学生)『樺(かんば)美智子さん』というイメージがあります。僕は、“くやしさ”とか“涙”といった抽象的なイメージでとらえました。演じる伊知哉と吾郎は、声なき声を社会に届けたいと奔走しますが、僕も自分の体で作品をお客様に届ける仕事なので、気持ちはすごくわかります」

 共演は、ミュージカル出身の木下晴香さんや若手俳優の渡邊圭祐さんなど7人。日本を代表する演出家・栗山民也さんと瀬戸さんの初タッグも魅力だ。

 「若い二人(木下さんと渡邊さん)はすごくピュアで、いろんな課題をネガティブにとらえず、前向きに取り組んでいる姿がすてきだなと思いますね。栗山さんは新聞記者の役づくりで、『(それっ)ぽいのが一番だめ』と教えてくれました。新聞記者にもいろいろあるんだからと。今回の舞台で大切なのは言葉。栗山さんは役者のいらないものを切り捨て、洗練させてくれるんです」

 真実を求める若者たちの姿に胸が熱くなる物語で、瀬戸さんのみどころを尋ねた。

 「1960年と2021年を行き来する話で、その間に人は“言葉”やいろんな問題から逃げて、今があるんだと思いました。人と話したりぶつかることは何かが生まれるきっかけにもなるし、すごく大切なこと。そんなことが伝わる、勇気が出る作品です」

 ◇舞台の可能性は無限大。転機の作品は「マーキュリー・ファー」

 今年33歳を迎えた瀬戸さんに、舞台に立つことの魅力を尋ねた。

 「舞台はいろんなことをやれるし、なんならしゃべらなくてもいい(笑い)。可能性といったら無限大なんです。普通なら自分が触れられない考え方を知ることもできます。僕にとって舞台は学びの場であり、自分をさらに鍛えてくれるフィールドですね」

 演じる上では、「相手を大切にしたい」と真摯(しんし)に語る瀬戸さんが転機になった舞台は、来年、俳優の吉沢亮さんと北村匠海さんのダブル主演で再演される「マーキュリー・ファー」。瀬戸さんは初演で、高橋一生さんの弟役を見事に演じた。

 「役者としてギアが入った作品ですね。スタッフにも『あれから変わった』と言われました。客席は200人ぐらいの狭い空間でお客さんがものすごく近い距離にいて、いかれたパーティーみたいなシーンではお客さんもパーティーの一員みたいな感じになった。その生々しさこそ舞台の魅力だし、再演も見たいです」

 今後、目指していきたい俳優像とは。

 「尊敬している人やすごいと思う人はいるけれど、どこか人は人だと思う自分がいて。若い頃に誰かと比べて、苦しんだからかもしれません。これからも自分は自分で、来年も好きなことをしたいなと思います」とほほ笑んだ。

 <瀬戸さんに一問一答>

 ――私生活で役に影響される方? されない方?

 されません。

 ――楽屋に置いているお気に入りグッズは。

 楽屋の「のれん」はいつも自分で作っています。

 ――最近、体のためにしている事は。

 毎晩のストレッチは絶対します。あと、最近は革靴で足の裏が硬くなるため、ゴリゴリした棒で足裏マッサージをしています。

 ――舞台中、絶対食べるものは。

 「チョーヤ」の梅シロップ。リラックスできるので毎晩飲んでいます。

 ――今後、舞台で演じてみたい役は。

 役ではないのですが、今回ご一緒した栗山さんの舞台にまた出演したいです。

 ◇プロフィル

 せと・こうじ 1988年5月18日生まれ。福岡県出身。近年の主な出演作品にドラマ「透明なゆりかご」「まんぷく」「デジタル・タトゥー」「私の家政夫ナギサさん」「男コピーライター、育休をとる。」、映画「寝ても覚めても」「ルパンの娘」、舞台 「陥没」「ドクター・ホフマンのサナトリウム」(共に作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)、「23階の笑い」、ミュージカル「日本の歴史」(共に作・演出:三谷幸喜)などがある。2022年1月14日に映画「コンフィデンスマンJP英雄編」、2月25日に主演映画「愛なのに」の公開を控えている。

 *……彼女を笑う人がいても▽作:瀬戸山美咲▽演出:栗山民也▽出演:瀬戸康史、木下晴香、渡邊圭祐、近藤公園、阿岐之将一、魏涼子/吉見一豊、大鷹明良▽上演:世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)で12月4~18日▽福岡、愛知、兵庫でツアー公演あり▽公式サイト:https://setagaya-pt.jp/performances/202112kanojyo.html

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