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スポットライト~舞台で輝く男たち:橋本淳さん 「ちりとてちん」松重豊、和久井映見がくれた言葉に支えられ デビュー18年、新作舞台への思い明かす 

 「ステージ」に情熱を注ぐ俳優に舞台の魅力を聞く新連載。第10回は橋本淳さんに話を聞きました。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

 2004年にドラマ「WATER BOYS 2」でデビューし、翌年、特撮ドラマ「魔法戦隊マジレンジャー」にレッド役で主演。NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」ではヒロインの弟役を演じて人気を博した橋本さん。4月2日から黒木華さんと夫婦役を演じる舞台「もはやしずか」に出演する。これまでのキャリアと新作に懸ける思いを聞いた。

 ◇21、22歳ごろは腐ってた 高橋一生との舞台が転機に

 近年は「キネマの恋人」「カリギュラ」などの舞台で、抜群の存在感を発揮している橋本さん。現在35歳になるが、ここに至る道のりは平坦ではなかったという。

 「高校2年で事務所のオーディションを受けて、『WATER BOYS 2』でデビューしました。その後すぐ戦隊ものや朝ドラに出演できて、運が良かったんですね。でも、そこから仕事がなくなって……。21、22歳ぐらいの時期は腐っていました。そのころ初めて、自分が学生ノリで仕事をやっていたと気づいたんです」と、心境を明かす。

 その後、真剣に仕事に取り組む中で、「舞台を見たほうがいい」と周囲に勧められた。

 「そこから年間100本芝居を見ました。次第に自分の好みがわかってきて、居酒屋に行って演出家さんに会い、『出してください』と頼んだりもしました。そんなことが積み重なって、大人の演劇に出られるようになったんです」

 役者としての転機は25歳のとき、「温室」という舞台だった。

 「主演は高橋一生さんでした。演出家の方が病気で稽古(けいこ)時間がほとんどない状況にもかかわらず、誰もが自分の仕事に誇りを持ち、感情だけでなく技術を使って演じていて。そんな先輩の姿に感銘を受け、『役者って演出家の指示がなくてもこんなに動けるんだ!』と衝撃を受けました。表現の根本を学びましたね」

 ◇「才能とは続けられること」 松重豊&和久井映見の言葉が支えに

 キャリアを振り返って、「紆余(うよ)曲折ありましたが、すべてが自分の血肉になり、どの経験も今につながっている」と語る橋本さん。

 役者をする上で大切にしているのは、「ちりとてちん」で両親役だった松重豊さんと和久井映見さんがくれた言葉だという。

 「撮影で監督に怒られていたときのことです。松重さんがセット裏に20歳だった僕を呼んで、『才能がある役者なんて1%もいないんだ。続ける才能さえあれば、この仕事は誰でもできる』と励ましてくれた。『俺も35、36歳まで奥さんに食わせてもらったんだよって。

 和久井さんは、『役者を続けていれば、絶対に3回スポットライトを浴びる』と言ってくださった。『仕事がない時期があっても、次にいつ光が当たってもいいように準備すれば大丈夫』と」

 撮影から15年、役者をやめたくなるたびに、この言葉に励まされた。「お父ちゃんとお母ちゃんが役者を続ける限り、僕もやめられないと思いました。二人にはいつか恩返しがしたいです」と思いを明かした。

 ◇気鋭の演出家と挑む新作は黒木華と夫婦役

 4月に開幕する主演舞台「もはやしずか」は、現代の夫婦が直面する問題を描いた作品。演出を今注目の加藤拓也さんが手掛け、安達祐実さんらが出演することでも注目されている。橋本さんはキャスティングからこの舞台に取り組んだ。

 「加藤くんと、2年前にこの企画を立ち上げました。彼の作品は出たいと言ってくれる方が多くて、どの役も信頼する方たちにお願いできました」と、目を輝かせる。なかでも、橋本さんが演じる康二の妻、麻衣を演じる黒木華さんは、これまで何度も舞台で共演してきた仲だ。

 「黒木さんは大きな劇場だけでなく、小劇場の演劇にも巻き込みたいと以前から思っていました。実際に会うとパワフルな人だけど、陰があって繊細な部分もある。そんな二面性を演劇でも見せたい。ファンの方に『こういう黒木華が見たかった!』と思ってもらえるはず」と自信を見せる。

 舞台で、出生前診断を受けた康二と麻衣は、医師に障害のある子供が生まれる可能性を示される。康二は過去のトラウマから夫婦関係を破綻させてしまい……。

 「テーマは重いけれど、人の生活をのぞき見しているような面白さがある作品。見ているうちに“あれ?これ自分の話かな”と思えてくるのが見どころです。何か考えるきっかけをくれる舞台ですので、ぜひご覧ください」

 <橋本さんに一問一答>

 ――舞台中の息抜きは。

 「YouTubeの『うさぎの麦チャンネル』とインスタの『ゴールデンレトリバーのコメちゃん』を見て癒やされています。配信ドラマも好きで、最近見ているのはApple TVの『サーヴァント』と『セヴェランス』」

 ――舞台中、かかせないものは。

 「ヤクルト1000! 毎週水曜に家に届くんですが、飲んでから風邪をひいたことがないんです。今はコンビニでも買えるのがうれしい」

 ――楽屋に置いているお気に入りグッズは。

 「必ず台本を置きます。お守りのようなものです。あとは歯ブラシぐらい」

 ――気になる俳優は?

 「以前はティム・ロス。今は『THE BATMAN -ザ・バットマン-』に出演中のロバート・パティンソンが好きです。『ハウス・オブ・グッチ』のジャレット・レトのように、見るたびに印象が変わる俳優にひかれます」

 ――今後、舞台で演じてみたい役は。

 「麻酔医。完全に『医龍』の阿部サダヲさんのイメージですね(笑い)。どこか変で、何かを抱えている感じがおもしろそうだなと」

 <プロフィル>

 はしもと・あつし 1987年1月14日生まれ。2004年にドラマ「WATER BOYS 2」でデビュー。2007年、NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」にヒロインの弟役で出演した。舞台では、宮田慶子さん、栗山民也さん、白井晃さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんなど、著名な演出家の作品に出演している。

 *……舞台「もはやしずか」▽作・演出:加藤拓也▽出演:橋本淳、黒木華/藤谷理子、天野はな、上田遥/平原テツ、安達祐実▽公演日程:4月2~17日▽会場:シアタートラム(東京都世田谷区)

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