取材に応じた早見あかりさん
女優の早見あかりさんが、9月15日から東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演される舞台「血の婚礼」に出演する。「やりたいことに貪欲」な自身の性格や、舞台で感じた「種類の違う愛」、育児と仕事のバランスの取り方について聞いた。
◇世の中のスタンダードと違っても「自分が望むならやればいい」
同作は、1人の女をめぐり、2人の男の愛が引き起こす婚礼の日の悲劇を、「土地の因習」や「男らしさ女らしさの思い込み」といった要素を盛り込みながら描く。実際に起きた事件をもとに、1930年代のスペインで執筆された。花嫁役を演じる早見さんは、「この時代、妻になることは、二度と自由を持てない身になるという固い約束を結ぶようなもの。私みたいな人間はこの時代に生きていけないのでは」と話す。
子供の頃から、結婚や出産への憧れが強かったという早見さん。15歳のときに人気アイドルグループを脱退。2018年、23歳のときに結婚し、2020年に第1子女児を出産。27歳にしてさまざまな経験を重ねてきた。
「世の中のスタンダードと違ったとしても、仕事でもプライベートでも、『自分が望むことならやればいいじゃん』という考えです。結婚、妊娠、出産、この年齢ですべて終えているのは、やりたいことに貪欲な性格だからだと思います。
日本人ではまれなタイプだと思うし、自分の考え方が正しいかは分かりません。でも誰かのせいにして生きていたくはない。そうしないと、その誰かを恨み続けるような性格なので(笑い)。責任転嫁せず、やりたいことを諦めないことで、周りとも良い関係が築けていると思います」
◇ストレートに伝えられない愛 「自分にはない部分」
早見さんが演じる花嫁は、「自分にはない部分」を持つ人物だという。
「花嫁と昔の恋人の関係は、私にとってすごく不思議。好きだけど嫌い、嫌いだけど好き、みたいな心情が描かれています。私自身は好きか嫌いかの2択しかない。ストレートには伝えられない、自分が知っているのとは種類の違う愛もあるのだと感じました。
共感できる部分もあります。花嫁の思いが爆発して、自分の意志に従って動くシーンがある。がんじがらめになって生きるなか、それでも体が動いちゃう。そんな気持ちが、私には分かるなと思いました」
◇育児のためにも「働くこと」が必要
コロナ禍での妊娠、出産を経験し、産後1年で本格的に仕事に復帰した。あらためて「働くこと」の大切さを感じたという。
「出産してから3年ぐらいは、お仕事をしなくてもいいと思っていたのですが、実際は仕事をしているほうが、余裕を持って子供に接することができると分かりました。育児と仕事の両立は、これと言って意識していることはありませんが、仕事をすること自体が、両方のバランスを保てることにつながっています」
夫婦で家事分担のルールは決めず、できる方がやるようにしているという。大変だと感じたときには、「大変だ」と言うことを心がけている。「声に出せずに、頑張ってしまうときもありますが、我慢して後で爆発するよりは、こまめに吐き出すのが大事なのかなと思います」
もうすぐ2歳になる娘の育児は「楽しくもあり、幸せでもあり、大変でもある」と明かす。「娘が水をこぼしてしまったとき、『あー……』と思いながら、その様子を見ていました。そしたら、すごい勢いでおもちゃ箱に入っているタオルを取りに行き、こぼした水を拭いていました。『こぼしたらどうするか、ちゃんと理解してるんだ』と、成長に驚きました。全然拭けていなかったけど、自分の頭で考えて行動するということを、この子はできたんだって思うと、すごいなと思いました」と成長を喜んだ。
*……「血の婚礼」▽原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ▽演出:杉原邦生▽出演:木村達成、須賀健太、早見あかり、安蘭(あらん)けいほか▽公演日程:9月15日~10月2日に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーン、10月15日と16日に大阪の梅田芸術劇場で上演される。