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彼女がキレイな理由:中谷美紀さん 女優業30年 欲望や野心は消えた ゴールも定めず「なるようになる!」という心境に

 女優の中谷美紀さんが主演を務めるドラマ「連続ドラマW ギバーテイカー」が1月22日からWOWOWで放送・配信をスタートする。2023年は、女優として30年を迎える大きな節目の年。「仕事を始めたころはアルバイト感覚だっというたので、こんなに続くとは思っていなかった」と振り返る中谷さんに、ターニングポイントとなった作品や女優としての意識の変化について聞いた。(全3回の1回目、取材・文/服部広子)

 17歳のとき、連続ドラマ「ひとつ屋根の下」で女優デビュー。演技の仕事の面白さや醍醐味(だいごみ)を初めて感じた作品が、1995年公開の初主演映画「BeRLiN(ベルリン)」だった。

 「それまでの私は、器用貧乏というか、大概のことはすぐにクリアできてしまい、逆に深めることが苦手。移り気な性格でした。それが、『BeRLiN』という作品は、どこをゴールにして突き進んでいいのかわからない。こんなに答えがないのは初めて!と思えた仕事、というよりも対象でした。

 当時は、アルバイト感覚で仕事をしていたところがあって、演じる仕事を職業にしようと本気で考えたことはなかったんです。それがこの作品に出会ったことで、頑張ってみようかなという気持ちになりました」

 同作で中谷さんが演じたヒロインは、ホテトル嬢のキョーコ。

 「人間って、理性が感情の発露を邪魔してしまうところがあると思うんです。でも、キョーコは感情を解放しっぱなしで、それが心地よかったんだと思います。不思議の国のアリスのように未知の世界に呼び込んだような感覚でした」

 それから約10年後、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した映画「嫌われ松子の一生」(2006年公開)との出会いも大きかった。

 「本来、4カ月かかっても撮り切れるかどうかの分量を2カ月で撮影しなければならず、役者もスタッフも、不眠不休。私の未熟さゆえに、監督から叱られてばかりでしたし、心身共にギリギリまで追い詰められて……」

 ハードな撮影スケジュールに取り組む中で学んだことは、“切り捨てること”。

 「1人の女性の波瀾(はらん)万丈の人生を描く物語で、5人の男性とくっついたり離れたり。同じ日に次々と違う男性とのシーンに臨むためには、終わったシーンをどんどん切り捨てなければ、次に進めないということを学びました。

 20代のころは、役の気持ちでいることが心地よくて、しばらく役のままでいることを楽しみ、苦しんでいました。でも、『嫌われ松子の一生』以降、台本はどんどん捨てています。スタッフ、キャストのこともなんとなく覚えているのですが、どの作品で会ったかまでは記憶していないです」

 女優の仕事を続けてこられた理由を尋ねると、自らに問いかけるように「なぜでしょうか」と中谷さん。

 「こればかりは本当に運とタイミング。ご縁で続いてきた仕事なので、いつの間にかここにたどり着いたという感じです。この先、どこに向かっていくかもわからないですし、特にゴールも定めず。昔は、海外作品にも携わりたいとか、何かを成し遂げようという欲望や野心みたいなものもありましたが、今は全くなくて。『なるようになる!』と思っています(笑い)」

 *……2回は15日、3回は22日に掲載予定

<プロフィル>

 なかたに・みき 1976年1月12日生まれ。東京都出身。1993年に俳優デビュー。2006年の「嫌われ松子の一生」(中島哲也監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。同賞の優秀主演女優賞を2度、優秀助演女優賞を3度受賞している。2013年の舞台「ロスト・イン・ヨンカーズ」で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。2023年には「連続ドラマW ギバーテイカー」(WOWOW)のほか、1月27日に映画「レジェンド&バタフライ」(大友啓史監督)の公開、3月16日~4月15日に舞台「猟銃」のニューヨーク公演が控えている。

 *……連続ドラマW ギバーテイカー/元小学校教諭の刑事・倉澤樹は12年前、当時小学6年生だった教え子・貴志ルオトに娘を惨殺された。倉澤は娘の命日を目前にルオトが医療少年院を退院することを知るが、被害者遺族としてルオトの更生に疑心を抱かずにはいられない。ある日、倉澤の元に「あなたの大事なものを、もう一度奪います」という不審なメッセージが届く……というストーリー。ルオトを人気グループ「Sexy Zone(セクシーゾーン)」の菊池風磨さんが演じる。1月22日から毎週日曜午後10時にWOWOWプライムで放送、WOWOWオンデマンドで配信。全5話。同日、中谷さんの主演映画5作品をWOWOWシネマで放送。中谷さんが作品や撮影について語る特別コメントも放送する。

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