映画「魔女の香水」に出演し取材に応じた黒木瞳さん
第一線で活躍する著名人の「30歳のころ」から、生きるヒントを探します。今回は俳優の黒木瞳さん。アラサー時代の思い出や、30代をより輝かせるためのアドバイス、6月16日公開の映画「魔女の香水」(宮武由衣監督)などについて聞きました。(全3回の1回目、編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)
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◇宝塚トップ娘役から外の世界へ “なんとかなる”の精神で躍進
「30歳のころ、私は子供でしたね。幼いころから20歳になったら大人になれるかな、30になったら大人になれるかなと思っていましたけど、今思えば子供だったなと思います。知らないことが多かったし、失敗を重ねることが多かったし、反省も多かった。大人になったのは……そうですね、45歳ぐらいかな」
輝くような笑顔でそう語る黒木さん。
福岡出身で、高校を卒業後、1981年宝塚歌劇団に入団。月組のトップ娘役として大地真央さんの相手役を務め、絶大な人気を博した。1985年に退団した後は、注目の若手女優として映画やドラマで活躍を続けた。
「とにかく20代は忙しかったですね。宝塚で初舞台を踏んでから、ずっと休みなしでやっていました。仕事については、言われたことを私なりにきちんとやるという思いで取り組んでいました。それは今も変わりませんね」
そんな多忙な日々で、30歳になった黒木さんは一般男性との結婚を決めた。
「結婚する前、仕事と家庭の両立については、ほとんど考えませんでした。私は仕事以外はあまり深く考えないというか、いつも“なんとかなる“の精神なんです。それでも結婚した当初は、『待ち合わせをしなくてもこれから毎日会える!』と喜びましたし、両親の戸籍から離れて、家族を初めて自分で作ったことは新鮮でした」
結婚後も変わらず芝居に情熱を傾ける中、日本で社会現象を巻き起こした小説「失楽園」の映画版が公開されたのは、36歳のとき。役者人生の転機となる作品だった。
◇「失楽園」の撮影直前に出産 わずか1カ月半で復帰した理由
1995年から連載され、大ベストセラーになった「失楽園」は、作家・渡辺淳一が官能的な愛と性を描いた恋愛小説。世間で注目が高まる中、黒木さんと役所広司さん主演で映画化が発表されたとき、黒木さんは第1子を妊娠していた。
「あの頃はいろんなプロデューサーに、『出産したらすぐに撮影に入ります』ってお伝えしました。当時はそんなに早く復帰する女優はいなかったんです。でもいざ出産してみると想像したより体はしんどいし、娘がすごく可愛かったんです。ずっと一緒にいたいなって思いました」
当初は、出産して3カ月ほどで撮影に復帰するつもりでいた。「でも、台本を読むと素晴らしくて、すぐに芝居をしたくなるんです。そんな日々が続きました」と振り返る。仕事と子育ての間で葛藤した末に、黒木さんが撮影に入ったのは、出産後わずか1カ月半後のことだった。
「やっぱり作品との出会いなんです。最初から1か月半で撮影に復帰しようと思ったわけではなかった。もちろん、そんな状況ですから撮影は私一人ではできませんでしたね。スタッフの力を借りて乗り越えました」
そんな芝居への情熱は結実し、1998年、黒木さんは同作で第21回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞。役者として飛躍した。現在は俳優として魅力を放ちながら、映画監督や舞台演出も手掛けるなど新たな挑戦を重ねている。
「振り返ると30代は、好きなことを、できる範囲で、あるがままにやっていた気がしています。お芝居が好きだからそれを続けた。その中で好きな人と結婚して、子供を産んだ、ということですね。子供を育てる中で大人にならなきゃと思ってきたので、40代半ばくらいから、少しずつ大人になっている気がします。
私にとって一番の励みは、エンターテイメントの世界でお客様が喜んでくれること。好きな仕事があることが幸せですし、これからも毎日“続ける”ことを思いながら、進んでいきたいですね」
<プロフィル>
くろき・ひとみ 10月5日生まれ。福岡県出身。1981年に宝塚歌劇団に入団し、月組トップ娘役として活躍。映画「化身」(1986年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「失楽園」(1997年)で、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。「破線のマリス」「仄暗い水の底から」「東京タワー」「終わった人」など数多くの映画に出演。近年は映画監督として4作品を手がけ、舞台演出も手掛ける。
*……映画「魔女の香水」/上司のセクハラに抗議し、職を失ってしまった派遣社員の若林恵麻(桜井日奈子さん)は、「魔女さん」と呼ばれる白石弥生(黒木瞳さん)の香水店を訪れる。店で働くことになった恵麻は、弥生に授けられた言葉と香りによって、天職を探し求めるように香料会社で働き始める……というストーリー。
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