連続ドラマ「フジコ」について語った尾野真千子さん
女優の尾野真千子さんが、13日から配信される動画配信サービス「Hulu」のオリジナル連続ドラマ「フジコ」(全6話)に主演し、連続殺人犯の女性フジコを演じている。原作は、読後感の悪いミステリー「イヤミス」といわれるジャンルに属する真梨幸子さんのベストセラー小説「殺人鬼フジコの衝動」。尾野さんは今作のオファーを受けた際、「リアルに起こっている事件と重なって、いい方にとらえることができなくて……」と最初は断ろうとしたという。尾野さんが出演を決めたきっかけは? またフジコを演じる意味について聞いた。
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◇演じている間は何も納得できず…
尾野さんは台本を読んで「このドラマをやる意味っていうことを考えました。自分にとってプラスになるかということより、世の中から批判されることの方が多いのではないかという。だったらこれは今、やるべきではないのかなと思って」と逡巡(しゅんじゅん)したそうだが、結局はやることにした。
決め手は今回の脚本を担当した高橋泉さんが手掛けた映画「凶悪」(2013年)を見たことだったという。「リアルではなくて(物語を)作るんだという。物語を、うそ(フィクション)を作るということですね。どんな残虐な話であろうとも、それをうその話として作っている。そこで何かを伝えられるのであれば、割り切ればいいのかなと思って引き受けました」という。
だが撮影に入って、「演じている間は何も納得できず……。つらいなと思っていました。人を殺すのに楽しんではいられない。つらかったし、嫌だったんですけど、出来上がったものを見たらやってよかったなと、本当に素直に思えました」と納得がいった。
しかも、演じているときは共感できなかったが、完成した作品を見て、「前半で泣けました。不安がいっぱいあった中で出来上がって、一人の視聴者として見た時に、痛みとか悲しみとか、つらいと、ちゃんと感じられたんだと思う」と感情移入できたという。
◇フジコの気持ちを「分かりたくない」
演じたフジコについては「何を考えているか分からない。気持ちが本当にない、見えないというか、悪いことしてリセットするために人を殺すという気持ちは分かってあげたくても分かりたくないですね」と共感できないどころか反発心まで生まれた。
「フジコという人が本当に何を考えているか分からなかったんです。たまに母性を見せたなと思うと子供に戻っちゃったり、殺人犯の顔になったり、女の顔になったり、無になったり、最後は最後で自分がかわいそうになったり。意味が分からない(笑い)。だから見てもらう人に気持ちは分かってもらわなくていいなと思っていますね。フジコの気持ちなんて。本当に衝動、それだけです」と言い切る。
そんな尾野さんのドラマの魅力を聞くと「魅力かあ……。こうやって言葉にできないことかな。うまく言葉が見つからないというか。一言でいうなら面白いと思うんです。でも面白いという言葉でかたずけてしまうと、いろんな人がいろんな意味を付け加えて解釈するじゃないですか。そうはしてほしくなくて。こうやって言葉に詰まることが魅力だと思います。だから“無”ですね。一概によかったねと言えないところだと思います」という答えが返ってきた。
◇女優は天職
尾野さんにとって女優の仕事は「自分が輝ける場所。なくてはならない場所ですかね」という。天職としてこれからもさまざまな作品で輝く女優として尾野さんのこれからの活躍に期待したい。
次回は、尾野さんの休日の過ごし方や生き方について聞く。
<プロフィル>
1981年11月4日生まれ、奈良県出身。中学生の頃、河瀬直美監督に見いだされ、「萌の朱雀」(97年)で主演デビューを飾る。同作が第50回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞し、自身も他の海外映画祭などで主演女優賞を受賞。2007年、再び河瀬監督とタッグを組んだ「殯(もがり)の森」がカンヌ国際映画祭グランプリに輝き評価を高める。NHK連続テレビ小説「カーネーション」(11~12年)では主演を務める。主な映画出演作に「EUREKA ユリイカ」(01年)、「リアリズムの宿」(03年)、「クライマーズ・ハイ」(08年)、「外事警察 その男に騙されるな」(12年)、「探偵はBARにいる2」(13年)、「謝罪の王様」(13年)、「そして父になる」(13年)、「ニシノユキヒコの恋と冒険」(14年)、「ソロモンの偽証」(15年)、「きみはいい子」(15年)などがある。公開待機作に「起終点駅 ターミナル」(15年)、「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」(16年)、「エヴェレスト 神々の山嶺」(16年)、「後妻業」(16年)がある。
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