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毎日姿が変わってしまう男性の恋愛の過程をファンタジックに描き出した映画「ビューティー・インサイド」(ペク監督)が22日に公開された。主人公ウジン役に、前代未聞の123人がキャスティングされ、話題を呼んでいる。そのウジンの恋人役を、ドラマ「トンイ」(2010年)や日本の映画「MIRACLE チビクロくんの恋と魔法」(14年)に出演したハン・ヒョジュさんが演じている。このたび来日したヒョジュさんは「真の愛について考えて、恋愛がしたくなる温かい映画です」と語った。
◇多くの俳優を観察するのは難しくて楽しかった
「イスは人に対する配慮ができる女性。家具を買いに来た人に家具の説明をするのではなく、買う人のためにその人がどんな人なのかを把握しようとするんです」と役のホン・イスについて紹介するヒョジュさん。
店にやって来たウジンに一目ぼれされる役柄も納得の可愛らしさだ。ウジンはインターネットで家具を販売する家具デザイナー。18歳のときから寝て目覚めると姿が変わってしまう特異体質になってしまった。顔を合わせるのは、彼の秘密を知っている母親と親友だけ。ウジン役に、主な俳優だけでも21人、モンタージュを入れると123人、国籍、性別、年齢も多彩な配役がなされた。韓国内のベテランから若手俳優、名脇役だけでなく、日本の女優・上野樹里さんも出演して話題となっている。
共演シーンについてヒョジュさんは「多くの俳優と共演できて二度とない経験となりました。難しい部分もありましたが、興味深くて楽しかったです。一つ一つが大切なシーンです。それぞれのスタイルでウジン役を演じるので、私も演じる側でありながら、観察して見守る立場となりました」と語る。
映画の全体像が見えていたのは、ヒョジュさんとペク監督のみだったこともあり、企画の段階からペク監督と入念に話し合ってウジンのキャラクターをすり合わせていった。相手役がイメージと違うときは、意見をペク監督に伝えながら芝居をしていったという。
ヒョジュさんは「監督から相手役を紹介してもらうことはなく、台本よりも現場での感情を大切にしながら撮影に臨みました。私自身の気持ちの混乱が、そのままイスの感情に反映されました」と振り返る。
それは、2人が待ち合わせするシーンによく出ているという。毎日姿が変わる彼のことを、街中で見つけることができないイス。「撮影現場で臨場感を感じながら、イスの感情を感じることができたシーン。シナジー効果が出せたと思います」と力を込める。
◇姿形の違う相手への愛から真の愛が見える
イスはウジンに告白されたとき、「最初はうそだと思ったのでは」と想像したという。「でも引かれるところがあったから、姿が変わるというウジンの話が本当なのか確認しにいったのだと思います」と話す。
半信半疑だったイスに信頼を植え付ける重要な役を、上野さんが演じている。「これまで大勢の人に見えたウジンが確実に一人に見えたのは、上野さんが演じたウジンのお陰です。上野さんのウジンが、自分の気持ちをしっかりと伝えてくれたからウジンへの信頼が芽生えたのです。上野さんはとてもいい女優さんで、一緒に演じることができて私もありがたかったです」と感謝の言葉を語る。
ウジンは、姿形が変わることでたくさんの人に愛されているイスを幸せだと思い、イスは彼を「自分勝手」だと思ってしまう。恋愛での男女の思い違いは、誰もが共感できるところだ。
「ペク監督と話し合ったのは、現実的な話をつくろうということ。ファンタジーだけれど、普遍的なラブストーリーにしたいということでした。男女の立場の違いは、普通の恋愛の姿と一緒です。2人が大げんかするのも、結婚の問題が出てきてから。これも現実的な話ですよね」
恋愛において相手を信じることだけでなく、自分の気持ちを信じることの大切さが映画の中には描かれている。恋が始まるときめきから、相手を見失い、やがてすれ違う2人……。どんな姿でも相手を愛せるのか、という恋愛の本質を問うてくる。
「この映画には美しい意味が込められていると思います。真の愛について考えて、私も恋愛したいと思えて、冬に見るのにピッタリの温かい気持ちになれる映画です」とメッセージを送る。
劇中では、本人いわく「こんなキスシーンはほかにはない」というシーンも飛び出すほか、「可愛らしくて大好き」という、子どものウジンと演じたコミカルなシーンにも注目だ。
映画「ビューティー・インサイド」は、ヒョジュさん、パク・ソジュンさん、上野さん、イ・ジヌクさん、キム・ジュヒョクさん、ユ・ヨンソクさん、キム・サンホさんほかが出演。22日からTOHOシネマズ 新宿(東京都新宿区)ほかで公開中。
<プロフィル>
1987年生まれ。ドラマ「春のワルツ」(2006年)、「華麗なる遺産」(09年)、「トンイ」(10年)、映画「天国の郵便配達人」(09年)、「王になった男」(12年)、「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」(14年)、「セシボン」(15年)などに出演。「監視者たち」(13年)で、第34回青龍映画賞・女優主演賞を受賞。日本の映画では岩井俊二監督の「Love Letter」(1995年)、「花とアリス」(2004年)がお気に入り。好きな音楽は、映画「クローサー」(04年)で挿入歌に使われたダミアン・ライスさんの音楽という。
(インタビュー・文・撮影:キョーコ)