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三浦理恵子さん(左)がそば打ちを教わった「芳とも庵」の芳賀威さん
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三浦理恵子さん(左)がそば打ちを教わった「芳とも庵」の芳賀威さん

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三浦理恵子の美容ライフ:第88回 憧れのそば打ち~「芳とも庵」芳賀威さんに聞く

 憧れのそば打ち体験を指導してくださった「芳とも庵」店主の芳賀威(はが・たけし)さんは、8年前にご自分でそば屋を開業した脱サラ組だそうです。もともとそばが好きで、「気が付いたらそば屋になっていた」という芳賀さん。今回はそばに関する面白い話をたくさん伺いました。

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 ◇今はそばの実を冷凍保存!?

 三浦さん まずはおいしいおそばをありがとうございました。自分で打ったそばを食べる瞬間は本当に感動的ですね。

 芳賀さん 今日使ったのは栃木の日光で作られているおそばなんですが、そばの実は産地によって色味が違って、もっと緑がかっていたり、茶色だったり、刈り取るタイミングによっても違うんです。早く刈ったそばは緑色が強くて、そばのいい香りがします。逆に刈り取りが遅いと茶色っぽくなって、甘みが増します。

 三浦さん 毎回同じそば粉を使っているわけではないんですね。

 芳賀さん 僕は週替わりくらいで変えています。そばは寒い地方のモノがおいしいというイメージがありますが、今は宮崎や鹿児島のそばも結構出回っていて、おいしいですよ。

 三浦さん 水と空気が変わるから風合いも変わるんでしょうね。どこのそばを使うか、見極めるときは実際に場所に足を運ぶんですか?

 芳賀さん 僕は固定の農家さんや農協さんから買ってるんですが、そばってすごく奥が深くて、この人は“そばバカ”だなっていう方も多いですよ。お店をやりながら全国の農家さんの畑を歩いて、そばの実を食べみて使うそばを決める方もいるし、今はそばの実を冷凍保存したりもするんです。一度、北海道から新そばを送ってもらったとき、すぐに食べたらさほどおいしくなくて、なんでかなと思って2カ月くらい寝かしてから食べたらすごくおいしかったんです。そばも熟成されるとおいしくなるんですね。ちょっと前までは、1年前のそばなんて安売りされるものだったのに、今はそういう時代じゃなくなりました。かえって甘みが出ておいしいんですよ。

 三浦さん どういうところに保管するんですか?

 芳賀さん うちは高湿冷蔵庫で、湿度の高い野菜室みたいな冷蔵庫です。おそば屋さんによっては冷凍庫に保存する方もいますが、実際に冷凍保存した種を外にまけば芽が出ますから、ちゃんと生きてるんですよ。

 三浦さん 不思議! そばって本当に奥が深いですね。

 ◇そば打ち体験からそば屋へ

 三浦さん ところで芳賀さんがおそば屋さんを始めたきっかけは?

 芳賀さん 僕は気付いたらそば屋をやってました(笑い)。飲食業が好きで、ホテルの専門学校に入ってホテルに就職して、接客から営業職まで経験したあと、30歳手前で銀座の飲食店で仕事を始めたんですが、激務で体調を崩してしまって、どうせやるなら自分で商売しようと思って始めたんです。そばはもともと好きで、そば打ちの体験もやったことがあったので、何とか始められるかなと。当時、東京・江戸川橋にあった「生粉打ち亭」というそば屋さんで修業しました。

 三浦さん それでお店を始められるってすごい決断ですね! 先ほどいただいたそばつゆも濃い目でお出汁(だし)の香りがして、そば湯を入れたら甘みが増してさらにおいしくなりました。

 ◇そばつゆのこだわり

 芳賀さん つゆは修業先で教わったものにアレンジを加えて作っています。そば打ちを習った方も、最終的にはつゆも自分で作られます。

 三浦さん かつおとこんぶで出汁を取るんですか?

 芳賀さん 基本はそれだけですね。あとはしょうゆとみりんと砂糖を一度沸かした“返し”を作って、1カ月ほど寝かしたものを出汁で割って使っていくんです。もっと簡単に作るなら、取った出汁にしょうゆとみりんを入れればある程度のそばつゆにはなりますが、ウチみたいにしょうゆが強いのは、ちゃんと返しを作ってやらないとダメですね。

 三浦さん 単純にしょうゆの量を加減するとかじゃないんですね。

 芳賀さん 僕の師匠なんか、そばに生じょうゆをつけて食べろといったくらい、そば自体がおいしければいいって。実際、「水そば」といって水に浮いてるおそばもあって、そばを極める人は水のこだわりもすごいんですよ。僕の知り合いのそば屋さんで、「フィルターを掃除した翌日はダメ」という方もいて。2日目からよくなるんですって。怖いことに、お客さんも、毎日来る方はまず水を飲むらしいんですよ。で、「今日のはよくないね」っていうとフィルターを交換した日だって。

 三浦さん すごいですねー。

 芳賀さん そういう人は水道局に電話するらしいです。「今日の水はおかしい」って(笑い)。

 三浦さん どれだけこだわって追求するかは自分次第ですものね。

 芳賀さん せっかくおいしいそばを作ったから、市販のめんつゆじゃちょっとな、と思えばつゆも作るようになるし、そうなると出汁も自分で取った方が香りも違う。素人の方でもそうなるので、ホントにそばは奥が深いです。

 ◇まずは道具をそろえる

 三浦さん 自宅でもそばを打ちたいとなった場合、最低限そろえた方がいいものはありますか?

 芳賀さん 鉢はステンレスのボールでも代用できますが、ダイニングテーブルの上で伸ばすわけにはいかないので、まずは伸ばす台が必要ですね。専用の板も売っていますけれど、ある程度つやのある木の板をホームセンターで買えば大丈夫です。それにそば切り包丁と、こま板、めん棒が最低1本。今日、実際にご自分で体験されてどうでしたか?

 三浦さん そば粉と水を混ぜているときにどんどん感触が変わってきて。お水の量が一番大事だっておっしゃっていたじゃないですか、それは自分の感覚なんだなって思いましたね。最後に少しだけお水を足してもらいましたが、その見極めが大事なんですよね。

 芳賀さん それは1回じゃ分からないですね。僕は耳たぶくらいの柔らかさがちょうどいいと思うけれど、固いのが好きな方もいるし。水の量は必ずしも決まってはいないので、だいたいで大丈夫ですが、それで固すぎたり、柔らかすぎたり、失敗して覚えていくんです。

 ◇「おいしい」といわれる幸せ

 三浦さん 初めてそば打ちを体験できて感じたことは、達成感! 自分で打って、切って、ゆでて、自分で食べる。私達のご先祖様が見いだした、食べるための努力に感謝ですね。

 芳賀さん 振る舞ったときに喜んでもらえるから、それが励みになりますね。うちの店でも、お客さんが「おいしい」といってくれると、ああ、よかったと思います。

 三浦さん わざわざここのおそばが食べたいってお店に来るわけですからね。

 芳賀さん ありがたいですよね。その代わり大みそかはしんどいです(笑い)。何百人分も打つので、粉に水分を取られて手が真っ赤になるんですよ。なじみのお客さんに、「手がこんなになっちゃいましたよ」っていったら、翌年ハンドクリームを持ってきてくださったり。ホントにありがたくて、お客さんに支えられてるなって思いますね。僕なんか素人から始めて、最初の頃なんかどんなそばを打ったか覚えてなくて。たぶんひどかっただろうなって思うけど、とにかくがむしゃらにやってきて、あっという間でしたね。

 ◇まかないは鴨汁そば!

 三浦さん そばは美容と健康にも最高ですよね。

 芳賀さん ルチンが豊富なので、そばを食べてそば湯まで飲めば間違いないですね。本来、そば湯はそばのゆで汁なので、そばを食べてそば湯も飲めばちょうど一人前の栄養が取れるんです。うちの場合はそばの切れ端を溶かして作っているので、あえてドロッとした感じで。濃厚なのがおいしいです。

 三浦さん 濃厚で満足感がありました。とろっとしたそば湯を見ると、ああ、このお店は当たりって思います。

 芳賀さん ウチでは冬に鴨鍋をやっているんですが、鴨の骨から取った鍋のだしでそばを食べるのもおいしいですよ。

 三浦さん それはそれは、おいしいでしょう!

 芳賀さん 白菜などを入れると、鴨の汁を吸った野菜がまたおいしいんですよ。あとは大根の千切りを乗せて、そばつゆをかけてぶっかけそばみたいなのもおいしいし、今日食べていただいた辛み大根をたくさん乗せて、“地獄のように辛い”っていう地獄そばというメニューもあります。

 三浦さん そばは自分の好みでいろいろなアレンジができて、ヘルシーかつ栄養もたっぷりで、やはり最高の食材だと改めて思いました。

 今日は本当に楽しかったです。ちゃんとそば打ちを覚えたいので、また来ます! 今後ともよろしくお願いします!

 *……芳賀さんのおそばは本当においしくて、体験も、試食も、お話も楽しくて最高でした。私も早く自分で打ったそはでお客さまをもてなせるようになりたいです。

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