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日本の名湯:東京・奥多摩の渓流沿いに湧く秘湯「蛇の湯温泉」

 「ここは本当に東京なのか……」。JR武蔵五日市駅から1時間ほどバスに揺られ、「蛇(じゃ)の湯温泉 たから荘」(東京都檜原村)を前にしてまず思ったのはそんなことだった。杉が生い茂る山々のはざま、秋川渓谷の上流にある。自分がよく知る東京と同じとは思えないほど、豊かな自然に恵まれている。

 蛇の湯温泉は、大蛇が温泉で傷を癒やしているのを猟師が見つけたのが始まりと伝えられている。余分な角質や皮脂を取る効果や、シミ対策が期待できる。アトピー性皮膚炎や慢性湿疹などにも効果があるといわれる。入浴後は保湿をしっかりとしておきたい。

 たから荘の建物は、江戸時代から約300年続くという、兜(かぶと)造りの屋根の古民家。兜造りは、その形が武士の兜に似ていることに由来しており、昔はあたり一帯の家々の屋根がこの兜造りだったが、今はすっかり現代風に様変わりしている。

 内湯が一つあるのみ。日帰り入浴も可能なため登山を終えた客が疲れを癒やしに立ち寄ることも多い。浴室の壁は、2面が天井までの高さの大きな窓になっていて、渓流の向こうに杉林が見える。窓を開け放つと、まるで露天風呂かのよう。渓流のせせらぎと緑のすがすがしい香りに気持ちが洗われ、渓流からの風で火照った体を冷ましながらのんびりつかるのがいい。

 部屋は五つでプライベート感がある。朝食が済んでもチェックアウトまで、布団を敷いたままにしてくれるので、朝食後に温泉に入って部屋でくつろぐこともできる。

 食事は山菜や川魚、檜原村のこんにゃくや、ごま豆腐など地場産のものばかり。たから荘13代目当主の小林悠二さんが打つ十割そばも名物だ。茶菓子も、この地方、数馬のじゃがいもと、たから荘自慢の自家製みそ。みそは、毎年1~2月に仕込む3年みそが一番人気という。

 近くにはパワースポットとして知られる九頭龍の滝がある九頭龍神社や、南北朝時代からあるとされる古民家などの見どころがある。

 <プロフィル>

 朝香。温泉ソムリエアンバサダー。大学時代に日本中世史を専攻、さまざまな地域の歴史について学ぶ。モデルとして、ショーを中心に活躍する一方、温泉の魅力やその効能を引き出す入浴法を広めようと活動している。

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