湯あみ着などの着用義務がある混浴露天風呂すずめの湯。手前が熱め、奥がぬるめの浴槽
いまだ記憶に新しい2016年4月の熊本地震。その2カ月後に、豪雨による土砂災害が阿蘇五岳の一つ烏帽子岳にある「地獄温泉 青風荘.」を襲った。敷地のほとんどが土砂に埋まり、すぐには復興を考えられない惨状だった。しかし、埋もれた土砂の中から力強く湧く源泉を見て、「200年続く地獄温泉をここで終わらせてはいけない」と立ち上がることを決めた、と代表の河津誠さんは言う。
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河津さんは三兄弟の長男。その河津三兄弟が、江戸時代から代々続く清風荘(現・青風荘.)を受け継ぎ守り、昔ながらの湯治場のスタイルからガラリと変えた。価格帯を見直し、半露天風呂付きのラグジュアリーな離れ、明治中期の木造建築のスタンダードな本館、自炊設備やランドリーを備えたカジュアルな滞在に適した曲水舎とさまざまな旅のスタイルに対応。災害が起きた時はシェルターに転用できるよう一部の施設を強固なコンクリート造りにした。もちろん改革はこれだけにとどまらない。
青風荘.の大浴場は三つ。シンボルの「すずめの湯」は、混浴露天風呂だが湯あみ着など着用必須にし、撮影OKにした。ミルキーブルーの美しいにごり湯は、浴槽の底に敷かれた板が、噴き出す湯の勢いで持ち上がるほどのパワーで、まさに地球の生命力そのもの。そして、その素晴らしい湯を日帰りでも利用可能だ。
食も青風荘.の醍醐味。阿蘇の新鮮な食材を使い、誠さんがフレンチと囲炉裏料理のフュージョン、ミシュラン三ツ星の京都「菊乃井」で花板を務めた三男・進さんが懐石料理で腕をふるう。朝食は、囲炉裏で魚などを自分で焼くというエンタメ的な要素も。客が楽しく食事する風景を見守る誠さんの瞳はとても優しかった。
敷地内には誠さんの次男・拓さん夫婦が営むカフェも。拓さんは高校でコーヒー栽培、専門学校でカフェについて学んだ。またスイーツは、フランスで修業した河津三兄弟の次男・謙二さんの長女・沙幸さんが作る。
謙二さんの長男が東京「龍吟」、進さんの次男が京都「菊乃井」とそれぞれ三ツ星店で修行をし、いずれ戻ってくる。災害を機にさらに家族の絆が強固になった「地獄温泉 青風荘.」。どう進化していくのか。目が離せない。
<プロフィル>
朝香。モデル・美肌温泉家。慶応大卒。温泉ソムリエアンバサダーなど数々の温泉資格を持ち、日本温泉気候物理医学会など多数の学会に所属。美容効果が期待できる温泉やその効能をより引き出す入浴法を広めようと日々活動している。自治体の観光PRの監修・アドバイザーなども務める。
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