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市川由衣:母になり演技に変化「知らなかった感情をいっぱい教えてもらっている」

 女優の市川由衣さんが、公開中の映画「アリーキャット」(榊英雄監督)でシングルマザーとしてひたむきに生きるヒロイン、土屋冴子を演じている。私生活では2015年に俳優の戸次重幸さんと結婚し、昨年9月に第1子の男児を出産。今作の撮影は出産前だったというが、出産後初の映画出演作となる。市川さんに、今作の撮影エピソードや女優の仕事について聞いた。

 映画「アリーキャット」は、俳優の窪塚洋介さんとロックバンド「Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)」の降谷建志さんがダブル主演。後遺症を抱える元ボクサーで、今は警備員のバイトで食いぶちをつなぐ“マル”こと朝秀晃を窪塚さん、保健所で保護ネコを引き取った際にマルと出会う“リリィ”こと梅津郁巳を降谷さんが演じ、ひょんなことからバディとなった男2人が、一人の女性を守るために奮闘する再生の物語。

 ◇窪塚と降谷はとても魅力的だった

 市川さんが演じる土屋冴子は、保育園に通う男児1人がいるシングルマザーで、暴力をふるう元恋人の玉木敏郎(品川祐さん)と別れ話をするために朝秀晃(窪塚さん)が務める警備会社にボディーガードを依頼するという役柄。アクションシーンも多々あり、体当たりの演技を見せている。

 今回のオファーが来たときには「窪塚さんと降谷さんが出演されるということは台本をいただいた段階で分かってたので、すごいワクワクしながら台本を読みました。私たちの世代のカリスマ的な存在のお二人なので、それぞれ役に当てはめて読んだらすごく面白かった」という。

 現場での2人は「いい意味で“お兄ちゃん”というか、本当に一人の人間として誰にでもフランクに接してくれるというか、とっても魅力的な2人でした」と劇中でバディとなる2人はカメラが回っていないところでも自然な雰囲気だったという。

 激しいアクションシーンもあるが「みんな時間もない中、結構大変なアクションとかもあったので、みんな必死でした。結構、朝方まで撮影したりとかハードでしたね」と振り返る。

 ◇普通の人たちが必死に生きようとしている話

 自身の役柄については「息子への愛っていうのが軸としてあるんですけど、(見た目と)やっていることのギャップがすごく激しい役で、これまでやったことがない役柄だったので、挑戦してみたいなという気持ちでした」と前向きに取り組んだ。

 昨年9月に第1子となる男児を出産した市川さん。撮影は出産前だったが、「試写で見て自分に感動したっていうか(笑い)。客観的に冴子の気持ちが分かるから、お母さんの立場になって見て、グッときましたね」とリアルな演技に手応えを感じたという。元交際相手に執拗(しつよう)に追い回される役柄で、「常にちょっとおびえてるというか、何か背負っているっていう人だったので。でも、子供といるときは笑顔ではあるんですけど……」と分析。

 子役の男の子とは「すごく仲良くなって。映画の中ではそんなに同じシーンはないんですけれど、人懐っこい子で、撮影の合間に一緒に私の車の中でご飯を食べたり、音楽をガンガンかけてダンスしたり、クッキーを作ってきてくれたり……。私も何回か親子役やったことあるんですけど、こんなの初めてというくらい通じ合っていたと思っています。そこを一つ軸にして演じられたのはよかったなと思います」と自然と母の顔になれた。

 ちなみに子役の男の子は英語が話せたので、「降谷さんも英語ペラペラなので、英語でコミュニケーション取ったりして、現場はすごく面白かったです。あんまりああいう子役の子って会ったことないなと思って。型にはめられてる感じもなく、すごく可愛かったんですよね」とエピソードを明かした。

 そして、この作品で伝えたいこととして、「本当にここに出てくる人たちって、特に目立ったところもなく、本当に社会に埋もれているというか、本当に普通の人たち。何が普通かもよく分からないんですけど……。そういう人たちが必死で生きようとしている作品だなと思っていますので、見ていただいて何か感じるものはあるんじゃないかなと思いますね」とメッセージを送った。

 ◇憧れの女性は祖母

 母になったことによって、演技に変化は出てきているのだろうか。「そうですね。具体的には分からないですけど、やっぱり子供が生まれたことによって、毎日、今まで知らなかった感情をいっぱい教えてもらってるんですよね」と切り出した。

 「例えば子供が風邪を引いて、具合が悪くて、ずっとポーカーフェースで……。でも、ちょっと良くなって、笑ってくれただけで、こんなにもうれしいんだ!とか。少しでも成長していることに感動したり、心配したり、今までこんな気持ちになったことがないっていう感情をいっぱい教えてもらっています。だから、いろんな感情の絶対値を上げてもらっているというか。そのことは女優業にきっと生かせるんじゃないかなと思います」と相乗効果を実感している。

 そして今後、やってみたい役柄として、「子供がいっぱいいる役とか(笑い)。私、結構、幸薄い、負のオーラが漂ってる役が多いんですけれど、めちゃめちゃ明るい肝っ玉母さんみたいなのとか、ちょっとやってみたいですね」と語る。“肝っ玉母さん”はふっくらとしているイメージだが……。「確かに。そのときは水泳を控えて太るようにします(笑い)」と笑顔で語った。

 女性としての理想像は? 「自分の祖母のように、誰かのためにいる女性になりたいなと思います。祖母はもう90歳近いんです。すごく優しくて、穏やかで、ひ孫がもう6人もいるんですよ。祖父はもう亡くなって、ひ孫たちの世話でいまだにご飯を作ったり、新しい料理を作ったりするんですね。そういう姿を見ていると、人がいることによっていろんな刺激とか張り合いがあって、やっぱり誰かにためにと思うと、人は元気でいられるのかなって思います。うちの祖母は、常に誰かの心配してるので。自分のことよりも人のこと、私のこととか、ずっと気にかけてくれるから、そういう人に自分もなりたいなと思います」と思いをはせていた。

 <プロフィル>

 いちかわ・ゆい 1986年2月10日生まれ。東京都出身。2003年公開の映画「呪怨」(清水崇監督)で映画デビュー。06年の映画「サイレン FORBIDDEN SIREN」(堤幸彦監督)で映画初主演を飾る。「NANA2」(大谷健太郎監督)でもヒロインに抜てきされる。主な映画出演作は「ゼブラーマン」(04年)、「映画 クロサギ」「ひゃくはち」(共に08年)、「TOKYO TRIBE」(14年)。14年の主演映画「海を感じる時」(安藤尋監督)では体当たりの演技が話題となった。最新作「愚行録」(17年)では、殺された一家の夫の元カノ役を演じている。

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