映画「猫は抱くもの」の一場面 (C)2018「猫は抱くもの」製作委員会 nekodaku.jp
沢尻エリカさんが「ヘルタースケルター」(2012年)以来6年ぶりに主演した「猫は抱くもの」(犬童一心監督)が、23日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。原作は「猫弁」シリーズで知られる大山淳子さんの小説。売れないアイドルだったアラサーのこじらせ女子と、自分を人間だと思い込む猫の恋を、人間と猫の世界を交差させながら見せていくファンタジックな作品だ。実景、舞台とアニメーションの三つの世界観を楽しめる。
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元アイドルで田舎のスーパーで働く妄想好きの大石沙織(沢尻さん)は、夢をあきらめて投げやりな毎日を送っていた。職場の裏でこっそりと飼っているロシアンブルーの良男(吉沢亮さん)にだけ、心を開いている。良男は自分を人間だと思い、沙織に恋をしていた。彼女を守れるのは自分だけだと思っていたのだが、ゴッホと呼ばれる売れない画家・後藤保(峯田和伸さん)が現れて……というストーリー。
良男が出会う迷い猫キイロを、「水曜日のカンパネラ」のボーカル、コムアイさんが演じ、自身で手がけた劇中歌「キイロのうた」も披露している。コムアイさんは映画初出演にしてコケティッシュな魅力を振りまき、強く印象に残った。ほかにも、「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(7月14日公開予定)で初主演の蒔田彩珠さんが、可愛らしい縞(しま)三毛猫を演じている。
挫折を経験したアラサーの痛々しさを、沢尻さんがおかしみに変えて好演している。劇中では歌って踊り、一時は鳴かず飛ばずだったアイドルの悲哀も伝わってくる。その沙織をいとおしそうに見つめる良男役の吉沢さんは、猫そのものの身のこなしで魅了する。
物語は、ロックバンド「銀杏BOYS」の峯田さん演じるゴッホが、どう沙織に絡んでくるのかがカギ。峯田さんがアーティストらしい個性を発揮し、カラフルで圧巻のシーンが展開される。
「グーグーだって猫である」(08年)などを手掛け、自らも猫と暮らした経験もある犬童監督が、「武曲 MUKOKU」(17年)などの脚本家で、WOWOWドラマ版「グーグーだって猫である」も手掛けた高田亮さんとタッグを組んだ。
人が猫を演じ、猫の目から見た人間の世界が広がる中、自分の人生にどう折り合いをつけるのかを客観視させてくれる。現実と妄想を混在させるファンタジックなアプローチで、誰もが経験する人生の挫折の痛みにマジックをかけることに成功している。(キョーコ/フリーライター)
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