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取材に応じた田代万里生さん
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取材に応じた田代万里生さん

スポットライト~舞台で輝く男たち:田代万里生さん 転機は「スリル・ミー」 ミュージカルを中心に活躍 ストレートプレーに挑む

 「ステージ」に情熱を注ぐ俳優に舞台の魅力を聞く連載「スポットライト~舞台で輝く男たち」。第6回は田代万里生さんに話を聞きました。(編集・取材・文/NAOMI YUMIYAMA)

 ミュージカルを中心に活躍する田代さんが、「ラビット・ホール」でストレートプレー(せりふ劇)に挑む。ピューリッツァー賞を受賞した名作戯曲で、幸せな日常を奪われた夫婦の再生を描く物語だ。

 「ミュージカルで非日常的な役を演じる中で、30代半ばごろから若い青年だけじゃなく、いろんな役柄を演じてきました。今回、僕が演じるハウイーは等身大の自分を投影できる普通の人。日常から突如、非日常の世界に入ってしまう“紙一重”なところにもひかれました」と、出演の理由を語る。

 ニューヨーク郊外で平穏に暮らしていた夫妻が交通事故で4歳の息子を失い、二人の関係にほころびが生じて……という物語。田代さんは息子の死に傷つきながら、妻を支えようとする夫を演じる。

 「ハウイーは一生懸命奥さんを支えつつ、自身も前に進もうと努力を続けます。奥さんもそうしたいけれど、それぞれ別のルートをたどってしまう。相手に良かれと思ってしたのにすれ違うところが、切ないなと思います」

 田代さん自身は「完全にハウイー型」だと言う。「何があってもウワーッとならないし、相手を支えたくなる方なので」とほほ笑んだ。

 知的で温かな人柄が魅力的な田代さんだが、このドラマのように深い喪失感を抱いた時期があったと語る。

 「小学5年の時、脚の病気になって、今月中に片脚を切断しなければならないと宣告されたんです。結果的に回復したのですが、当時は子供でしたので、想像を超えた絶望を感じましたね。半年間、家で全身にギプスをつけて、身動きもとれなくて。そんな僕を支えてくれたのは、担任の先生と同級生。毎日3人づつローテーションで家に遊びにきてくれて……。彼らとは今でもいい関係でつながっています」

 「ラビット・ホール」は2010年にニコール・キッドマンさん主演の映画版も公開され、多くの賞を受賞した。今回の舞台では小山ゆうなさんの演出のもと演技派俳優が集結し、新たな「ラビット・ホール」が生まれる。

 今回の舞台では、篠崎絵里子さんがセリフを現代の日本人に響く言葉に書き換え、より共感しやすく親しみやすい内容に。演出は今注目の小山ゆうなさん。妻を演じる小島聖さんをはじめ、実力派俳優たちが新たな感動を運ぶ。

 「『ラビット・ホール』のテーマは、変えることができない現実に人がどう立ち向かうのか。それはどんな人にも起こることですし、それを考えるきっかけをくれると思います。難しい知識は必要ありませんので、ふらっと見ても楽しめます。僕のこれまでの作品を見てくださっている方はプライベートを投影した役ですので違った面をご覧いただき、お客さまにも自己投影してもらえたらと思います」

 ◇転機の舞台は「スリル・ミー」 今後も「無知の知」の精神で前進

 19歳で舞台デビューして以来、話題のミュージカルやコンサートで、観客を魅了してきた田代さん。「ステージ」の魅力を聞くと「大勢の人たちが何カ月も前からチケットを買い、開演5分前には席について舞台を観る。それって奇跡だしすごいことじゃないですか!」と、熱を込めた。続けて「数多くの人が一緒に“固唾(かたず)を飲んで見る”という没入感は、生のステージだからこその魅力だと思います」と語った。

 長年のキャリアの中で転機になった舞台は、日本初演から演じた「スリル・ミー」だという。熱狂的なファンを持つ二人芝居のミュージカルだ。

 「僕のバイブルのような作品です。再演を重ねて5回演じました。栗山民也さんの演出で、ミュージカルというよりストレートプレーに近い。二人芝居だけれど自分が演じる役柄の“脳内劇場”のような芝居なので、全部を請け負わなければならない。自分のさじ加減ひとつで物語の本質が変わるような、おもしろさと怖さを感じました。後に『エリザベート』で演じる役の勉強になった作品です」

 役者として大切にしている言葉をたずねると、中学の時に出会った言葉だと教えてくれた。

 「『無知の知』です。中学の時、理科の先生がいきなり黒板にこの言葉を書いて『知ってる奴いるかー!』って(笑い)。当時は知らなかったのですが、“無知の自覚”のことですよね。この言葉を抱いていると上には上がいると思えるし、どんな人と接しても柔軟な気持ちでいられる。これからもこの言葉を大切に進んでいきたいと思います」と語った。

 ◇田代さんに一問一答

 ――私生活で役に影響される方?されない方?

 「すごく影響されます。皇太子とか皇帝とか伯爵とか、きっちりした役をするときは、いつの間にか私服もきっちりした服装になりがちです(笑い)」

 ――舞台中、絶対食べるものは。

 「バナナ。のどにも優しいし刺激もない。バナナがあれば間違いないです」

 ――楽屋に置いているお気に入りグッズは。

 「一人楽屋のときはアロマのデュフューザーを置いています。香りは長年いろいろ試した結果、本番前は高揚するので、リラックスできるラベンダーとスッキリして免疫調整や抗菌作用のあるティーツリーの定番ブレンドが一番ですね」

 ――最近、体のためにしていることは?

 「プールで泳ぐこと。リラクゼーションにもなりますし、子供の頃から好きでした」

 ――今後、舞台で演じてみたい役は?

 「お客さまが、まだ先入観を持っていない役。初演作品ならではの魅力ですね! とはいえ再演作品だとしても、前の人はこうだったとか、前の演出はこうだったとか、そんなのは一切忘れてゼロから創る(観る)ことが大切ですよね」

 ◇プロフィル

 たしろ・まりお 1984年1月11日、長崎県生まれ。東京芸術大学音楽学部声楽科卒業。2003年に「欲望という名の電車」でオペラデビュー。2009年に「マルグリット」でミュージカルデビュー。第39回菊田一夫演劇賞受賞。

 *……「ラビット・ホール」▽作:デヴィッド・リンゼイ・アベアー▽上演台本:篠崎絵里子▽演出:小山ゆうな▽出演:小島聖、田代万里生、占部房子、新原泰佑、木野花▽2月18日~3月6日にKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)で上演▽公式サイト:https://www.kaat.jp/d/rabbithole2022

 *……篠崎絵里子さんの崎は立つ崎(たつさき)

 *……公演関係者1人に新型コロナウイルス陽性が確認されたため18~20日の公演は中止。初日は2月23日に延期。払い戻し方法は後日ホームページなどで発表する

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