あなたにおすすめ
私の美容習慣:柴咲コウ 美しさは利己的では成り立たない 大河ドラマを機にエイジングケアを意識
俳優の斉藤由貴さんが、公開中の長編アニメーション作品「果てしなきスカーレット」(細田守監督)で、主人公・スカーレット(芦田愛菜さん)の母ガートルードの声を担当している。ガートルードはスカーレットの父アムレット(市村正親さん)を殺した叔父、クローディアス(役所広司さん)の妃となり、スカーレットにつらく当たる“毒親”的な役どころだ。斉藤さんは「そういう役が来るということは、私の中に“悪女”の部分が多分あるんだと思うんです」と話す。斉藤さんに、自身の役どころや主人公の声を担当した芦田さんについて、10年後の将来などについて聞いた。(インタビュー前後編の前編)
◇母という感覚はあえて考えなかった
「果てしなきスカーレット」は、国王である父を殺され、復讐(ふくしゅう)に失敗した王女スカーレットは、死者の国で再び宿敵に復讐を果たそうとする……。死者の国は、復讐を果たし、“見果てぬ場所”にたどりつかなければ虚無となり存在が消えてしまう。そこでスカーレットは果てしない旅をすることになる。芦田さん、役所さん、市村さんのほか、岡田将生さん、松重豊さん、柄本時生さん、青木崇高さん、染谷将太さん、白山乃愛さんらが声優を務めている。
娘のスカーレットを演じた芦田さんについて、斉藤さんは「本当に芦田さんにぴったりだなって。真っすぐで情熱があって、賢くて、自分がこうと思い込んだら、愚直に、とにかくそこに向かって突き進んでいく強さ、真っすぐさみたいなものがあって。もちろんビジュアル的にはスカーレットと芦田さんは違いますけど、そういう人間性みたいなものがとてもよく表れていて、芦田さんにぴったりだなと思いました」とたたえる。
斉藤さんが演じたガートルードはスカーレットの母だが、「お母さんだという感覚は、あえて考えなかった」という。
「お母さんらしさとか、温かみ、人間味というよりは、冷徹で、エゴイストで、自分の望むものを手に入れる、そのために憎しみを持ち、嫉妬する……そちらに重点を置いて表現しました。だからといって、明らかにそれらを表現するというよりは、感情過多にならないように、冷ややかで、表面的にはものすごくフラットな雰囲気の演技を選びました。ピンポイントで登場する役だったので、この物語で私が担う役割みたいなものに特化したつもりです」
ガートルードは最後の方で一度だけ、激しい感情をあらわにするシーンがある。
「最後の最後に、さまざまな冒険をくぐり抜けて自分を取り戻した、自分の生きる理由について、さまざまなことを学んだスカーレットに対して、『なぜ、お前が生きている!』とカーッとなって叫ぶシーンがあって。そのシーンを浮き立たせるために、他のシーンを割とフラットに表現していたような気がします」と明かす。
◇悪い部分とそうでない部分のリアリティーを俯瞰して絶妙なバランスで演じる
今回のように「悪女的な役のオファーが来ることが多い」という斉藤さん。その理由を自己分析すると……。
「そういう役が来るということは、私の中に“悪女”という部分が多分あると考えて、オファーされるんだと思うんです。オファーがあるということは、私にとっては(演技に)幅があることの証明で、仕事をする上でいいことだと思っています」と実感している。
“悪女”的な部分が自身の中にある自覚はあるのだろうか。
「あるんだと思います。自分の中の“悪女”的な部分を引き出して演じています。今回のように冷酷なお母さんや、あるいはストーカーみたいなお母さん(2017年にNHK総合で放送された『お母さん、娘をやめてもいいですか?』)など、いろいろ演じてきました。ただ、悪女的な部分だけにのめり込んで演じても、多分見ている人が拒否反応を起こしてしまうので、悪い部分とそうでない部分のリアリティーを俯瞰して、絶妙なバランスというか、押し引きができないとダメなんじゃないかな。だから、そういう役を演じるときは客観性を常に持ち続けたいと思っています」
自身を俯瞰(ふかん)して見えているということなのだろうか。
「悪い役や怖い役って、過剰にやりすぎてしまうと、お客さんが引いてしまうと思うんです。だから、お客さんに面白いと思ってもらえるギリギリのところを目指す。さじ加減や、客観性というものが、俳優としてすごい大事な部分だなと思います」と力強く語る。
最後に、10年後を想像してもらった。
「私、来年還暦(1966年9月10日生まれ)なんですよ。自分でもびっくりしちゃって。ということは10年後は70歳手前ですね。多分、何か突発的なことでもなければ、この仕事を続けている気がします。割と健康には自信があって、ありがたいことに体をすごく丈夫に生んでもらえたので。このままこの仕事を続けて、普通にいろんなおばあちゃんの役をやってるんじゃないかなと思います」と笑顔で語った。