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スイス、フランスの合作アニメーション「ぼくの名前はズッキーニ」(クロード・バラス監督、2月10日公開)の日本語吹替え版で、声の出演をした女優の麻生久美子さん。今作で麻生さんは、主人公ズッキーニが一目ぼれする10歳の少女カミーユを演じている。お金のためにカミーユを引き取ろうとする叔母に抵抗するという役どころだ。麻生さんに、今作での好きなシーンや難しかった場面、声の収録の裏話などについて聞いた。
◇カミーユの涙は「幸せの象徴」
「ぼくの名前はズッキーニ」は、母を亡くした9歳の少年ズッキーニが、預けられた孤児院で、一緒に暮らす子供たちと成長していく姿を描く。ズッキーニの声を、俳優としても活躍するロックバンド「銀杏BOYZ」の峯田和伸さんが担当するほか、ズッキーニのことを気にかける心優しい警察官レイモンを、俳優、イラストレーター、小説家などマルチな才能を発揮するリリー・フランキーさんが演じている。2016年のアヌシー国際アニメーションフェスティバルで最優秀作品賞・観客賞をダブル受賞した作品だ。
「字幕版は字幕版で好きなのですが、吹き替え版になると分かりやすくなるというか、絵も隅々まで見られ、字幕で見ていたときより情報がとても多く伝わってきました」と麻生さんは吹き替え版の魅力をアピールする。
印象に残ったのは、カミーユの「表情」で、特に、映画の最後に見せる涙は、深く心に刻まれたという。2児の母の麻生さんは「私が親だからなのかもしれませんが、いろんな感情を読み取れて、すごく泣けました。どういうふうに育ってきたのかから始まって、両親はすごく仲が悪かったんだろうなとか、最終的に(家庭で)ああいう事件が起こってしまって、私の想像を超える悲しみだろうし、そういうものがあって、この孤児院に来て、そこはすごくいい環境で、お友達と呼べるような人たちに出会って……」とカミーユの心の変遷を推しはかる。
そして、「あそこ(ラストシーン)で見たものが、(カミーユにとって)幸せの象徴というか、明るい未来に見えたんじゃないかなとか、いろんなことを思い出しているのかなとか、そういう想像があふれてきました」と話す。
◇何か大人がしてあげられることがあればいいのに…
好きなシーンに挙げたのは、ズッキーニたちが、孤児院の先生に連れられて行ったスキー場で、仲のよい母子を見つめる場面。そのときの子供たちの顔が「ちょっとたまらないですね」と麻生さん。
「あそこもまた想像させるシーンというか、子供たちが何を考えているのか考えますよね。優しそうなお母さんと子供。うらやましくて、やっぱり見ちゃいますよね。もう胸が痛い(笑い)。あの、子供たちの並んでいる顔は、すごく心に訴えかけられました」としみじみ語る。
そんな孤児院の子供たちを見ながら、「私には、自分にできることをするしかないな。それプラス、何か大人がしてあげられることがあるならいいのにな、ということを、この作品を見て思いました」と話す表情に2児の母の顔がのぞく。
◇すてきな“峯田ズッキーニ”と素晴らしい“リリー・レイモン”
収録は、峯田さんとリリーさんがそろった状態で行われた。字幕のオリジナル版を見たときは、カミーユのハスキーボイスに、「これに合わせるとなると、低めのトーンの声を出さなければいけないかな」と正直、戸惑ったという。しかし、「やっぱり子供っぽい声も出してみたい」と「少し、作りました」と明かす。
今回はクールな女の子の役だったためそれほど作り込むことなく演じられたそうだが、笑い声など感情が高まる時の声は難しかったそうだ。
かたや、オリジナルのズッキーニの声は高め。演じる峯田さんの声は低い。麻生さんは、峯田さんの第一声を聞いたとき、オリジナルの声と「あ、違うな」と思ったそうだが、すぐに違和感は取り除かれ、「ズッキーニなんです。すごく愛らしいズッキーニになっていて、こういう表現方法もあるのか、これはこれですてきだなあ」と“峯田ズッキーニ”が気に入ったという。
一方のリリーさんは、収録前にはさんざん麻生さんと峯田さんを笑わせていたそうだが、マイクの前に立つと、静かな口調でゆったりとしゃべるレイモンになりきり、そのひょう変ぶりに、「プロですよ。素晴らしいです」と感服していた。
次回は、好きなキャラクターや最近お気に入りのファッション、さらに10年後の自分について聞く。
<プロフィル>
あそう・くみこ。1978年6月17日生まれ。千葉県出身。1995年の映画「BAD GUY BEACH」で映画デビュー。98年の「カンゾー先生」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞をはじめ、数々の映画賞を受賞した。最近の映画出演作に「グッモーエビアン!」(2012年)、「ばしゃ馬さんとビッグマウス」(13年)、「ラブ&ピース」(15年)、「俳優 亀岡拓次」(16年)など。待機作として9月28日公開の「散り椿」がある。