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女優の米倉涼子さんが主演するスペシャルドラマ「疑惑」(テレビ朝日系、3日午後9時)で、「鬼クマ」の異名を持つ悪女、白河球磨子を演じている女優の黒木華さん。ドラマは、松本清張作品の中でも屈指の人気を誇る名作サスペンスが原作で、1982年の実写映画と同様、原作の男性弁護士を女性に変え、現代的な解釈が加えられた。黒木さんが、主演の米倉さんの印象や2人の話題の“路上キスシーン”、球磨子の役作りや自身が周りから理解されないことなどについて語った。
◇初共演の米倉の印象は「可愛らしい」
米倉さんとは今作が初共演となったが、「サバサバしてらっしゃる方という印象がありましたが、そこは変わらず。役に対してもすごく貪欲で、監督とのやりとりを聞いていても『こういうふうにした方が面白いのでは』などの話し合いをしている時は男っぽい」と黒木さんは印象を語る。「その中にすごく女性的な部分があるから、(米倉さん演じる弁護士の佐原)卓子さんという役も深みが出るんだなって。すごく可愛らしい方でした」と笑顔を見せる。
そんな米倉さんとのキスシーンの写真が公開され、話題になっているが、黒木さんは「写真用と映像用、リハーサルとで3回だったと思います。こっちが遠慮すると気を使われてしまうかなと思ったので、リハーサルの時から“攻め側”だと思ってやりました」と冷静に振り返り、「特別意識をしてやっていないですし、本当に一瞬だったのであまり覚えていませんが、(米倉さんの唇は)柔らかかった気がします。多分皆さんが想像する感じだと思います」と楽しそうに笑う。
撮影の際は、「(米倉さんは)背が高くてヒールも履いていたし、私は(身長が)低いので、それが結構大変でした。米倉さんは、どういうふうに見えたらいいのかということを考えてくださっていたようなので、すごくありがたかった」と感謝する。
◇初めての清張作品 その印象は…
今作への出演を聞いた時の心境を「松本清張作品(に出演するの)は初めてだったので、『はたしてどういう作品になるんだろう』というのが最初の印象でした」と明かす黒木さん。「本(台本)を読んでも分からないところが多かったので、現場に行って、監督と米倉さんとやらないとなかなか分からない、と思いながら本(台本)を読んでいました」と振り返る。
黒木さんは撮影に入る前に、1982年公開の桃井かおりさんと岩下志麻さんによる映画版を見て、「そのイメージがどうしても大きく、印象が強かった」と感じたが、「(基本的な物語は)同じですが(映画版を)なぞるのではなく、本(台本)自体が新しいものになっていたので、そういうところをくんで、面白くやれればいいのかなとは思いました」という。
清張作品は独特な世界観や空気感、せりふ回しなどが魅力だが、「難しかったですけど、人間同士だったり男女間だったりの面白さというのは、やはり何度も扱われているだけのことはあるなと思いました。人間の業の深さなどが描かれているところが、何年たっても色あせない面白さなのかな」と実感したことを明かす。
◇役作りで意識したポイントは?
黒木さんが演じる球磨子は、保険金目的で夫を殺したという疑惑がささやかれる“希代の悪女”という役どころ。「共感しづらいですが、ものすごく愛を求めている人ということはやっていて思いました。悪い部分だけではなくて母親に対する思いとか、すごく人間味のあるキャラクター」だと感じた。「どういう選択をしていけば、この人が自分のものになるかなど、そういう部分は人間的だし、動物的感覚で演じました。(球磨子がやっていることは)多かれ少なかれみんなやっていることだと思うから、見て『嫌だな』という部分があるのでは」と球磨子について分析する。
実際の役作りでは、「ちょっとだらしないというか、男の人を誘惑するじゃないですけど、生きていくことに貪欲で、そのためにいやらしさをまとっている女性というのを意識しました」といい、「すべてのことに対して120%で、感情の起伏が激しい。人から見るとつながっていないように見えるけど、球磨子の中では成立していることと思い、『なんでこうなるんだろう』というのをなるべく考えないようにしていた」と感覚的な役作りについて説明する。
◇周りから理解されない行動とは…
球磨子は思いもよらない行動を取るが、黒木さん自身は「約束があまりできない」ことが周囲に理解されづらいという。「理由が自分の中にありますが、直前になって嫌になったりする。理由を言っても他人には分からないので、わがままだと思われることも……」といい、「連絡も取れる時と取れない時がある。人と会いたい時と会いたくない時があって、『そろそろだな』というリズムが自分の中ではありますが、理解されない……」と意外な一面を明かした。
そんな黒木さんだが、「(人付き合いは)そんなに得意な方ではないですけど、人は好き。会って話すのも、聞くのも好きですし、ご飯を食べに行くのも好き。急に(約束していた)その人と会うのが嫌なのではなくて、急に(すべての)人と会いたくなくなるし、そもそも外に出たくなくなっちゃう」と説明。「友達はメールの返事が3日後とかでも、『まただな』って理解してくれていますが、(それ以外の人には)なかなか分かってもらえない」と苦笑いを浮かべていた。
最後に“悪女”のイメージについて聞くと、「悪い女も悪い男も、悪いという部分は自分にできないことや自分の中でふたをしたい部分だと思うので、それを見せられると魅力的にも感じる。だから悪女という人たちは、総じて魅力的な部分があるのでは」と黒木さんは持論を語り、「『やっちゃだめ』と言われたことってやりたくなる。そういうことかなと思います」と笑顔で語った。
(取材・文・撮影:遠藤政樹)