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長野県の山奥に、塩がとれる不思議な温泉が湧く旅館がある。その名は「鹿塩(かしお)温泉 湯元 山塩館」。塩を多く含む温泉は海沿いに多く、山奥で湧くのはとても珍しい。源泉の温度が約12℃と非常に低いため、加温などはされているが、源泉の浴槽もあり、手つかずの100%源泉かけ流しにこだわる人も満足できる。夏ならば、むしろ源泉風呂の方が気持ちよく入浴できるだろう。
源泉風呂の付いた石風呂と、寝湯が付いたひのき風呂があり、日替わりで男女交替制になっている。露天風呂はなく内湯のみだが、窓が大きいため鮮やかな山々の緑が存分に臨める。ほどよく角質や皮脂を取って肌をつるつるにしてくれる泉質で、保湿効果や、ニキビなどへの殺菌力も期待できる“美肌温泉”だ。保温力も高い。
立ち寄り湯も午前10時半~午後2時(受け付け終了は午後1時)という短い時間ながら可能で、ランチとのセットプランも魅力的だ。
同泉からとる山塩は、すべて手作業によって精製されており、生産量が非常に少なく「幻の塩」といわれる。にがり成分の含有量が海よりもとても少ないため、味がまろやかで、東京都内の有名店のシェフらも好んで使うと聞く。大正天皇のご成婚の際の献上品にもなったほどだ。売店では、1人1袋までの制限付きで販売されており、もちろん同館の料理にも使われている。和と洋を融合させたモダンで洗練された料理は、鹿肉や川魚、コウタケといった地元の食材にこだわったもので、化学調味料など添加物は一切使っていないという。
建物は、本館と旧館からの全15室からなり、定員12~22人(季節により変動)。落ち着いた和風旅館だ。旧館はトイレと洗面所が共同。館内は場所によっては携帯電話の電波が通じないところもあるが、Wi-Fiが用意されている。
南アルプスや、「ヒマラヤンブルー」と呼ばれる青いケシで知られる大池高原も近いので、トレッキングや登山の後に訪れるのもおすすめだ。
<プロフィル>
朝香。温泉ソムリエアンバサダー。大学時代に日本中世史を専攻、さまざまな地域の歴史について学ぶ。モデルとして、ショーを中心に活躍する一方、温泉の魅力やその効能を引き出す入浴法を広めようと活動している。